医療看護系の入試で面接で言うと「一撃不合格」につながること

井上博文

井上博文

テーマ:KC看護アカデミア

看護大学や看護学校での面接は合否への影響が大きい

3月に入りました。次年度、受験をする人にとっては、そろそろいろいろな不安が押し寄せてくる頃です。京都コムニタスは、看護大学3年次編入の歴史は長く、かなりの実績を積み重ねて来ました。近年は、難易度の高騰と、編入入試の実施からの撤退校の増加もあって、本当に難しい試験になっています。京都コムニタスの医療、看護系受験における20年の面接対策のキャリアはKC看護アカデミアが継承していきます。もちろん私も講師として参画しますので、そのノウハウは私自らお伝えすることになります。京都コムニタスでは必修の授業の中で、学科以外でやらねばならないことを全部お伝えする授業をしています。とりわけ面接対策には力を入れてきました。面接に力を入れる理由は、
①実はほとんどの人が面接の経験がない
②実は面接対策をしたことがない
③面接で点を取る方法を考えたことがない
④面接で不合格になってしまうことが多いことを実は知らない。
こうなると、不合格になっても、なぜ不合格になったか気づかないままになってしまいます。受験においてこれは致命的です。

面接対策の入り口は「こんなこと言ったり、書いたりしてはダメ」シリーズからです。当塾は社会人の方がたくさんおられますが、社会人入試は、これまでの社会人経験をどのように次の医療の世界に活かすのかがポイントになります。

伝わらないのはこちらの問題

「真意が伝わっていない」
「そんなつもりじゃなかった」
「そんな意味ではない」
と面接後になってから後悔することはよくありますが、自分の発言を誰に伝え、誰が実際に聞き、その人がどう感じ、どう考えるのかをイメージしておくことは発言者の義務です。学校が決まると、足を運び、施設を見て、先生の論文を集めて、読み、その学校に入って自分がどういった成果をあげようとするのかについてイメージを作り始めます。悪しき大学受験の影響に染まってしまうと、そのような志望理由のための勉強を「余計なこと」思い込み、「そんなヒマがあったら勉強したい」と漠然と考えてしまいます。しかし、この考えは捨てておきましょう。自分で足を運んで、自分の目で見て、本心から、ここに行きたいと思える学校に行くことが大切ですし、そう思えるならば、理由もついてくるという流れができれば自然な形で志望理由を作ることができます。
以下、長くなりますが、言ってはならないことを理解するには大切なことになります。これを知っておけば「一撃不合格」を回避できます。

面接で言ってはいけないこと

①「第一志望」
これは、どの受験にも言えますが、この言葉は使ってはいけません。志望理由は「その学校、学科、資格でなければならない理由」です。「その学校、学科、資格が一番良い理由」では決してありません。第一という言葉は第二以降を想定していますので、他の学校を受けると主張しているようなものです。志望理由は「その学校でないといけない理由」ですから純粋に相手のことだけを考えなければなりません。私の師匠は、主張することは愛の告白だと思えといつも言っていましたが、告白をする時に
「あなたが第一志望です」
なんて言おうものなら、ほとんどコントです。またかえって失礼です。志望理由を言う時に想定することは、なぜ看護師でなければならないか、保健師でなければならないか、なぜその学校でなければならないか、社会人の場合は、まぜ今受験しないといけないか、などです。
これは難しいものです。「●●でなければならない理由」をたてようと思えば、●●についてよく勉強しておかねばなりません。足も運んでおく必要もあります。「第一志望」と言ってしまう人は、そう言っているにもかかわらず、面接の時に、「今日初めてキャンパスに来て、この環境のすばらしさに感動しました」なんて言ってしまい、面接官に怒られたという冗談みたいな話もあります。
②「頑張る」系統
「努力する」も近いですが、使い方によっては使えます。しかし、「頑張る」は使い途はありません。理由として、大学に限ったことではありませんが、成果が求められる場面があります。例えば、「○○日までに●●を出してください」と求められて、「頑張ります」と応じられると、そこには「できないかもしれない」というニュアンスがこもっています。求めた相手からすると、結果が出るのかどうか見込みがたちません。またやる気があるのかどうかもわかりません。こういうときの答え方は
①「はい」②「いいえ」③「できるかどうかわかりません」
のいずれかです。②はほぼないでしょう。中途半端な回答は、誰の利益にもなりません。また、面接場面で例えば、「最後に言っておきたいことがあればどうぞ」と言われることがよくあります。そこで、「頑張りますのでよろしくお願いします」という人がいます。これも不適切です。勉強にせよ、研究にせよ頑張る必要があるなら、頑張るのは当たり前のことです。やはり具体的にどういうプランがあり、それをどのようにして実現するのかの戦略を言う方がはるかに効果的と言えます。

