マナーうんちく話521≪お心肥し≫
「桃の節句」や「端午の節句」に比較して知名度はいま一つですが、今日9月9日は「重陽の節句です」。
いわゆる「菊の節句」で、古代中国では菊酒を飲んで邪気を払う習慣があり、それが日本の平安貴族にも広がり、宮中行事として根付き、やがてそれが庶民にも普及しました。
ところで、花を愛でる習慣は各地に有るようですが、とりわけ菊を愛でる本家は中国のようです。
もともと、「菊」「梅」「竹」「欄」は四君子といって、気品のある植物として尊ばれていましたが、特に菊は「不老長寿の花」として重宝されています。
その風習が日本にもたらされ、やがて菊は、花の美しさのみならず、高貴な香りを漂わす、日本人に大変なじみの深い花になり、「菊人形」等の独特の文化も生まれました。
さらに「妻菊」と言う名で、野菜の一種として市場にも流通しています。
この花を食べる人は少ないようですが、毒消しの作用があり、刺身と共に食せば、食中毒を防ぐ効能があります。
ところで、江戸幕府が年中行事として年に5回制定した「五節句」をご存知でしょうか?
日本人として是非、知っておきたいことですので簡単に解説しておきます。
「節句」とは、いわゆる季節の移り変わりですが、この時期は体力が弱り、何かと病魔に侵されやすい頃です。
そこで、その季節の旬の植物を食べ、体力を付けて、邪気を払うために、色々な行事を行ったわけです。
今でも、全国津々浦々、多く存在する、まさに日本の文化ですね。
それでは、五節句を順に挙げてみます。
○1月7日 「人日(じんじつ)」の節句
七草粥を食べて邪気を払う節句です。「七草の節句」ともいいます。
○3月3日 「上巳(じょうし)」の節句
人形に自分の穢れを移し、川や海に流します。「桃の節句」ともいいます。桃は邪気を払う花です。
○5月5日 「端午(たんご)」の節句
男の子の健やかな成長と立身出世を願います。「菖蒲の節句」ともいいます。
菖蒲は邪気を払うと言われております。
○7月7日 「七夕の節句」
文や詩歌をお供えし、文章や裁縫の上達を願います。「笹の節句」ともいいます。
○9月9日 「重陽(ちょうよう)」の節句
菊酒を飲み邪気を払うと共に、若返りを願います。「菊の節句」ともいい、五節句の内でも、一番なじみが薄いですが、一番格上の節句です。
なぜなら、一番格上だとされている数字の「9」が重なる日だからです。
従って9月9日の今日は、一番縁起の良い日なのです。
婚活、デート、ビジネス、日常生活等で有効に利用されたら良いと思います。
最近の常識は、殆ど、売り上げアップのための戦略として作られたものが多いような気がしてなりません。冠婚葬祭の分野でもしかりです。
経済を活性化することは否定するモノではありませんが、それに不必要に押し流されてしまい、日本人が長い間、育んできた伝統行事が、売上にならないからと言って、影を薄めることは本末転倒だと思います。
時代がいかに変わろうとも伝統行事は大切にしたいものです。
意外に、家族・地域・職場等の絆づくり等に功を奏するかもしれませんよ。