辞書を引く練習をした方がいいですか?
前回お伝えした通り、1月28に心理系大学院入試セミナー「英文読解って何ですか?」を開催します。
社会人でこれから大学院入試をお考えの方は是非ご参加ください。
日本人は英語を使う必要性を感じないから苦手だと思う
日本人は英語が苦手な民族と自分で考えているようです。確かに他のインドヨーロッパ語族圏国家と比べると言語的ハンディキャップはあります。同じ系統の言語なら、単語を変えれば「何とか通じる度」は日本語の比ではないでしょうから。
しかし、そんなことよりも大きな問題は、例えば小学校での英語教育です。一体子どもをどうしたいのか?という疑問しかありません。やはり、日本人の中にはもはや深く刻み込まれすぎて無意識のレベルにまですり込まれた受験信仰が背景にあると思います。英語教育に期待されるのは、結局受験にだけ対応するものにすぎません。受験さえ終われば、英語学習を
大学で止める人が大半を占めているのが現状です。
なのに、小学校で英語???
今、一番教育を徹底しないといけないのは大学生なのではないのでしょうか?
英語論文に驚かない身体作り
私は、大学生の時、3回生の時に、仏教学は英語の論文の方が数が多く、最新の多くは英語で書かれていると、初めて知ったくらいです。はじめて師匠から英語の論文を手渡されて、どん引きした記憶が今も鮮明にあります。言い訳でしょうが、そんなこと誰からも習った覚えはありませんでした。
じゃあ、見つけたは良いものの、誰か一緒に読んでくれるか?となると、英語であろうとなかろうと、正解か間違いかしか教育を受けてきていない私にとっては、答えのない、あるいは和訳の存在しない英語など読んだことがなかったのです。
必死で辞書を片手に和訳しましたが、さっぱり意味がわかりません。今のようにネットもありませんから、本当に手詰まりでした。これでも英語は中学以来自信はあった方で、国語の次に点数が取れる科目として自負心を持っていたのですが、何の意味もない自負心だったとショックを受けたことも鮮明に覚えています。
こういったちょっとした挫折感から、英語の専門学校に行ったということはあったのですが、こんな経験からも英語を教育しないといけないのは、小学生ではなくて大学生であることには確信を持っていますし、大学院生になって、英語を運用できるようになりたいと願っている人をたくさん知っています。大学生と大学院生に、本当に役立つ英語教育をすることこそ急務だと確信しています。
まずは文法
西巻尚樹著<英語のカンを一瞬にしてモノにする!>世界に1つだけの英語教科書
という本があります。
英文法の本ですが、とてもおもしろい本でした。私とは文法に対する考え方は異なりますが、こういう考え方もあるかと思わされる点もたくさんありました。特徴は、動詞を「判断語」と言っていることです。
大学院受験や編入受験において英語はほぼ必須科目です。もちろん私たちも英語を重視しています。大学院生になると、様々な学会や研究会に顔を出すのですが、ふと気がつくと、当たり前のように英語で講演や講義がなされます。日本人しかいないのに英語で研究会がなされることも珍しくありません。論文は英語で書くのが普通だという分野もかなりたくさんあります。博士論文は海外のジャーナルに掲載されたものを三点以上ためて、それを和訳してまとめたものとするという学科もあります。要するに英語はできて当たり前という世の中にいつの間にかなってしまっているということです。その流れは、我々が想像する以上にはやく、これからもどんどん進んでいくでしょう。
そのため、我々も「英語くらいで驚かない」くらいの身体作りが必要です。英語はインドヨーロッパ語族に属しますので、文法言語です。まずは文法を身につけると非常に理解が深まります。大学院受験や編入受験における英語の問題は大半は長文読解です。したがって和訳や要約が回答の中心になります。英語が分かるかどうかは確かに和訳をみれば十分にわかると思いますので、試験の方法はこれでいいのだと思います。要は私たちがそれにどう対応するかということです。複数の先生から聞いたのは、本当は英作文をさせたいということですが、今のところあまり英作文が出る大学はありません。龍谷大学でよく一問英作文が出されるくらいでしょうか。
和訳テクニックは文脈とセット
まずは和訳テクニックを身につけることが優先されます。和訳テクニックにあまりコツはありませんが、丁寧に読むこと、訳をできるだけ直訳にせず、意訳を心がけること。このあたりは第一段階として、考えておきたいところです。
例えば、
I was frightened by my father.
