マナーうんちく話509≪「女しぐさ」と「男しぐさ」≫
今年の夏は、暑さがことのほか厳しかっただけに、彼岸の声を聞くとホッとしますね。9月19日(水)は「彼岸入り」です。
秋の色は「黄色」に象徴されますが、ほのかに黄色づいた、首を垂れ始めた稲穂には、小さな種もみが秘める無限の力を感じます。
皆さんは、一粒の種もみが、どれくらいの米をもたらすかご存知でしょうか?
一粒の種もみは、実に2000粒から3000粒の米を実らしてくれます。
ちなみに、米一合は約150グラムで、米粒に換算すると6000粒くらいです。
米がいかに生産性の高い食物か、お分かりいただけましたでしょうか?
さらに、米は栄養価が高く保存性に優れており、美味しいのが特徴です。
イギリスの哲学者であり経済学者である、アダムスミスがその著書「国富論」で、米を絶賛したというのが納得できます。
現在地球上では、100以上の国で米が生産されており、それぞれの国で独特のコメ文化を築いておりますが、日本くらい高度に発達した国は無いようです。特に日本人にとっては「稲=命根(イネ)」です。
そして、これから稲穂の色づきと共に、田んぼのあぜ道には「彼岸花」が咲き始めます。彼岸の頃に咲くから彼岸花と名付けられたのでしょうが、本当に毎年正直に咲いてくれます。
また、この花は異名が多いのが特徴です。
「死人花」「幽霊花」のような縁起の悪い名前も有れば、「赤い花」「天上の花」のように縁起の良い名前も有ります。
加えて「秋の七草」です。
山上億良が万葉集で詠んで、7種を選定し現在に至っている歴史の有る花です。特に「萩」は万葉集に一番多く登場する花です。
ところで、「お盆」はご先祖様の里帰りの日ですが、「お彼岸」はご先祖様が眠っているとされるお墓に出向き供養する、仏教国でも日本独特の行事です。
お彼岸は7日間ですが、今日がその初日で「彼岸の入り」と言い、秋分の日の22日が「彼岸の中日」です。
彼岸の中日は、昼と夜の長さが同じであり、どちらにも偏りません。
しかも、暑くも寒くもない、ほどほどの日で、さらに、太陽が真西に沈むので、西方極楽浄土におられる阿弥陀仏を礼拝するのに、最もふさわしいのであります。
だから彼岸は、ご先祖様に接するには特別な日なのです。
ご先祖さまは目には見えません。声も聞こえません。
しかし、いつも私たちを温かく見守って下さっています。
従って、私たちは何時も、ご先祖様に感謝する習慣をつけたいものですね。
お願いばかりではなく、感謝する気持ちが大切です。
その感謝の気持ちを表すために、先人たちは、当時一番貴重品であった、米と小豆と甘味料を使用し、餅を作り、その餅を萩の花にちなんで、「お萩」と名付け、ご先祖様にお供えしたわけです。
日本人のマナー精神は、こうして磨かれたわけですね。
彼岸の入りの今日から一週間、先人たちに見習って、周囲のモノや人に対して、感謝の気持ちで過ごしたいものです。