マナーうんちく話535≪五風十雨≫
3月3日は雛祭り、「桃の節句」です。
現在の3月3日はまだ寒いので桃の花の蕾も固いですが、昔は旧暦で今から約一月位後になりますから、ピンクの愛らしい花が咲く頃です。
桃の花は梅や桜と同様、緑の葉が出る前に可憐な花を咲かせるので、当時は春の大きな楽しみの一つだったわけです。
そして丁度この頃になると雪解け水が流れ始めますが、この水を「桃花水(とうかすい)」と、大変美しい名前で呼びます。
そして、桃の花は一つの枝にそって多くの花を咲かせるので、安産の象徴とされていました。
また魔除けの木として重宝されていたようですね。
「桃の節句の桃」や「端午の節句の菖蒲」にも、旬の力がみなぎっているので、当時は「魔よけ」や「霊力」が存在すると信じられていたわけです。
加えて、お雛様に欠かせない縁起物と言えば「ハマグリ」です。
ハマグリもこれから旬を迎えますから口にする機会は多いと思います。
吸い物の具材として、あるいは蒸し物、そして洋食のスパゲティーなどでおなじみですが、結婚式の縁起物にも大変重宝されます。
何故結婚式で縁起を担がれるかと言えば、ハマグリは同じ貝同士でないと、上の貝と下の貝がぴったり合わないからです。
だから「夫婦和合」や「縁結び」や「良縁」の象徴として、雛祭りや結婚式で使用されるわけです。
源氏物語にも登場する、「貝合わせ」の材料に使われるのも同じ意味です。
では夫婦和合とは何か?
和合そのものが「夫婦としての在るべき姿」であるという考えは、古くから存在していたようで、夫婦が仲良く、睦ましく過ごし、子孫が繁栄することを意味します。
そういえば結婚式などでは、「偕老同穴」と言う言葉が良く使われますが、どちらも「夫婦が仲睦ましく添い遂げる」と言うことです。
ちなみに、七福神の「毘沙門天」は夫婦和合をもたらして下さる神様です。
つまり、夫婦和合とは、平たく言えば夫婦円満、すなわち傍から見て仲睦ましい夫婦です。
さらに深い意味なら、精神的にも肉体的にも固いきずなで結ばれている夫婦の姿ではないでしょうか?
ところで、最近は「不妊治療」と言う言葉をよく目にしたり耳にしたりしますが、不妊治療はまさに夫婦和合の象徴だと思います。
そして、不妊治療に限らず、夫婦の間で何かとトラブルを抱えている人は多々います。その延長戦に離婚がありますが、今の日本は晩婚化や難婚化や未婚化が進展していると同時に離婚大国でもあります。
お雛様の時代は、儒教の影響を受けてか男尊女卑的傾向が強く、男雛が向かって左と、上位に位置していましたが、現在は夫婦平等で対等です。
互いに権利を主張するのもいいですが、互いに思いやりを発揮することも大切だと考えます。
ちなみに、お雛様は宮中の結婚式を表現していますが、最近は豊かになり、誰でもお雛様のような豪華な結婚式を挙げることが可能です。
しかし、結婚すれば幸せになれるわけでもなく、立派な披露宴を挙げれば幸せになれるのではありません。
披露宴が終わってからが大切です。
二人で幸せになる道筋を描き、それに向かって多彩な努力が不可欠です。
経済的基盤の確立と共に、マナーの根源を成す三要素、互いが互いを尊敬し、感謝し、思いやることが何より大切です。