マナーうんちく話90≪懐紙の優雅な使い方≫
マナーうんちく話94《酒盛りと神様と礼儀作法》
私の勤務していたホテルは、ケーキショップや居酒屋なども経営していた関係で、半年間位、居酒屋の店長を経験しました。
それまでの「赤提灯」にかわり、全国チェーンの新しいスタイルの居酒屋です。
日本の居酒屋の存在は、人と人との絆づくりに大いに貢献していると思います。
「無縁社会」が叫ばれる中、居酒屋には大いに頑張って頂きたいものです。
昔は、女性が外で酒を飲む機会は殆どありませんでしたが、女性の社会進出が盛んになるにつれ、居酒屋にも女性の姿が見られるようになり、今ではすっかり、居酒屋も様変わりしてきました。メニューや雰囲気等も女性を意識するようになってきましたね。
ところで、元々居酒屋の起源は江戸時代で、酒屋が、酒の味利きをしてもらうために、無料で、少しだけ客に飲ませていたのが起源だそうです。それが次第にエスカレートして、お金を頂き、商いとして酒を提供するようになったとか・・・。
そういえば、岡山でもそのような酒屋さん、30年前くらいは結構有りましたね。
江戸時代には、店を構えたり、あるいは屋台で、食べ物と共に酒を販売する形態が出来上がっていたようです。またこの頃には「水茶屋」といって、水やお茶を、旅人や行きかう人に販売する店も存在していたようです。このスタイルの店が、次第に繁盛し、やがて、お茶や水に加え、酒や料理も提供するようになり、最終的には「水茶屋=酒場」になったというのが通説のようです。
ちなみに、今でも酒を扱う商売の事を「水商売」と言いますが、その語源はこれです。
では、それ以前はどうだったかと言いますと、江戸時代前までは、「酒を商いする発想」はなかったようですね。
なぜでしょうか?
元々酒は、色々な「神事」や「儀式」において、飲まれる事が多いかったからです。
神事には、先ず神様にお酒と食べ物をお供えします。
日本の神様は、稲作と深く関わっておられ、米を醸造して酒を作るので、その酒や食べ物をお供えするわけですね。マナーうんちく話91《尾頭付きは神様への礼儀》を参考にして下さい。そして、神事が終われば、神事に参加した全員で、そのお下がりを、神様と共に、飲んだり食べたりしました。神様との「共飲共食儀礼」です。
ちなみに、今の、儀式後の「打ち上げパーティー」ですが、正式には「直会(なおらい)」と言います。祭りや、地鎮祭、祈願祭等で経験された方も多いと思います。
加えて、結婚式に新郎・新婦が契りを結ぶ、「三三九度」もそうです。この儀式は、大中小の3つの杯が一組になっており、それぞれの杯に、3回に分けてお神酒(みき)を注ぎ、さらに、新郎・新婦が3回に分けて飲みます。新郎・新婦の絆を深める儀式として、神前結婚式には欠かせないものですね。
私も過去に、何百組もの新郎・新婦の「三三九度の儀式」に立ち会いました。
厳かで、新鮮味があり、いつもながらとても真摯な気分になります。
若い人たちに、再認識して頂きたい、とても神聖な儀式だと思っています。
また、映画やテレビでよく見かける、親分と子分が契りを結ぶ時にも、杯を交わします。
このように、日本では、酒は、「人と神様」、さらに「人と人」とが、契りを結んだり、絆を深めるために、飲まれていたようですね。
今では、このような意味合いは薄れてきましたが、酒を飲み交わすことで、人と人との関係が強まり、より人間関係をスムーズに保つ文化は、すたれることはないと思います。
和食も、日本酒も、実に奥が深いです。