本気が相手の心をうつ

井上博文

井上博文

テーマ:実は知らない面接対策・集団討論対策

サッカーワールドカップ、日本は残念ながら敗退しました。ワールドカップはまだ終わっていないのですが、日本が負けると終わったような気になってしまう、にわかサッカーファンの典型です。やっぱり出場するだけでも相当強い上に、決勝トーナメントに上がってくるチームはものすごく(つたない言い方ですみません)強いのでしょう。日本代表も本当に強かったと思うのですが、なかなかベスト8に届きません。奥が深い偉大なスポーツです。また次のワールドカップを目指して、若い人たちが出てきて、きらびやかに輝くことで、さらに次の世代の心を引きつけて・・という順繰りができており、その中でもどんどん進化していくというシステムができています。世界中のサッカー選手とそれを応援する人々の本気を引き出せるスポーツはそんなに多くありません。

一方で、子どもの教育相談で必ず言われることですが、「うちの子どもは何にも本気になれないんです」といった類のトピックです。そもそも本気とは何か?と問うてみると、意外に難しく、人によって、かなり認識が異なるのではないかと思います。また他人から「本気か?」と問われると、「本気です」と答えるにはそれなりの思い切りが必要です。

随分前に本気を伝えるというコラムを書きましたが、英語では「本気」そのものの単語は思いつきませんが、earnest(真剣)とか、seriousness(真面目)くらいでしょうか。でも、日本語の“Honki”とはニュアンスが微妙に異なるように思います。私の言い回しで、よく「本気の言葉を伝える」というものがあります。例えば、京都コムニタスでは面接対策に力を注ぎますが、面接では、志望理由や研究計画を暗記していくことは望ましくありません。文語で書いたものを暗記していくと、口語ではまず使わない言葉がどうしても入ってしまうからです。聞いている側からすると、肝心の中身が入ってこず、違和感しか残らないのです。そうすると、相手は興味を失い、何も印象に残らないという悪循環になってしまいます。その意味で、暗記したものをそのまま伝えるのは「本気の言葉」ではないのです。私は塾内で、自らの態度で本気を示すようにしています。この場合の本気というのは、「強い気持ち」「後ろにひかない意志」「覚悟」「情熱」、こういった類のものと言って良いと思います。私自身の経験で言えば、本気というのは生まれ持っているものではなく、そういったものを持っている人との出会いが鍵を握っていると考えています。上っ面ではなく、相手と対峙する時に、どれだけ本気の言葉をもらって、それに対してどれだけ誠実に応じるか、これが重要なのです。これは人間関係全般に言えることです。おそらく親子関係、夫婦関係、友人関係、教師、生徒関係などなど、全般に適用されると考えて良いと思います。通常、子ども、あるいは若い頃に、大人、あるいは熟練者、先輩から本気の言葉をもらうところから、何かしらのきっかけが発生します。そこから、何かを始めます。子どものころはスポーツが多いかもしれません。研究で言えば、過去の研究者の火の出るような論争に触れてみると、その世界をのぞいてみたくなります。大昔の仏教研究者、最澄、徳一の論争は、ある意味、人を惹きつけます。しかし、そううまく人との出会いがないという場合はどうするのかというと、私の場合は、たくさん美術館や博物館に行きました(それはそれで師匠に言われたからですが)。朝から晩まで図書館に籠もることもよくやりました。これは、質より量がものを言います。できるだけ、たくさんの文物を見て、そこから何かを感じ取る訓練をすることは、その文物に宿る本気を読み取る訓練に連なります。それがわかってくると「こんなもの何か意味があるの?」といった言葉は徐々に少なくなってきます。博物館に並ぶものは、何かしら、意味があり、そこには制作者の強い情熱が籠められているものが大半です。例えば、「シルクロードを通ってきた」と言うのは簡単ですが、それに費やした年月、命(人、動物)、金銭、人数に思いをはせると、本気でない人には到底できないことなのです。その結晶が、残されたものに宿っているのです。これに触れることは、先人の本気に触れることでもあります。まずは本気に触れ、そして自分も本気になって、その上でその本気を他者に情熱的に伝える訓練をしてみましょう。


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井上博文
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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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