マナーうんちく話499≪習慣は第二の天性なり≫
何度もお話ししましたが、マナーには必ず合理的な理由が存在します。
しかし、今ではそれが正しく理解されないまま「形」のみが先行したり、間違ったまま伝えられたりしているケースが多々あります。
例えば「三つ指の挨拶」「畳の縁を踏むな!」等は、「思いやりの心」を言葉や態度で表現したものがマナーであると理解すれば、理屈に合わない気がします。
また、手紙を出した時に、用件が便せん一枚で足りた時に「もう一枚余分に白紙の便箋をつける」ことがありますが、これも今の時代にはふさわしくないと考えます。
マナーにも不易流行的な側面が有るからです。
そして、互いに本来の意味を理解しないまま、曖昧な気持ちで使用されている言葉が、人にモノを贈る時に発する「つまらないもの」と言う言葉ではないでしょうか?
前回触れました「賞味」とか「査収」によく似ている言葉ですね。
例えば、他家を手土産持参で訪ねて、その手土産を相手に渡す時に、「つまらないものですが、どうぞ」等と言って渡します。
外国人だったら当然日本の独特の表現の仕方は理解できませんので、「つまらない」と言う言葉をストレートに解釈して、「なぜ、つまらないものを私にくれるの?」ということになり、角が立ちます。
でも、日本人同士だったら、直接の意味は分からないけど、おぼろげながら謙虚な気持ちが組みとれて、そんなに不快感はありません。
しかし、品物を差し上げる方と、頂く方が、「つまらないもの」と言う言葉の本来の意味を正しく理解しておれば、互いにより好感が持てます。
マナーの世界では、言葉遣いはとても大切です。
しかし、日本語はとても難しくて、使い分けるにはかなり勉強しなければいけません。
特に敬語は複雑すぎて理解するのに大変です。
ちなみに敬語には、相手や第3者に対して敬意を表す、つまり相手を立てる「尊敬語」と、自分自身がへりくだることにより、相手に対して丁寧に伝える「謙譲語」、さらにいい方を丁寧にして、相手に敬意を表す「丁寧語」があります。
加えて、自分の発する言葉を品良くするための「美化語」もあります。
そして、尊敬語や謙譲語は状況により使い方が変わりますから、これらをすべて完ぺきに駆使することは、余程の人でない限り無理だと思います。
敬語な苦手な方は、「です」「ます」調で、心を込めて話しをされたらいいと思います。私も難しい敬語は良く解りません。
さて、「つまらないモノですが・・・」の使い方ですが、「凡人の私にとっては大変高価で素晴らしいものですが、社会的な地位やお金が有るあなたにとっては、さほど大したモノではない」と言う意味です。
つまり、自分をへりくだり、相手を立てた言葉なのです。
日本語は、誰でも、いつでも同じではなく、相手によって上手に使い分けるセンスが大切です。
これは、言葉遣いだけでなく、お辞儀等もそうです。
いずれも、年齢、立場、親しさ等により上手に使い分けることが肝心です。
使い方に自信が無い場合は、「つまらないものですが」と言うより、「なぜこの品物を選んだか」と言う、「前向きの言葉」を添えられるのがお勧めです。
「甘さ控えめのとても品の良い味の、岡山名産のお菓子です。お口に合えば嬉しいです」等の前向きで、具体的な表現が喜ばれると思います。
後日、持参した手土産の渡す「タイミング」や「渡し方」等にも詳しく触れて参ります。