諸行無常
京都コムニタスでは、後期受験の結果もほぼ出そろい、
授業も次年度に向けて、動き出しています。
この時期は、昨年から次年度の受験を目指す塾生、後期の合格者、新しく入塾してき塾生、
体験で入ってこられる人、と多様な立場の方々が塾に来ています。
例年、後期で合格した方は、4月に大学院に入学するまで、当塾でそのまま勉強を続けたい
と言われる方が多く、今年も数名がそのまま継続して塾に来ておられます。
これはこれでコムニタスの状態と言えます。
私はこの塾をコムニタスと名付けたのですが、この名前の意味や由来は
以前に何度か書きました。こちらを参照
ヒントになっているのは仏教です。仏教は故国インドを出て、
言語も文字も変わり、そのうち、翻訳された文献だけで伝わっていき、
果ては日本に届くのですが、原型などもはや誰もしりません。
それにもかかわらず(それ故にかもしれません)、仏教に関わる人は、
自分とは違う仏教を、「異なった仏教」と理解し、「仏教ではない」
とは理解しないのです。私はこれを仏教の最大の特徴と捉えています。
この狭い日本でも、たくさんの宗派があり、その中にも細かい派には
分かれていますが、お互いが
「お前は仏教じゃない、私が仏教だ」
とケンカすることはまずありません。仏教に対する考え方の差異は生じても
仏教であるかないかを問うことはほとんどなかったのです。
この隙間をぬったのがオウム真理教と言えますが、学者でも多くの人が
オウムと仏教と言わざるを得ないくらいに、仏教には「仏教でない条件」が
設定されていないのです。それもこれも含めて、要するに、全部仏教です。
これは、日本人が、ミャンマーやタイの仏教僧をみてもそれはそれで仏教と認識する
ことともつながります。「こんなところにも仏教があるんだ」と驚くことはあっても、
「あんなのは仏教じゃない」とは滅多に言いません。
仏教について、日常目にする程度しか知識がなかったとしても、
反応は皆だいたい同じなのです。これは非常に魅力的な現象です。
人間が作った(仏教は神が作っていません)人工物で、このような自然な反応を生み出す
ことができるのは、すごいことだと思っています。
仏教が生まれたころ、当時のインドのカーストは、社会に閉塞感をもたらしていました。
故に新しい哲学を求める機運が、とりわけ商人が多いヴァイシャと呼ばれる階級で
高まっていました。そこで生まれた哲学の一つが仏教ということになります。
仏教は、基本的には「反バラモン宗教(本当はバラモンという言い方は不正確ですが)」
という立ち位置ですので、ブッダは、当時の社会常識にとらわれない、まだ固着化していない
組織を作ろうとしたわけです。だから、自分たちで作った法律に自分たちが縛られてしまうと
いった自己矛盾にならないようにしていました。
雑な言葉で言えば、「緩い」のです。一般に戒律と言えば、厳しい印象はありますが、
厳密に戒律違反せずに生きていけるかと言われると、そうはいきませんので、
半月に一回反省会を開いて「ごめんなさい」と言えば(対象と言い方は様々ですが)、
許されるという、戒律でさえ、ゆる~い状態を維持していました。
もちろん『聖☆おにいさん』のように、ただ単にゆるいだけなら、人々の尊敬は集められず、
すぐに消えてしまったでしょうから、必ずしも緩いだけでもなかったのです。
ブッダは、
「やるべきことをするなら、厳しくしたい人はすれば良いし、したくない人はしなくて良い」
とも言っており、厳しくすることを目的化することを良しとしなかった形跡もあります。
スパルタ的に修行することで、目的を達するとは考えなかったのです。
あるいはそのようなやり方で到達した境地は本物ではないと考えたのかもしれません。
(これは想像です)
この厳しくもあり、緩くもある状態をコムニタスと私は考えており、この状態を保つことで、
人々が寛容になることが可能だと考えています。私は、常に「大人の条件」を
「世界で一番嫌いな人に助けてもらえるように生活できること」
と言っています(残念なことに、未熟者の私には、どうしてもできない輩がいますが)。
またそのために
「世界で一番嫌いな人を追い出さない」
「だからと言って自分が出て行かない」
「距離をとるなどと言わない」
という条件設定をしています。その意味で大人の寛容さを作ることを意識しています。
それがこのような合格体験記にもつながるのだと思います。
この寛容さを身につけることで、臨床心理士や看護師、医師など、他人とかかわる
仕事をする人の適性も磨いていけると考えています。
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