その本は何だ?!?あわや補導の危機に・・―ある文学作品を抱えていた夜―
今日の目次
・選んだアクティビティは?
・「ええ身体してますね」ってか?!?
・最初の難関「た、立てない!」
・俺、も、もうダメかも・・・
・人生初めての最年長記録保持者
・満身創痍とはこのこと?
選んだアクティビティは?
先日、沖縄に旅行したときのお話です。研修の合間、たまたま3時間ほどの空き時間ができたので、マリンスポーツにチャレンジしてみることにしました。
ホテルが提供してくれるアクティビティにはいろんな選択肢があります。その中には、パラセーリングなどという、かなり刺激的な種目もありました。
ほかの若い社員と一緒に「よっし、俺も空を飛んでみるか。」と、申し込もうとしたら、なんと年齢制限がありました。60歳以上はダメというのです。これってエイジハラスメントじゃねぇーの!と腹が立ちましたが、決まっているものはどうしようもありません。
諦めて、他の種目を探します。その中に、昔、機会があればやってみたいと思っていたウィンドサーフィンがあったのです。これには年齢制限もありません。私はこの競技を指名してみました。
「ええ身体してますね」ってか?!?
当日、パラセーリングを始め、若い連中は他の種目へと散っていき、ウィンドサーフィンを選んだのは私だけでした。受付カウンターで書類に書き込み、しばらく待っているとインストラクターの男性がやってきました。軽く挨拶を済ませ、まずは陸上でレクチャーを受けます。
このとき、水着に着替え上半身裸になった私の身体つきを見てインストラクターの彼が、
「なんか普段運動をやっているみたいですね。」
と言いました。
これに対して、私は
「まあ、できる日に限ってのことですが、軽く筋トレなど生活に取り入れています。」
と答えました。
どうやら、普段全く運動をやっていない人がいきなりチャレンジするのは無謀と言えるくらいキツイ競技らしいのです。それはのちほど、私もイヤというほど実感させられました。
カウンター近くのテーブル席で、ウィンドサーフィンの概要について説明を受けながら、軽く健康チェックなども行なわれます。その後、海岸まで降りていって波打ち際の砂の上で、実際のギアを手にしながらさらに説明を聞きます。
最初の難関「た、立てない!」
ウィンドサーフィンと言えば、サーフボードにセール(帆)がついただけのシンプルな作りに見えますが、乗るための手順は結構込み入っていて、陸上で一通り聞いていてもにわかには頭に入りません。ん?ん?と、はてなマークが頭上に点灯します。とにかく、やってみましょう、ということでいよいよ海へと出ました。
「では乗ってください。」という、彼の指示に従って水の中からボードに上がろうとするのですがこれが一苦労です。ゆらゆら揺れるボードへはなかなか簡単には上がれません。
ようやく乗れたところで、姿勢を低くしているだけではダメで、とにかくボードの上に立ち上がらなければならない。そうしないと、海の上に横たわってゆらゆらと漂っているセールを持ちあげることはできません。
結びつけられている紐を引いて、海に横たわったセールを持ち上げ手もとに引き寄せるのですが、このとき予想通りというかお決まりのというか、たちまちバランスを崩して海にザブンと投げ出されるのです。
上がるのに一苦労
俺、も、もうダメかも・・・
ボードに乗ったらまず片ひざをついて立ち上がり、セールを用心深く持ち上げて・・と、これができるのにまず苦労しました。身体を安定させるためには、セールを持って立った姿勢を整えると同時に、ボードの上の足の位置を、真ん中及びやや後ろ寄りにきっちりと決めなければなりません。ここが決まっていないと、たちまちバランスを失ってまた海へザブンと落っこちてしまいます。
この足のポジション取りができるまでひどく苦労しました。このとき目線を落として足の方を見てはだめで、目標とする遠くに視線を合わせたまま、感覚で足の位置を決める必要があるのです。
あまりにも何回も海に投げ出されるので、肉体的体力的限界を感じるあまり、心が折れそうになります。こんなのは、部活やっていた学生のとき以来かなあ・・・
「コーチ、僕はもうダメです。諦めてこの競技から降ります。」
などと、芝居がかったセリフを頭の中でつぶやいたりしましたが、
「ここで弱音を吐いたんじゃあ男が廃る。」
と、歯を食いしばりました。左手のダイバーズウオッチに目をやると、一時間レッスンのちょうど半分くらい過ぎていました。
「あと30分、ここは何としても一時間は頑張るぞ。」
と、我が身を奮い立たせて、インストラクターの指導に食らいつきます。少し沖まで行ってまた戻る、というのを3回くらい繰り返して、最後、割と長い時間スゥーッと陸の方へボードを滑らせたところで終わりにしました。
へっぴり腰であります。
人生初めての最年長記録保持者
これが初めてのウィンドサーフィン体験記概要なのですが、実はこの間、いろんなことがありました。
まず、海に浮かびながら一息ついたときにインストラクターの彼に聞いてみました。
「私は今72歳なんだけど、これまでにこの歳で初めてチャレンジする人っていました?」
彼は即座に返事をくれました。
「いや、海江田さんが最年長です。70過ぎて初チャレンジした人は今までいません。」
『そうか、最年長記録か。これまでの人生で大した実績もない俺だから、この記録は当面破られないで欲しいな。』
と思いました。
あと、
「こんなに難しいとは思いませんでした。私よりできない人ってそんなにいないんじゃないですか。」
と、聞くと
「いやそうでもありません。海に落ちたあと一人でボードに上がれない人もいます。」
との返事。
「へぇー、そんなときはどうするんですか?」
と聞いたら
「後ろからサポートして押し上げてあげます。」
とのことでした。
なるほど、筋力がないと私より手間のかかる人もいるんだ、と、妙に一安心。
一応、真っ直ぐ立てました。
満身創痍とはこのこと?
ところで、ウィンドサーフィンをやっている人はもうご存じのことだと思いますが、ボードの表面は見た目のイメージと違ってツルツルではありません。立ったとき足裏がしっかりホールドできるようにガサガサに作られているのです。
なので、海からボードに上がるとき、ひじやひざを強くこすりつけると擦り傷を負ってしまいます。私はウェットスーツが嫌いだったので、水着一丁で挑戦したため、ひじやひざをひどく擦りむいてしまいました。
一時間のレッスンを終えて陸に上がり、両肘や両膝を見たらもう傷だらけでした。血も滲んでいます。
あとで社員たちが私の姿を見て「ど、どうしたんですか?!?」と驚いていました。持参していた絆創膏を張り付けたものの、満身創痍でボロボロの見た目は情けないこと極まりない、といった状況でした。
いやあ、久しぶりにフィジカルな面でえらく辛い思いをさせられました。させられた、と言っても自ら選んだことなので仕方がありません。
よほどの機会がない限り、もうウィンドサーフィンをすることなどなさそうですが、今度そんなチャンスがあったらもうちょっとカッコよく決めて見せるぜ、と思っているのであります。