根性が違う、100歳の経営者魂―店長を震え上がらせた祖母の営業トーク―Ⅰ
今日の目次
・3パターンに分けることができる
・普通にこっちでできるレベル
・やろうと思えばできるけれど、提供してもらった方が楽な業務
・こちらではできないので依頼せざるを得ない業務
・事務所側が考えていること
3パターンに分けることができる
私及び私の所属する業界は、基本「税の専門性」を提供する仕事で成立しています。もっと平たく言えば、そこで「食っている」ことになります。
ところが、その「専門性を提供する仕事」について、「その将来性に希望が持てない、危うい、下手すれば消滅するのでは・・」といったことを言われ続けています。それはとりもなおさずITテクノロジーの発達、高度化、更にAIの登場とその凄まじい進化といった時代背景があるからに他なりません。
この課題について、現場サイドの立ち位置で考えてみました。我々が提供している業務を客観的な立場で見た時にどうなるか、という視点になります。特に顧客側から見た場合、税務会計における処理その他の業務がどう映るのか?ということを考えてみたのです。
我々が提供している専門領域のサービスは、顧客側から見た場合、次の3パターンに分けられるのではないでしょうか。
・普通にこっち(顧客側)でできるレベル
・やろうと思えばできるけれど、提供してもらった方が楽な業務
・こちらではできないので依頼せざるを得ない業務
もの凄くざっくりとした分け方ですが、こんな風に考えてみればわかりやすいとのではと思い、この3パターンに分けてみました。これは、あくまでも顧客側の立場に立った見解です。
・普通にこっちでできるレベル
これは、ちゃんと帳簿をつけて、ある程度の数字は把握できている状態。普通に事業(商売)をやっていれば当たり前の話です。
ところが、ここができていない事業者も昔は多かったので、我々にかなりの割合で依頼されていました。いわゆる「記帳代行」と呼ばれる世界です。一年にいっぺん、領収書をドサッと持ってきて「はいお願いね。」と言われていたレベルになります。
しかし、この領域については、21世紀に入る頃から自計化(=コンピュータ会計)の導入が進み、顧客側の記帳の負担がかなり軽減されました。近年では自計化がさらに進み、自動化の領域が大きくなりつつあります。
その結果、取引記録を読み込んだ上で、月次の試算表その他の会計データを顧客サイドで出力することも可能になりました。つまり、ちゃんと取り組めば「普通にできるレベル」になったのです。
ということは、会計事務所側がここだけで報酬を得ているとすれば、今後その領域では、収益の確保が厳しくなると考えられます。つまり、顧客側の「こっちでできるレベル」が昔に比べて確実に進化しているのです。
とはいえ、今のところ、この「普通にこっちでできるレベル」にも顧客によってスキルにかなりの差があります。パソコンの操作などにちょっと詳しい人であればできるはずの世界も、まだまだという層が一定数存在します。そのため、今でも我々への依頼が続いているのです。
ただ、会計ソフトの扱いやすさ、及びハード機器の機能や操作性の進化によって、簿記への知識不足、マシーン操作といったハードルはどんどん解消されつつあります。ですから、依頼によって処理するというこの領域は、やがて消滅すると覚悟すべきでしょう。
・やろうと思えばできるけれど、提供してもらった方が楽な業務
ここはまず第一に、やればできるけれど任した方が効率がいい、という考え方を指します。
プログラミングなど専門領域としている世界には、会計事務所よりはるかに高度なレベルで、コンピュータを使いこなしている人たちがいます。こういう業界の人々にとって、会計ソフトを操作することなど、いとも簡単ようにも思えますが実際はどうでしょうか。
現実にはそういったプロフェッショナルであっても、結局私たちに会計処理を依頼される方が多いと思います。実際、その手の業界であっても、私の事務所に経理業務を依頼される方がほとんどです。