と来て、
「私は父によって怖がらされていた」
と訳されると、すでにイメージが固定してしまいます。またいったいこのお父さんは何をしたんだ?という疑問がわいてしまいます。もちろん間違ってはいないわけですが、こういったところから文脈理解がずれてくるのです。これは単に
「私は父のことが怖かった」
と理解しておけば、それほどずれなくてすみます。
結局前から読む
文法を理解していくには、まず「前から読む」ことが重要です。日本人は日本語の語感で英語に触れて当然ではありますが、英語と日本語では言葉のならびが全く異なります。漢文のようにレ点返り点を打てば何となく日本語になるような気がすることが多いのですが、そのような「バック読み」は私たちが英語を読むのを阻害します。これはおそらく明治時代の教科書の名残であろうと思われます。できるだけ前から読み、バックしないように心がけることから始めて、できるだけそれを習得する必要があります。特にバック読みをすると、補語が取れなくなってしまいます。長文読解において、補語が取れないのは、致命的と言えます。私が生徒と英語の読みあわせをしていて、たいてい詰まったときは、バックして、「どこにかけたら良いかわからない」ときです。この「かける」がくせ者です。日本語は「かける」「かかる」といった言い方を確かに使います。しかし例えば
the man running in the park
は「公園で走っている人」となりますが、英米人がrunning という現在分詞をman という名詞にかけて、後ろから読むということはあり得ません。当然、前から読んで理解しているはずです。しかし、そうは言ってもこれは簡単にはなおせません。少しずつ地道に訓練を積み、後ろからかけなくとも意味がわかるようになることが必要です。
私は、英語の授業で、「目的格補語」という言葉を自由に使えるように強調しています。目的格補語は、目的語の補足です。したがって目的語を認識していることが前提です。しかし、これまでの私の経験上、この目的語こそが足かせになっている人が多いと思います。またやっかいなことに、自分の問題が目的語理解にあることに大半が気づかないという悪循環が生じます。そうすると、さらにやっかいなことに、他動詞や前置詞も正確に理解できていないことになりますし、そうすると、結局SV でさえ理解できていないことになってしまいます。逆からかえせば、目的格補語が分かれば、目的語→他動詞や前置詞→文がわかるというよい循環ができ、理解につながります。ただし、このあたりのことについては、『世界に1つだけの英語教科書』では全く異なることが書かれています。
本当の意味で目的語を理解しようと思えば、他動詞や前置詞以外にも「対格」「直接目的語」「間接目的語」など、様々な用語を知っておきたいところですが、実際はそこまで細かいところまで知らずとも十分に英語を読むことはできます。ここでは、他動詞型と前置詞型の目的語が理解できれば十分です。例えば関係代名詞のwhomやin whichをみて嫌な感じのする人は、関係代名詞に問題があるのではなく、目的語に問題があるとみて良いでしょう。
例えば、
I play tennis.
She is a student.
と並んで、第二文型か第三文型かの区別がつかない人は、まずは他動詞の勉強から始めるのが良いでしょう。その次に自動詞という順番で動詞の勉強をして、その上で目的語理解につなげるのが良いでしょう。目的語理解ができてくると、少し目線を変えて、英文全体を見渡してみると、「セット」あるいは「かたまり」と言っても良いと思いますが、単語を単独で見るというよりも、単語と単語がセットになっているという見方ができてくるようになると、より正確に英文を読むことができます。これは、日本語の形態とは少し異なりますので、なかなか理解し難い部分もあります。五文型とは要するにセットの種類のことですが、SV が第一文型、SVCが第二文型 ですが、この場合、Cが主格補語でSCもセットです。まとめてSVCです。また、SVOは第三文型ですが、SVとVOのセットの集合体です。この他動詞と目的語のセットという感覚が我々日本人は苦手なようです。つい切ってしまい、セットという感覚が薄れ、漢文でいうレ点を打ってしまうのです。
次にSVOOの第四文型ですが、これはteach,show,ask,giveなどの特定の動詞が目的語を二つとるというセットです。最後に第五文型SVOCですが、SVとVOとOCというかたまりの集合体になります。第五文型の文を見て、瞬時に第五文型と
言える人は、実はかなり英語がわかる人です。
I always looked upon those who told me my faults as a friend.
私は自分の欠点を指摘してくれる人をいつも友人と見なした。
これも第五文型の一種です。look upon(これは他句動詞といいます)の目的語がthoseで、その補語がa friendです。asはこの場合よく補語の印と言われます。以上のようなセット感覚を身に付けると次は、細かい文法テクニックを習得することが必要になります。
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