③ネガティブ系統
これは結構多いと思います。特に「できない」「無理」系統は是非避けて欲しいと思います。どういう分野の世界に行っても同じですが、「できない」人は不要です。冷静に考えると当たり前のことです。しかし、本人は「謙虚」のつもりかもしれませんが、すぐに「いやいや、私なんて……」と口にしがちな人は多いと思います。ひどい場合、「私ごとき」「私みたいなもん」と言う人までいます。これは「謙虚」ではなくて、「卑屈」です。卑屈な人は結構他人を不愉快にします。そのレベルは「傲慢」と同じくらいです。つまり、片方で、私みたいなもんと言いながら、片方では「そんな私を合格させて」とも言っているわけです。ネガティブ系統の別のパターンは、文字通り何でも「否定」から入る人がいます。これは性格的なものもあるかもしれませんが、対話者がなにか言うと、極論を言えば「いい天気ですね」と言われても「いや…明日あら雨らしいですよ」と、とりあえず無意味としか思えないことでも「いや」と否定をします。「はい…」と素直に言うと、なんとなく負けた気になると私にいった人もいますが、相手は結構不愉快になります。このような人は、他人との会話では、まずは否定せずに聞いてみることから訓練をしてみる必要がありそうです。否定から入る人は、実際はさておき、人の話が聞けない人と考えられてしまいます。

④対外向け以外の一人称
受験で使う一人称は、基本的に使うのは「私」です。日本語は複雑な言語で一人称単数がたくさんあります。「私」以外には「僕」「俺」「手前」「あたし」などなど。俗語を入れるとまだまだあります。特に男性と女性は使い分けがなされるようです。一人称を何と言うかで葛藤するという稀少な言語で、それはそれで文化としては素晴らしいと思うのですが、少なくとも入試場面では「私」以外は使用しないのが普通です。なぜか男性に多いのですが、かなりこだわりを持っている人もいます。いついかなる時も「俺」でなければならないと言う人がたまにいますが、もちろん試験では不適切です。はっきり言えば、余計なこだわりで、良い評価につながることはありません。常識知らずとしか捉えてもらえないでしょう。「僕」は必ずしも嫌われませんが、日常会話用語であり、公式な場で使うのは適切とは言えません。やはりTPO にあわせた言葉づかいができる能力が評価されると言えます。
⑤「かっこいい」「すばらしい」等抽象的なもの
このあたりは避けましょう。以前のひどかった事例で、「かわいそうな患者の役に立ちたい」と言った人がいましたが、もちろんこれは論外です。受験をする人は、いついかなる時でも具体的に話すこと、相手に理解してもらえなければ意味がないということを覚えておかなければなりません。採る側は、「伸びそう」「雰囲気がいい」「責任感が強そう」といったような抽象的理由で採ることもありますが、それでもこちらは抽象的な言葉を使わず、具体的な言葉を使わねばなりません。
「人間性」も漠然としている言葉の代表格の一つと言ってよいと思います。例えば「私は●●で人間性を磨いてきました」「私は看護師や保健師のすばらしい人間性に触れ・・」などと言ってしまうと、「あなたにとって人間性とは何ですか?」と返されるでしょう。しかし、人間性は自己評価が難しいものですので、実際に面接の場で使える回答を練るのは困難です。だからといって、他人から「君は人間性が優れているね、と言われます」などという自己アピールもかなり違和感があります。仮に人間性に自信があるならば、漠然と人間性と言わずに、例えば、ボランティアでどのような成果をあげてきたかを具体的に述べれば聞き手がその人間性について判断するでしょう。私の知人で、私財をなげうって、カンボジアでボランティア活動をしていた人がいます。学校建設に携わったり、現地で自ら英語を教えたり、といった活動を定年退職後から始めています。それを見聞きすれば、その人の人間性は間違いなく優れていると考えられると思います。面接で使う言葉は使い方を間違えないように練り上げておくことが重要です。
⑥冗談みたいな本当にあった悲劇を生んだ言葉
看護大学を受ける時、「あなたはなぜ保健師になりたいのですか」という質問はかなりの確率で聞かれますが、その際に、悲劇の事実として
「食べていくため」
「会社をリストラされたから」
「親が医療従事者だから」
「自分でもできそうと思ったから」
「現場に出たくないです」。
これは社会人入試にまれにあると聞きます。

