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あの女性はいったい? お茶の水ちょっと不思議な街

海江田博士

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テーマ:どーでもいい話

先日、上京した際、久しぶりにお茶の水へ行ってみました。昔、大学時代通った街です。
結婚したあとの子育て中、その子供のために水道橋口から降りて楽器店に楽器を買いに行ったことはありました。楽器店に喫茶店、画材屋さんなどが並ぶお茶の水は、まさに学生の街でした。
そんな、水道橋口の方は何回か訪れたものの、大学があった聖橋の方に足を向けたことはなかったのです。

50年ぶりに、学生時代と同じ道のりで、聖橋口から銀杏並木の坂を右にニコライ大聖堂を見上げながら下っていきます。この坂道、懐かしいなあ、と感慨深いものがありました。
私の卒業後、母校の大学は郊外に移転しました。ですから、わかっていたこととはいえ、あの頃通っていたキャンパスはもうありません。

そこにそびえ立っていたのは巨大な保険会社のビルディングでした。すべてが整っていて近代的ではあるものの、無機質なその建物は、まるで私を拒絶しているか、のようでもありました。
裏側に回って、大学を囲んでいた細い道も歩いてみたのですが、かつて、雀荘や定食屋、喫茶店などあった裏通りもすっかり様変わりしています。そこにはあまり人の気配は感じられず、やはり無機質な建物が並んでいました。

あの頃付き合っていた女の子に、最初に声をかけたキャンパスの中庭も、ちょうどその巨大ビルの硬質な壁の向こう側辺りだったかな、と思うと少し悲しくなります。その子との想い出も、この冷たいコンクリートに消されたような気がして。

私は
『ああ、なにもかも変わってしまったんだなあ。』
との感慨を禁じ得ませんでした。
お茶の水はそんな場所だったわけでもないのに、あの頃のいろいろな出来事に思いをはせながら、現在のこの状況を見ていると、少し胸の奥が痛くなります。もういいや、と思い出のかけらも残っていないこの場所を離れ、人の往来の賑やかな水道橋口の方へでも行ってみるか、と歩き始めたときです。

いきなり目の前に、こんな場所にしてはかなり立派な佇まいの神社が現れたのです。ここは大きなビル群の谷間です。相当に不思議な感じを覚えました。
「あれっ、こんな神社があったっけ?」
周りの情景がこれだけ変わったと言っても、大学の近くであることは間違いありません。それなのにどうしても思い出せないのです。
この神社、たぶん昔からあったのだろうと思います。ただ、私の記憶の中になかっただけの話です。

私は拝殿を見上げていたらお参りして、何か祈願したくなりました。普段、ほかの神社では、家族の健康や仕事の繁栄などを祈願するのですが、『ここはそれじゃないな。』と思いました。いずれにしてもいつもとは違うことを祈らなければ、と思ったのです。

そのとき頭に浮かんだのは先述の学生時代のガールフレンドのことでした。
『あいつに会わせてください。』なんて?
しかし
『いかんいかん、なに馬鹿なことを考えているんだ、俺は。そんなこと祈ったって仕方ないじゃないか。』
とすぐに打ち消しました。
そのとき頭に浮かんだのは、あの頃の彼女の姿です。
そうはいっても彼女も私とほぼ同年代。
『俺と同じように、今ではすっかり年を取ってお婆さんになっているに決まっているじゃないか。』
そう自分に言い聞かせて、馬鹿な雑念は振り払います。

とにかく私は、鳥居をくぐり拝殿正面に向かう階段を登りました。何を祈るかは、ギリギリその場で考えることにして前に進みます。
すると、私の前に中年というには少し若い一人の女性がいたのです。彼女も何を思うのか、結構長く手を合わせています。
こんな時間、こんな場所で一人の女性がじっと神社に手を合わせるなんてちょっと珍しい風景です。私は静かにその後ろで待っていたのですが、なにかちょっと不思議な感じが私を襲います。
なんと言ったらいいのでしょうか。なんだかこの女性との縁を感じたのです。

ようやく長めのお参りが終わって、彼女が後ろを振り向いたら私が立っています。ちょっと驚いた風でしたが、すぐに微笑みを浮かべて軽く会釈をくれました。私も会釈を返して、彼女と入れ替わるように拝殿の正面に立ちました。
縁を感じたと言っても別に声をかけたわけではありません。彼女の姿に先ほど頭に浮かんだ昔のガールフレンドの幻影を見たわけでもありません。その縁というのは、お互い微笑みながら交わした会釈の中に何かが凝縮されていたような気がした、それだけのことでした。

ただ私は、その縁に押されるように
『あの頃青春を共にしたあの子が今でも幸せでありますように。』
と祈ったのでした。
「神社というのは、神様に何かお願いする場所ではない。」
と聞いてはいたのですが、このときはなんだかそう願わずにはいられませんでした。
お参りを終えた私は、再びスクランブル交差点のある水道橋口の方へと足を向け、歩き始めました。一瞬のすれ違いに過ぎなかったあの女性、不思議な縁を感じたお茶の水での出来事でした。

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海江田博士
専門家

海江田博士(税理士)

税理士法人アリエス

税務相談はもちろんのこと、従来の税理士としての職務に留まらず経営者自身で革新できることを目指した支援を続けています。日本経済をしっかりと支えられる強い基盤を持った中小企業への第一歩のお手伝いをします。

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