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井上博文

大学院・大学編入受験のプロ

井上博文(いのうえひろふみ) / 塾講師

株式会社コムニタス

コラム

公認心理師の他職種連携

2019年5月7日

テーマ:公認心理師試験対策

コラムカテゴリ:出産・子育て・教育

公認心理師試験では、ブループリントによれば、公認心理師の職責関連が9%ですが、その中の③多職種連携・地域連携は、中項目が「多職種連携・地域連携の 意義及びチームにおける 公認心理師の役割」、小項目が「保健医療、福祉、介護、教育との連携」「家族との連携」「自己責任と自分の限界」「支援に関わる専門職と組織」このようになっています。これについては昨年と変化はありません。公認心理師法において、この連携について述べるのは、第42条です。この42条はとても重要な条文です。まず、今年も何らかの形で出されるでしょうから、しっかり読み込んでおくべきでしょう。

公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。

2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

日本国内では、公認心理師が心理職初の国家資格ですから、これまでは、こういった連携は、臨床心理士など、民間資格の人が行なっていました。その意味で、連携は、心理職としては、初めて法律で定められたことになりますから、試験には出やすいと見るのが妥当です。
「医師の指示」についてはいつも話題になるところですので、もはや知らないという人がいないくらいです。私たちが教材や模擬試験を作る際に強く意識したのは、この公認心理師法に非常によく似ている「精神保健福祉法」です。ちなみに精神保健福祉士の場合、医師の指示ではなく指導です。

この連携を考える際に、必ずおさえておかねばならないのは、関係職種です。いわゆる主要5分野の「保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働」です。その中の保健医療だけでも覚えねばならない法律がいろいろあります。これらをしっかり見て公認心理師法との関係をよく考えることが重要だと思われます。
連携と協働は違いますが、連携は他職種が共通の目的を達するために連絡、調整を取ることであり、協働は二者以上の専門家、あるいは専門家以外の人が、時にはクライエントを交えて、共通の目的を達するために協力することだそうです。ここでは連携に注目しています。意識しておく言葉としては、チームです。特に重要なのはチーム医療とチーム学校です。現代は、医療にせよ、教育にせよ、専門化、細分化しており、1人の力では届かないことがほとんどです。しかし、専門家同士の壁は今も非常に高く、連携しないといけないことはわかっていても、容易ならざることも多々あります。学校もひと昔前は、外部の人間が入ってくることを頑なに拒否するという時代もありましたが、臨床心理士をはじめとするスクールカウンセラーが入ることで、よくなっていくケースも少なくないと聞きます。
連携には地域連携もあります。地域連携とは、チームに加えて、近隣の様々な支援施設の専門職が連携して対応する場合を言います。児童虐待等の事案だと、最近、話題にあがりやすい児童相談所で、医師、弁護士、福祉職、心理職などが連携し、組織として支援方針を決めます。児童相談所の心理職は、子どもの心理アセスメント、行動観察、知能検査を行います。
このチームで難しいところは、第41条の秘密保持義務と矛盾するのではないかと思ってしまう面も出てきますが、ある程度第42条はそれを想定しているのだと思います。優先はチームではないかと考えられます。これもまた主任によれば守秘義務は、集団守秘義務というものがあって、チームで秘密が保持されれば、治療者個人の守秘義務は解除されるという見解もあるようです。だからアセスメント結果は、児童相談所だけではなく、他の公的機関が支援方針を決める材料にもなり得ます。

「公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」
この文言が、物議をかもしましたが、結果としてここに記されましたので、やはり医師側としてはこの指示という言葉は外せなかったのだろうと思います。この項目については、「公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準」が平成30年1月31日付で通知されています。
こちら
これによれば、
「第42 条第2項の運用について、公認心理師の専門性や自立性を損なうことのないようにすることで、公認心理師の業務が円滑に行われるようにする観点から定めるものである」。
だそうです。
「特に要支援者に主治の医師がある場合には、要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供する等により、公認心理師が主治の医師と密接に連携しながら、主治の医師の指示を受けて支援行為を行うことで、当該要支援者の状態の更なる改善につながることが期待される」

