無責任の体系

井上博文

井上博文

テーマ:大学院に行くメリット

緊急事態宣言が5月末まで続くとのことですが、教育現場は大混乱です。1年間何をしていたのか、という問い(というよりクレーム)は、様々な分野において噴出していますが教育現場の混乱は、学校側の問題は少ないと思います。学校は愚か者の政治に振り回されてきた被害者とも言えます。この混乱の諸悪の根源は基準を決めないことです。
基準の設定については少し前に書きました。
こちら
基準を決められない最大要因はもちろん、無責任体質です。今の状態を見て、多くの人は丸山真男の「無責任の体系」の基本的類型の「神輿」「役人」「無法者」の三つを思い出すのではないでしょうか。個人的にはこの方の理論に感銘を受けることはあまりなかったのですが、悪夢の前政権以来、常に「主体性を喪失して盲目的に大きな力にひきまわされる精神」に恐怖を感じています。より怖いのは神輿自体が無法者であるところですが。

「基準」考える時の基本は、一般の会社や店が、自分のところの商品を売り出すときに「定価」を決めます。株式会社は法的にも営利を追求して、社員に利益から給与を分配しないといけません。上場の株式会社なら、株主への分配も考えて経営をしないといけないようになっています。だから、株主から委託された(ことになる)経営者は、この分配責任を持って、定価を定めて、商品を販売し、利益を生み出していく責任があります。
これがごく普通の経営で、何も特異なことはありません。これでもって会社は「公」の責任を果たし、果たせないときは経営陣が株主から解任されることもあります。

一方で、この無責任の体系の人々は、「神輿」「役人」「無法者」ともに解任されないのです。リコールという方法がありますが、周知の通り、名古屋で無法者政党にとかげの尻尾切りにあった人物が主体となって犯罪行為をしたことで、このリコール自体も滅茶苦茶になりました。
この無法者政党を作った元大阪府知事は、民主主義の基本は選挙と言い切りますが、解任ができない選挙制度を「身を切る改革」をしようとした形跡はありません。政治の無法ぶりをリストアップすれば、リストだけで卒論くらいの分量になると思いますが、この無責任の体系の人々は、解任されません。当然、株式会社なら即解任動議の後、解任でしょう。解任されない分、これまでは「辞任」が当然のこととして認識されてきましたが、悪夢の8年間以来、切ることろがなくなるほど「断腸の思い」をするだけで、辞任をしなくても良いという例が、戦争時代以来、復活してしまいました。

オリンピックも同様です。自分のクビをかけて「やる」「やめる」と言う人が誰もいないのです。オリンピックをやめると、「賠償金が~」という人は少なくないですが、「いくらかかるのか」ということを聞かれて、この方のような大会組織委員会の事務総長が「最近、そういうご質問が増えているが、考えたことはない。あるのかどうかも、見当がつかない」と言えてしまうわけですから、ちょっとしたホラー映画です。この人も無責任の体系の人々の典型ですし、こういった人が「役人」の中枢にいてしまうことが、この国に悲劇を招きます。賠償金がなぜかかるのか、IOCは請求すると言っているのか、誰が保険に入っているのか、IOCは保険に入っていないのか、最悪のケースで賠償金がかかってしまうような契約になっているなら、その契約は誰がしたのか、かかるならいくらかかるのか、払うなら、税金だとして、国税なのか、東京都の税なのか、公金で払う場合、国会も含めてどこの議会を通すのか、予算は考えているのか、いつまでに請求書が来て、分割ではらうのか、一括なのか。
払うことが想定された場合、その金額と、強行開催した場合、最悪どのような感染爆発があるか、その場合どこにどのくらいの資金が必要になり、違約金を払った方が安価なのか、それとも強行開催をした方が安価なのか・・・・・・・・
言い出すとキリがないくらい、基本的な疑問が並びます。不明点のリストだけで修論が書けそうです。ここで言っているのは、特別なことではありません。普通の会社経営者なら、誰でも思いつく疑問です。こういったことを考えずに、あるいスタッフに何も知らせずに、イベントを開催するなどあり得ないことです。

「無責任の体系」の最も怖いところは基本的な問題解決能力を持った人が、その場におらず、無責任のシンボルの「神輿」「役人」「無法者」が、よく「竹やり」と表現されますが、希望的観測や気合いや運任せで、バラバラに好き勝手を言い、それが無駄に拘束力を持ってしまうことです。さらに怖いのは、他国と関わってしまうオリンピックなどのイベントでは、他国はこの国のそんな事情を忖度してくれないということです。もっともっと怖いのは、ウイルスは他国以上に忖度してくれないし、運に任せてしまうと、国民の命が最悪の事態にさらされてしまうことです。

とはいえ、かつて私が丸山真男に共感できなかったのは、このメカニズムはその通りだとしても、それを指摘したとて、それを選んだのは、ナチスであれ、前政権であれ、大阪府、大阪市であれ、結局国民自身だからです。第二次世界大戦の日本人の犠牲者は厚労省が言う240万人から300万人程度までが言われますが、死者を数字でしか見なくなるところから始まって、これほどの犠牲を「尊い」と飾ってきた連中が、同じことを繰り返しているのを、国民が止められないわけですが、そこに流されて同調していくのか、絶望してあきらめてしまうのか、あきらめずに言葉を発し続けていくのかは、今私たち普通の人間の見識が問われているところです。
とりあえず、私は言葉を発し続けようと思っています。


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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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