マナーうんちく話509≪「女しぐさ」と「男しぐさ」≫
日本は穀物を中心とした農耕文化で栄えた国であり、四季の美しい国でもあります。さらに一年を24等分した「二十四節季」という季節が存在する国です。
平成26年の5月2日は「八十八夜」で、5月5日は「立夏」です。
「立夏」は二十四節季の一つですが、八十八夜は雑節です。
雑節は、農業を営むに当たり、二十四節季や五節句だけではまだ不十分なので、それを補うために設けられた季節の移り変わりの目安になる暦です。お馴染みのものとして「節分」「彼岸」「入梅」「土用」「二百十日」等があります。
瑞穂の国と呼ばれ、米を主食にしている私たち日本人が、本来なら知っておくべき言葉だと思いますが、「クールビズ」のような言葉に押されたせいか、最近は「八十八夜」や「立夏」に関心を抱く人は少なくなってきましたね。
日本語は長い歴史を有すると共に大変美しい言語ですが、忘れ去られていく言葉や、間違って使用されている言葉が多い事に驚きます。
時代に流れとして済まされるも勿体ない気もしますが、如何でしょうか?
この度、本来とは違う意味で使用されることが多い慣用句を解説する動画、「言葉食堂へようこそ」が文化庁のホームページで公開されることになりましたね。
ちなみに、下記のうち、正しいのはどちらか?腕試しをどうぞ。
○後へも先へも「引けぬ」OR「行けぬ」。
○的を「得る」OR「射る」。
○以上の事を、よく念頭に「入れて」OR「置いて」。
普段、耳にしたり、口にしたりしている言い回しには、実際には間違って使用しているものが多々あります。注意したいものです。
ちなみに上記の正解は順に、「行けぬ」「射る」「置いて」です。
間違えたり、勘違いして使用しているのは、言葉だけではありません。
マナーの世界にも多く存在するようです。
「なぜそうするのか?」という合理的な理由を正しく理解することが大切です。
例えば食事をする時の「手盆」。
手盆とは、食事中に、汁やタレが垂れて服が汚れないように、箸やフォークを持っていない方の手の平で受けることです。
この行為は和食でも洋食でもお勧めできません。
和食の場合は、基本的には器を持って食べます。盛り皿のように器が大きくて持てない場合で、垂れるのが心配な時は懐紙で受けます。
一方、洋食は器を持ちません。
テーブルとイスの距離を握りコブシ二つ分くらいまで縮めて、姿勢を正して、食べ物に口を付けるのではなく、口にフォークやナイフで食べ物を近づけて下さい。美しく食べることができます。ポイントは姿勢です。
また、和の礼儀作法では「畳の縁を踏んではいけない!」とよく言われます
これは命令口調になっていますが、実は思いやりの気持ちの表現です。
昔、主君に食事を運ぶ時に、女中が目通りの高さ、つまり、料理に息がかからないよう目の高さまで上げて運びます。
昔の畳の縁には、家紋や絢爛豪華な模様が施されており、畳の縁はかなり盛り上がっていました。
目の高さまで料理を上げて運べば、下が見えないので、縁にけつまずく恐れが大いにあります。それで注意を促したわけですね。
礼儀作法とは窮屈で、堅苦しいと思われがちですが、このように「相手に対する思いやりの気持ちを表現したもの」と心得て頂ければ、より親しみやすくなります。
日本は西洋と異なり自然と共生し、平和な社会を築いてきた国です。
従ってそのような背景から生まれたマナーは、自然や人に対して尊敬や思いやりの心が基本になっています。
だから、今地球が直面している環境保全や平和に大変役に立つものと思います。
英語を幼い時に学ぶのも否定するものではありませんが、その前に自国の素晴らしい文化や礼儀作法にもっと関心を深めて頂くことが大切だと痛感します。