これについては妥当と言えばそうだと思います。これも連携の一つだと考えるべきだということでしょう。

3.主治の医師の有無の確認に関する事項
「公認心理師は、把握された要支援者の状況から、要支援者に主治の医師があることが合理的に推測される場合には、その有無を確認するものとする」

公認心理師は要支援者に主治医がいるかどうか確認しないといけないということです。
この「確認」については、
「主治の医師の有無の確認をするかどうかの判断については、当該要支援者に主治の医師が存在した場合に、結果として要支援者が不利益を受けることのないよう十分に注意を払い、例えば、支援行為を行う過程で、主治の医師があることが合理的に推測されるに至った場合には、その段階でその有無を確認することが必要である」

「主治の医師に該当するかどうかについては、要支援者の意向も踏まえつつ、一義的には公認心理師が判断するものとする。具体的には、当該公認心理師への相談事項と同様の内容について相談している医師の有無を確認することにより判断する方法が考えられる」
「なお、そのような医師が複数存在することが判明した場合には、受診頻度や今後の受診予定等を要支援者に確認して判断することが望ましい」

以上のような確認になります。

「また、要支援者に、心理に関する支援に直接関わらない傷病に係る主治医がいる場合に、当該主治医を主治の医師に当たらないと判断することは差し支えない」

「また、主治の医師の有無の確認は、原則として要支援者本人に直接行うものとする。要支援者本人に対する確認が難しい場合には、要支援者本人の状態や状況を踏まえ、その家族等に主治の医師の有無を確認することも考えられる。いずれの場合においても、要支援者の心情を踏まえた慎重な対応が必要である」

この確認作業が主治医の指示を受けるかどうかに関わってきますので、法的に押さえておきたいのは、この確認に関することとなるでしょう。

運用基準によれば、「主治の医師からの指示を受けなくてもよい場合」が記されており、これは必ず知っておかねばならないことだと言えます。引用します。
「以下のような場合においては、主治の医師からの指示を受ける必要はない」
・ 心理に関する支援とは異なる相談、助言、指導その他の援助を行う場合
・ 心の健康についての一般的な知識の提供を行う場合

公認心理師と臨床心理士と異なる点はたくさんあるので、いつも「別資格」と考えてくださいと言っています。特に、この「助言、指導」というところが法律で明記されるのは、公認心理師の特徴とも言えます。臨床心理士はこれが義務化されることはありません。指導をするというより、クライエントに寄り添っていくというイメージです。だから、その意味において、公認心理師が指導をする際には医師の指示を受ける必要がないという文言が、これからどうなっていくかは注目すべきですが、現時点で、この点は踏まえておくべきでしょう。

「また、災害時等、直ちに主治の医師との連絡を行うことができない状況下においては、必ずしも指示を受けることを優先する必要はない。ただし、指示を受けなかった場合は、後日、主治の医師に支援行為の内容及び要支援者の状況について適切な情報共有等を行うことが望ましい」

これは「望ましい」となっていますので、第46条から50条の「罰則」には含まれていません。したがって、問題で「医師の指示をうけなければ罰則を受ける」などというものが出たら、×ということになるでしょう。あくまで優先順位のことを言っていますので、医師法に違反するというものでもありませんので、それほど強制力のあるものではないということです。

「(5) 要支援者が主治の医師の関与を望まない場合
要支援者が主治の医師の関与を望まない場合、公認心理師は、要支援者の心情に配慮しつつ、主治の医師からの指示の必要性等について丁寧に説明を行うものとする」

当然、こういったケースも想定できるわけですが、これは臨床心理士でもある程度することではないかと思いますが、基本的にこれをしないといけないということです。それでも要支援者が拒否をするならば、やはり「心情に配慮すること」が大事でしょう。

5.その他留意すべき事項
(1) 公認心理師は、主治の医師からの指示の有無にかかわらず、診療及び服薬指導をすることはできない。
これは当然のことと考えておけば、間違えることはないと思われます。


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