そんなにエビデンスが好きなんだ?
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大学院受験において、面接は避けて通れない大切なプロセスです。特に臨床心理士指定大学院や公認心理師対応の大学院においては、学科試験と同等、あるいはそれ以上の重要性を持って評価されることが少なくありません。面接は単なる儀礼的な手続きではなく、「この人は大学院に入学して、問題なくやっていけるか」「この人に実習先を任せてよいか」といった適性を見極める場です。
適性がないと判断されると終了
面接における判断基準の中で、最も重視されるのが「適性」です。「適性がある」と完全に判断するのは困難ですが、「適性がない」と判断されるのは一瞬です。たとえば、不登校の子どもについて「絶対に学校に行くべきだ」と主張したり、心理職を目指すと述べながら「スクールカウンセラーなんて不要だ」と断言するような発言は、即座に適性なしと判断されるでしょう。
また、倫理観も適性の重要な構成要素です。「ばれなければOK」「証拠がなければ無罪」「法律よりも自分が正しい」といった価値観を持つ人は、臨床家としての資質に欠けますので、合格は困難でしょう。逆に、他者の意見に耳を傾け、安易に正否を断定しない姿勢は、適性ありと評価される傾向にあります。
面接対策の重要性
面接対策は、受験の準備として不可欠です。当塾では、受験報告書の蓄積により、過去の質問集が膨大にあり、実践的なトレーニングが可能です。しかし、質問内容は意外にもオーソドックスなものが多く、問われるのは主に「志望理由」「研究計画」「自己アピール」の3本柱です。
志望理由は、「なぜこの大学でなければならないか」「なぜこの資格を目指すのか」を明確に伝える必要があります。「第一志望だからです」と答えると、他の選択肢との比較を求められることになり、苦境に立たされます。また、「不合格だったら?」と問われた際、「これが最後の挑戦です」と答えると、それは本気ではないと受け取られてしまいます。適切な答えは「次受けます」一択です。
適正な自己分析から
面接対策の第一歩は、自己分析です。自分の過去、価値観、興味、将来像を言語化し、それが大学院の方向性とどのように合致するかを整理しておく必要があります。仏教における「縁」の概念のように、自分を構成している背景要因(家族、職歴、教育、経験など)を丁寧に見つめ直すことで、自分自身の輪郭がはっきりしてきます。
このような適正な自己理解があって初めて、面接において説得力のある志望理由や研究計画を語ることができます。逆に言えば、これができていない人は、面接官にとって「何を考えているのかよく分からない人」として映ってしまい、印象が悪くなります。
カミングアウトの禁止
面接では、自らの弱点を過剰に語る「カミングアウト」は避けなければなりません。「昔いじめをしていた」「テストが全然できなかった」といった発言は、聞かれてもいないのに自ら述べるべきことではありません。面接官は、共感や感情の吐露を求めているわけではなく、受験者が入学後に成長し、成果を出す資質を持っているかを見ています。
自己評価においても、「できないこと」ではなく「できること」を基軸に構成し、相手に安心感と信頼感を与えるようにしましょう。たとえば、「虐待の研究がしたい」という志望理由は問題ありませんが、「自分が虐待をした経験がある」と語るのは不適切です。研究動機は、被虐待児との関わりやボランティア経験など、他者との関係性の中で形成された方が説得力があり、安全です。
面接は人を見る
面接の本質は「人を見る」ことにあります。臨床心理士指定大学院においては、兵庫教育大学で推定300点、帝塚山大学で200点など、面接配点の高さからもその重要性がわかります。面接では、「一緒に働きたいと思えるか」「安心して実習先に送り出せるか」「研究能力はあるか」が重要視されます。
また、「自分の問題を他人のせいにする人」は確実に嫌われます。感情は自分の内部で生まれるものであり、「あの人が私を不安にさせた」といった他責的な発言は、自己認識の未熟さを露呈することになります。
暗記ではなく伝える力を
面接では、回答を丸暗記してくる人が少なくありませんが、これはかえって逆効果です。相手にとっては、原稿を読み上げられているような気分になり、不快感を覚えます。さらに、途中で止められて「もう一度言ってください」と言われたときに、暗記型の人はその部分から再開できず、「最初からでいいですか?」となり、面接官の印象をさらに悪化させます。
したがって、面接では「1分以内で要点を明確に伝える」練習を重ねることが重要です。これは一見難しそうに見えますが、実は準備と訓練によって誰にでも可能です。この力こそが、本気度を示す指標とも言えるのです。
最善を尽くす準備を
面接対策の最終的な目的は、「その瞬間に最善を尽くす」ための準備をすることです。過去の失敗事例から学び、自分の言葉で、正確に、自信をもって伝える力を養うことが、合格への近道です。面接は「適性」と「本気度」を見る場であり、これを伝えるためには、表面的なテクニック以上に、深い自己理解と丁寧な準備が求められます。
面接とは、単に質問に答える場ではなく、「自己をどう構築してきたか」を確認する場でもあります。特に心理系の大学院では、受験者の自己理解力や自己表現力が問われます。自分自身の人生経験、価値観、志向性を言語化できる力は、臨床現場でも求められる基本的な能力であり、それを確認するために面接は存在します。
したがって、面接の準備は単なる「受け答えの練習」ではなく、「自分という人間の在り方」を再確認し、それを整理して言葉にするプロセスと捉えるべきです。たとえば、なぜその大学院を選び、なぜそのテーマに関心を持ち、将来どのような臨床家・研究者になりたいかを、論理的かつ感情をこめて語れるようになるには、自分と向き合う時間が必要です。
また、面接は受験者にとっても、大学院との相性を見極めるチャンスでもあります。面接での質疑応答を通して、自分の研究や関心に対してどのような反応があるかを感じ取ることで、入学後の指導環境を予測する手がかりにもなります。つまり、面接は一方的な試験ではなく、対話を通じた相互確認の機会でもあるのです。
さらに、面接本番では、思いがけない質問にどう対応するかも重要なポイントです。準備した内容以外の話題に対しても冷静に対応し、自分の言葉で伝えることができるかどうかが見られています。その意味で、日頃から広く学び、多角的な視点を持つことも、面接対策の一部だといえるでしょう。
また、面接は自分の「癖」にも気づく貴重な場です。話が長くなりやすい人、反対にすぐに黙ってしまう人、相手の問いを誤解しがちな人など、自己の話し方や傾向を客観的に見直すことで、より伝わる表現へと磨きをかけることができます。練習の段階からフィードバックをもらい、自分の話し方を録音して客観的に聞いてみることも有効です。面接の録音を振り返ることで、自分では気づかない口癖や話の流れの乱れに気づくことができ、それを改善することで格段に印象がよくなります。
最後に:面接は未来を映す鏡
面接とは、過去の出来事を問われる場でもありますが、それ以上に「これからどんな姿勢で学んでいくのか」「どんな専門家になろうとしているのか」を問われる未来志向の場です。つまり、これまでの人生をどう意味づけ、どのようにして専門職としてのビジョンへとつなげていくのかが面接で見られているのです。
したがって、過去の失敗や悔いがあっても、それをどのように捉え直し、前向きな行動につなげているかが重要です。失敗のない人間など存在しませんが、それを乗り越えてきた経験こそが人間としての厚みを形作るものです。その厚みが、面接の場で自然とにじみ出るように、自分自身をしっかりと見つめておきましょう。
「面接対策は適性磨きから」――この言葉を心に留めて、今この瞬間から、自分自身を育てていくことが合格への最も確かな道となるでしょう。



