マナーうんちく話91≪尾頭付きは神様への礼儀≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:和食テーブルマナー

マナーうんちく話91《尾頭付きは神様への礼儀》

食事のマナー16、「魚料理の美しい食べ方」

「おかしらつき」の意味をご存知でしょうか?
日常生活の中で、嬉しいことやお目出度いことがあれば、「今夜はおかしらつきで一杯やりたいね!」などとよく言います。では、「おかしらつき」とはどういう意味でしょうか?

お目出度い席での和食には、必ずと言っていいほど「おかしらつき」が出されます。
今でも、おめでたい席での縁起物として、なくてはならないものですが、それなりの理由があります。
正式には「尾頭付き」で、魚の頭から尾の先まで、丸事と言う意味です。

昔は、嬉しいことやお目出度いことは、人間だけの力では実現することは不可能で、そこには必ず、「神様の目に見えない力」が働いていたと考えられていました。従って、嬉しいことやお目出度いことがあった時には、神様に感謝するとともに、「今後ともよろしくお願いいたします」との気持ちを込めて、魚をお供えしていたわけです。
神様にお供えするわけですから、当然その魚は、頭から尾の先まで美しく整っていなくてはいけません。すなわち、自然に存在する魚の、ありのままの姿で、お供えする必要があったわけですね。これが尾頭付きの理由です。
加えて、頭から尾までが、丸ごと綺麗な状態であるということは、今までこの魚は生きていて、新鮮ですよと言う意味もあります。

つまり、尾頭付きの魚は、神様に、お願いや感謝のしるしとしてお供えする時の、最高の礼儀・作法だったわけですね。

そして、その、「お供えした魚のお下がり」を、人が食べるわけですから、美しく食べなくてはいけません。

そこで、これから、「尾頭付きの魚の美しい食べ方」を説明いたします。
「難しい料理の食べ方」の典型的なものですが、一旦覚えてしまえば、あとは優雅に食べることができます。

先ず、魚の上側の身から食べます。これは当たり前ですね。頭の近くから、真ん中、やがて尾の部分へと食べます。上側の身を全て食べ終わったら、ひっくり返しません。
この点を注意して下さいね。
前回説明しました「懐紙」で頭を押さえながら、中骨と身の間に箸を入れ、頭がついた状態で骨を外し、それを、そのまま皿の上に置きます。皿の真ん中には、下の身があります。この部分も、頭側から順に、真ん中、尾の部分へと食べていきます。
食べ終わった時は、懐紙で覆われた魚の頭と骨が皿の上に載っておりますね。
「食べ終えた後も美しく!」が魚を食べる時の礼儀・作法です。


ちなみにフランス料理でも、ニジマスやシタヒラメなどは、一匹丸ごとの状態で出てくることが多々あります。これは、フォークとナイフで食べますが、その食べ方は和食と同じです。先ず上側の身を、頭近くから順に尾の方へと食べます。上の身を食べたら、身と骨をフォークとナイフではずして、頭と骨を皿の上に置き、下側の身を食べます。

魚料理を、姿勢を正し、美しく食べるということは、食材や、作ってくれた人への感謝の気持ちが、素直に反映されており、とても素敵です。本当に品のいい人とは、このような人を指すのだと思います。

今はアジやイワシが年中出回っています。またこれからはアユの季節です。これらの塩焼きなどで、日頃からこのような食べ方を練習されてみては如何でしょうか。最初は堅苦しいかもしれませんが、やってみられる価値は充分ありそうです。こういう食べ方は、家庭や学校ではあまり目立ちませんが、出る所へ出られたらとても目立ちます。
箸の先が大変細くなっているのは、魚をキレイに食べてほしいからではないでしょうか?

お洒落は、ほぼ100%の人が出来ますが、このような食べ方は、それなりに知識を得て、練習しなくてはできません。良い意味においてとても目立ちます。
心がとても豊かになります。





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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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