突破できるのか、業界の常識というハードル―業界の常識は世間の非常識??―Ⅱ
変化してきた価値基準
様々な場面で、連続的に変化が起こっているのが現代社会です。それはモノや技術だけではなく、考え方や価値基準といった分野にまで及んでいます。
例えば、スピードよりも慎重さ、達成度よりも完成度といった判断基準は、昔とは随分違ったもの(むしろ逆)になってきています。そういった変化の激しい時代の中で、自分にとって必要かつ重要な情報を取り込んでいくにはどうしたらいいのでしょうか。
とにかく取ろうと考えそう行動しさえすれば、取れる情報は巷(ちまた)に溢れています。あとは、それをどう取捨選択するかが重要な課題となっているのです。最近では、意図的に情報をカットした方がいい、とする考え方すら世間では言われるようになってきました。私自身は、一定の基準をもって情報をカットする、といった考え方も一理あるとは思いますが、それとはまた別の方法論を考えているのです。
「好奇心」というフィルター
私の考えている自己情報コントロールの方法論・・・それは「好奇心」をもって情報収集に臨む、ということです。
取るべき情報の取捨選択という整理整頓、切り捨て論の話をしているのに、積極性の求められる「好奇心」を持ち出すとは矛盾しているじゃないか、とお考えになるかも知れません。そんなことをしたら、むしろ向き合うべき情報が増えるんじゃないか、と。
しかし、これにはちゃんとした理由があります。それは「情報収集」に際して「好奇心」を、あえてフィルターとしてかけてみては、ということなのです。
「好奇心」は経営者に求められる資質
私は、人がいつまでも知的であり続けるためには「好奇心」が大切な要素である、と思っています。特に経営者ともなれば、世の中の様々な事象に常に目配り気配りをしておく必要があるので、好奇心旺盛であることは大いに求められる資質の一つと言えるでしょう。
とはいえ、先述のように現代は情報が巷に溢れています。どのような基準をもってその情報の海に接すればいいのか考えたときに、「好奇心」というキーワードが浮かんでくるのです。
いくら好奇心旺盛であるべきと言っても、人は自分の全く興味のないことに対しては、おそらく知的触手は動かないはずです。また経営者という立場であれば、ビジネスからやたら離れたところで、好奇心旺盛であってもあまり意味がありません。
「情報発信(アウトプット)」の燃料
私も、どちらかといえば好奇心旺盛な方だとは思うのですが、それが向かう方向性は、次のような感じです。それは、仕事に関連すること7割、個人的に興味のあること2割、それほどでもないこと1割、といったところでしょうか。
私の場合、趣味といったものを特に持っていないので、この割合は結構極端な方かも知れません。趣味や好きなことのある方は、この割合がもっと異なることが想定されます(ゴルフが大好きとか)が、それで全然かまわないと思います。
とにかく経営者は、常にこの「好奇心」という前向きなアンテナを世の中に向けておくべきではないでしょうか。そうすれば、巷に溢れる多くの情報の中から、自分の興味のあるもの或いは必要なものの仕分けができるはずです。
また、「好奇心」によって得られた新しい知識やネタは「情報発信(アウトプット)」の燃料にもなります。しかも、自ら取りに行った知識やネタですから、それを発信することにおいて、それほど面倒な作業にも思えないはずです。
ビックサイトでの経験
例えば私の場合、以前、東京ビッグサイトで行なわれた「販売促進、マーケティングフェア」という大きなイベントに興味があり、それが開催された3日間、毎日出かけて行ったことがありました。私の仕事である税務会計とは、ほとんど関係のない世界です。
このイベントは、600ものブースが出店する大きな催しでした。その中で、私が興味を持ったのは、並行して行われた20本近くのビジネス系セミナーだったので、そのうち8本を3日間かけて受講しに行ったのです。「好奇心」ゆえとはいえ、体力的に結構きついものがありました。
ただ、これによって、新しい知識を仕入れることができ、知的刺激も大いに受けることができたのです。また、空いた時間に600あった出展ブースを見て回り、こちらも、私の「好奇心」を満足させるには余りあるほどの興味深い世界でした。
「それほどでもないこと」に隠れたヒント
経営者という立場であれば、このように本業からは少し外れた世界であっても、「好奇心」をもって接してみるというのは必要な行為ではないでしょうか。というのは、本筋からちょっとだけ離れ世界に思わぬビジネスのヒントというものは隠れていることが多いからです。
実は、私が仕事に関連すること7割、個人的に興味のあること2割、それほどでもないこと1割、と書いたのにはそれなりに意味があります。この「それほどでもないこと1割」の中に、これまで考えもしなかった新しい発想の芽が隠されているかも知れません。この「1割」といった余白は、持っておくべきではないか、と思います。
とはいえ、「好奇心」というのは、何も上記のように常に「こうあるべき」と決めつける必要はなく、それ自体が人生全体に彩(いろどり)を与える重要な要素とも考えられます。あまり固く考えずに、何事にも興味津々、大いなる好奇心をもって当たってみて下さい。
日が暮れて、夜の都会も好奇心の好対象