怒り任せの愚かな行動
京都コムニタスにおいて、REBT(論理療法/論理情動行動療法)は単なるカウンセリングの技法としてではなく、受験生が合格を勝ち取り、その後の人生を専門職として生き抜くための「核となる哲学・スキル」として、指導のあらゆる局面に組み込まれています。塾長である私、井上は日本人生哲学感情心理学会の認定REBTインストラクターであり、この理論をベースにした独自のコーチングと教育システムを構築してきました。
具体的にどのようにREBTを活用しているか、以下の5つの側面に分けて詳述します。
1. 不安という「感情」のマネジメントと「安心」の醸成
大学院受験、特に社会人の受験は「落ちたらどうしよう」「年齢的に後がない」といった強烈な不安との戦いです。多くの予備校は不安を煽ることで勉強させようとしますが、私はそれを否定します。REBTでは、不安などの「不健康でネガティブな感情」は、出来事そのものではなく、その受け取り方である「イラショナル・ビリーフ(非合理的な思い込み)」から生まれると考えます。
コムニタスでは、まず生徒が抱える「不合格になったら人生の終わりだ」「絶対に失敗してはならない」というイラショナル・ビリーフにアプローチします。「本当に終わりなのか?」「失敗したら死ぬのか?」と問いかけ(論駁)、事実に基づいた思考(ラショナル・ビリーフ)へと修正を促します。
「不安だから」という感情を根拠に行動すると、手当たり次第に参考書を買うなどの非効率な行動(自滅的行動)に走りがちです。REBTを用いて不安を「健全な懸念」に変えることで、生徒は「事実に即した合理的な学習計画」を淡々と遂行できるようになります。これがコムニタスが提供する「安心」の正体です。
2. 「必修」授業における思考の「エラーチェック」
京都コムニタスには、英語や心理学の授業とは別に、「必修」と呼ばれる独自の授業があります。ここでREBTの理論を体系的に教え、徹底的な「思考のエラーチェック」を行います。
具体的には、自分の中にある「~すべき」「~でなければならない」といった硬直した思考や、「自分はダメだ」というレッテル貼りに気づく訓練をします。私はこれを「思考のエラー」と呼んでいます。
例えば、研究計画書作成において行き詰まった際、「完璧なものを書かねばならない」というエラーがあると筆が止まります。ここでREBTの視点を入れ、「完璧でなくとも、現時点でのベストを出せばよい」と修正することで、行動を促進させます。この訓練を通じて、生徒は論理的思考力を身につけ、感情に振り回されずに課題に向き合う「セルフヘルプ(自己救済)」の技術を習得します。
3. コーチングによる「リミッター解除」と動機づけ
私は塾生との1対1のコーチングにおいて、REBT的対話を駆使します。多くの生徒は「私には無理かも」「学歴が低いから」といった自己否定的な思い込み(リミッター)を持っています。
これに対し、「それは事実に基づいていますか?」と問いかけ、その思い込みが非合理的であることを自覚させます。「大丈夫ですよ」という言葉は、単なる慰めではなく、この論理的帰結として発せられるものです。
また、「なぜ心理士になりたいのか」という動機を掘り下げる際にもREBTを用います。漠然とした感情(モヤモヤ)を言語化させ、その奥にある価値観や信念を明らかにすることで、強力な志望動機と研究テーマを引き出します。
4. 面接対策におけるメンタルトレーニング
面接試験は極度の緊張を伴う場面です。「頭が真っ白になったらどうしよう」という予期不安は、パフォーマンスを著しく低下させます。
ここでもREBTを活用し、「パニックになったらどうしよう」ではなく、「パニックになっても死ぬわけではない。その時は深呼吸をして『少し時間をください』と言えばいい」という具体的な対処思考(コーピング)を用意させます。
また、面接官の圧迫的な質問に対しても、感情的に反応するのではなく、「相手は私の適性を見ようとしているだけだ」と客観的に捉え直す認知の枠組みを作ります。これにより、生徒はどのような状況でも自分を見失わず、堂々と振る舞えるようになります。
5. 「感情のアクセル」と「論理のブレーキ」の獲得
私はよく「アクセルは感情、ブレーキは論理」という言葉を使います。心理職を目指す人は共感性が高く、感情豊か(アクセルが強い)な人が多いですが、それだけでは専門職として燃え尽きてしまったり、客観性を失ったりします。
REBTは、この感情のアクセルに対し、事実と論理に基づいた「命を守るブレーキ」としての機能を果たします。自分の感情を否定するのではなく、そのメカニズムを理解し、コントロールする術を身につけること。これこそが、大学院合格だけでなく、その後の臨床現場でクライエントと向き合い、長く活躍するために不可欠な資質(情動知能)であると私は確信しています。
京都コムニタスにおいてREBTは、単なる受験テクニックではありません。それは、不安や自己否定という「不健康な感情」のメカニズムを解き明かし、それを乗り越えて行動するための「道具」です。
受験勉強という過酷なプロセスの中で、生徒自身が自分のカウンセラーとなり、自分の思考と感情をマネジメントできるようになること。そして、合格した後も、心理職として、また一人の人間として、しなやかに強く生きていくための「一生モノの人生哲学」を手渡すこと。これが、私がコムニタスでREBTを使う真の目的であり、具体的な実践の内容です。