それは、会計ソフトの操作ができるかできないかの前に、普段やっている仕事と、あまりにその世界観が違うのでピンとこないというわけです。それに、本業があまりに忙しいために、それ以外の業務はアウトソーシングした方が効率がいい、ということもあります。
第二に、自分で処理するにはちょっと難しそうだけれど、頑張ればできなくもない(ように見える)、という世界もあります。
以前、昔からご縁のあったお客さんに相続が発生したことがありました。ある程度資産をお持ちだった先代が亡くなり、相続税の申告が必要となりました。
ところが、これまで、所得税や法人税の申告は私の事務所に依頼されていたそのお客さんは、「今度は自分でやってみる。」とおっしゃったのです。相続税の申告はなんかできそうな気がする、と思われたのでしょう。
「難しいんだけどな。」と思いつつも、そう言われるのでいったん手を引きました。ところがそれから2カ月もたたないうちに「どうも無理そうなのでやっぱりお願いします。」と連絡が入ったのです。
相続税の申告は、ちょっと頑張れば素人でもできそうに思えるかも知れませんが、現実的にはそれほど簡単ではありません。このお客さんは、ややこし過ぎることに気が付き、途中で諦めてしまわれたのです。税務署でも「税理士のところへ行った方がいい」と言われたようでした。
これなどは、無理してやろうと思えばできなくもなさそうだけど、専門家にやってもらった方がはるかに楽な業務の典型と言えるでしょう。
・こちらではできないので依頼せざるを得ない業務
簡単な個人の所得税申告であれば、パソコンどころかスマホでもできる世の中になってきました。ただ、会社組織としての法人税申告となれば、やはり専門家に依頼した方が無難です。というのは、年商など規模が大きくなってきた場合、特に消費税の申告などでミスってしまうと結構大きなペナルティー(金額)を課せられるからです。
消費税は、軽減税率の導入、インボイス制度の発足以来、複雑化を極めています。公平・中立・簡素というのが税の3原則として知られていますが、簡素という点では、全く逆の方向へ向かっているとしか思えません。
その処理があまりに複雑なため、我々専門家に依頼するしかない、という側面があることは否めない現実です。当然、そこは我々の出番ではありますが、「簡素化」、というのは、税を専門としている我々も望むところなのです。
それから近年重要になってきたテーマとして、「経営計画の策定」ということがあります。金融機関は、企業への融資に際して必ず「経営計画」を求めてくるようになりました。
融資条件として「担保や保証人」が必須とされてきた昔とは随分様変わりしたことになります。融資に際して金融機関が最も留意するのは返済能力ですが、そこを見極める重要な手段として「経営計画」を重視するようになってきたのです。
ところが、「経営計画」と言われても、普通の経営者にそれを要求するのは難しい話ではないでしょうか。当然、我々がお手伝いすることになります。
ただ、これに関しては、経営者が自分で作り説明できるということが条件ですので、我々との共同作業になります。社長が頭の中で構想している経営計画に具体的に数字を加えたものを一緒に作成するのです。これなどは、まさに「依頼せざるを得ない業務(共同作業にはなりますが)」というレベルの話になるのではないでしょうか。
事務所側が考えていること
このように、私たち職業会計人が「どうやって食っているのか」と考えたときに、顧客に料金を払ってもらっている領域には3段階のレベルがあることがわかります。私は、両者が良好な関係を続けていくには、できるだけ第1段階のレベルを脱却して、第2、できれば第3段階の高度なサービスのみを提供していけるようなビジネスに進化していく必要があると思っています。
自分たちが、どこで食っているのか、というドメイン(事業領域)を常に意識しておくのは、私の業種に限らず大事なことだと思います。そしてそれが、同じような状況で未来永劫続くことは決してありません。
どんな仕事においても、変化するのは必然である、ということを念頭に「今後どうなるか」を常に意識しておくべきだと思います。私もそんな前提で、今の仕事の未来形を構想しているのです。
レベルの高いサービスを