その他Q&A事例

「最後に何か質問があればどうぞ」と言われます。最近特にこの傾向が強くなっています。当然、何か質問したいところです。何もありませんと言ってしまうと、興味がないように思われてしまうかもしれません。時々「厳しいけど大丈夫?」「現場ではすぐ怒鳴られたりするけど大丈夫」といった具合に受験生の不安を煽るような言い方をされることもあります。そのせいなのか、つい不安になってどのくらい厳しいのですか、と聞いてしまうと、「現場に出るのが不安なの?」「厳しいのが嫌なの?」といったさらに厳しい質問が待っています。不安を簡単に話してしまう人は、患者に対しても同様で、患者に自分の不安を聞いてもらってしまうなんてことがあると、医療者としては不適格というように見られても不思議ではありません。不安を簡単に口にしないように心がけておきましょう。

次に
Q:「あなたはどんな保健師になりたいですか?」
A:「患者の心のケアができる保健師になりたいです」

これは絶対悪いとまでは言いませんが、できればあまり言って欲しくない言葉です。一見、それほど悪いような印象はありませんが、大学の保健師課程は、医療従事者としての基本的な能力の取得が最優先です。心のケアよりも優先順位の高い基本的技能の習得と熟練を目指すのが先ということです。車の免許を取りに行って、救命の訓練だけ一生懸命するようなものです。もちろん、車の運転技術の習得が最優先になるはずです。
この種の試験の面接で、本道の医療技術の習得を二次的にとらえていると理解されてしまうと、印象が悪くなることは間違いありません。この点は優先順位を間違えないようにしておく必要があります。

次に「貴校を志望した理由は国家試験合格率が高いからです」「社会人が手厚いケアが受けられるからです」
このように言ってしまうと、「じゃあ合格率が低かったら来ないのですね?」「手厚いケアがないと来ないのですね?」の一手で終了です。高い低い、良い悪いなど、反意語が明確な答えはあまり言わない方が良いでしょう。終了の一手を簡単に打たれてしまいますし、それを切り返す作戦を練るより他の回答を探す方が賢明だと思います。また、合格率やケアの高さを志望理由にするということは「私は貴校に依存します」と言っているようなものですので、それよりも自分がその学校でなら学べること、成果をあげられることを述べるのが適切です。これは看護だけに限っていないですが、学校や先生が自分に何かをしてくれるということを期待する発言が近年増えてきているのですが、それはきわめて不適切です。学校に入る上で大切なことは、自分が何をするかであって、相手に何をしてもらうかではないです。最近は、私たち予備校や塾業界も至れり尽くせりを学生に教え込み、それが当たり前だと若者が思い込んでいる傾向が強く、学校を自分の下位に置く価値観が当たり前になっている人が多々見受けられます。大切なことは適性に自己を評価し、今の自分の能力を正確に査定し、その上のでこの学校でなら良い成果があげられるということを証明することです。

次に「私はほめられて(叱られて)伸びるタイプ」です。
意外にこのようなことを言う人は多いのですが、どうも「厳しい」を勘違いしているようです。厳しいからといって叱られるとは限りません。叱られない厳しさもあります。また叱られる環境が厳しいわけでもありません。叱ってくれるだけ甘い環境ということも十分にあり得ます。ほめられて、あるいは叱られて伸びるというのもよく言われはしますが、私はあまりそのようなタイプは知りません。叱られるとすぐに萎縮して何もできなくなるタイプはたくさんいます。またほめると調子づいて、勢いを増す人もたくさんいます。しかし、だからと言って伸びたかどうかと言えば、何とも言えないとしか言いようがない人が大半です。したがって、ほめられたら伸びるという主張は相手からすると「叱らないでね、叱ったら私は伸びないからね」と根拠のないアピールをしているようにしか聞こえないのです。叱られたら伸びるというのもほぼ同じで、つまり「私は言われないとできないので、たくさん教えてね」と言っているわけです。いずれにしても相手に依存を申し入れている文言であって、自分が優れているアピールにはなっていないのです。

次に
Q「あなたの長所と短所を言ってください」
A「私の長所は●●です。短所は気が短い、協調性がない、云々」

長所短所はよく聞かれるのですが、長所はともかく、短所で自分の悪いところを一生懸命探して、力一杯自分をけなす人がいます。おそらく真面目なのでしょうが、自分の短所などそんなに一生懸命探す必要はありません。まして、気が短いだの協調性がないなどと言ってしまうと、致命傷になりかねません。医療従事者は気が短いのは問題ですし、協調性が仮にないとすると、不適格者の烙印を押されるでしょう。不思議なことに、長所と短所を聞かれると、短所ばかり答えようとする人が多くいます。しかし、実際は逆で、まずはしっかり長所を見つけておいてください。自分の良い部分、能力、今できることこれまでしてきたこと、医療者にむいている性格などは常に頭の中に入れておく必要があります。例えば、人の話がよく聞けるというのは、一応美徳と言えますので、長所として使えます。また、ボランティアなどを根拠に行動力があるというのも使える事例としてあげられます。


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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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