突破できるのか、業界の常識というハードル―業界の常識は世間の非常識??―Ⅱ
生き残るための変化対応能力
ダーウインの残した
―最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一生き残ることができるのは、変化に対応した者である。―
という言葉は、変化対応が経営上の最も重要な課題となっている現代において、しばしば引用される格言です。これまでも、何回かお聞きになったり読まれたりしたことがあるのではないでしょうか。中でも事業経営においては、この「変化」に対応する能力や柔軟性が問われる場面が多くなりました。それは、近年特に経済を取り巻く環境の変化が激しいために、うかうかしていたらたちまち世の中の流れに置いていかれてしまうからです。
とはいえ、経営者にとってこれほど難しい課題もありません。何が一体どう変化するというのか・・・それにどう対応したらいいのだろうか・・・さっぱり先が読めないからです。「これでいいだろう。」と思って始めた試みや採用したノウハウなどが、たちまち陳腐化してしまうことなどよくある話です。
方法論としての変化対応能力
こういった世の中の激しい流れに巻き込まれることなく、事業を安定して継続していくことはできないものだろうか・・・経営者であれば誰もが考えることです。しかし残念ながら、こういった流れに全く巻き込まれることなく、事業を続けていくというのは、現代の経営においては至難の業といえましょう。
とはいえ、全く諦めてしまうという必要はありません。そんな大変な経営環境の中にあっても「少し先を見据えながら、いつでも変化に対応できるように備えておく」という方法はあるのです。
いったいどんな方法なのでしょうか。それは、「経営者は、常に新しい情報をインプットしながら、それについてのアウトプットも怠らないようにする。」ということです。「なんだ、このコラムでいつも言っていることと変わらないじゃないか!」と、思われた方もいらっしゃることでしょう。そうです。まさにその通りなのです。
更に言えば、この方法論は経営者に最も向いたものであり、相応しいやり方なのです。私は常々「経営者は、世の中の様々な情報をインプットして下さい。勉強を怠らないようにしてください。」と言っていますが、いくら幅広くといっても、コアにあるのは、常にご自分の事業と関連のある内容のもの、ということです。趣味の世界とか一般教養的なものにのみ時間を割かれても、それが事業にフィードバックされることは少ないからです。
専門家の矜持とは
さて、問題はそのインプットした情報を、どう選択し咀嚼してアウトプットするか、ということです。私は、その中に含まれる自らの事業に関する部分は、特に見逃すことなく深く考察し、(どう考察するかは、社長が最も専門家のはずですから)それをアウトプットの対象としていただきたいのです。
インプットした情報の中の、自らの事業に関連する新しい技術、新しいノウハウ、新しい切り口、新しい考え方などには、是非積極的なコメントを加えていただきたいと思っています。何故ならば、そのことが「情報発信(アウトプット)」を長く継続的に続けていくためのコツであり、情報を受け取った側からの反応も大きいからです。
そうやって、取捨選択し考察を加えたアウトプット情報は、その時点で自分の知識として定着しており、次に何をなすべきか、の大きな指針となるはずです。少なくとも、インプット、選択、咀嚼、考察、アウトプットといった一連の流れを全く行なってこなかった他の経営者と比べて、その判断力が格段に上位に位置することは間違いありません。
経営者にとって最も重要な使命
変化対応が不可欠な現代の経営環境の中にあって、何を取り入れどう変化すべきか・・・経営者の最も重要な課題がこれなのです。その最重要課題に対して、情報のインプットとアウトプットが、いかに大きな効果を発揮することか。その効用について気付いている人はまだそう多くはありません。
このように、経営者の行なう「情報発信(アウトプット)」という一つの試みが、経営全体に大きな影響を及ぼすとすれば、このことの意義はさらに深いものになるのです。ほかの社員では代わりの効かない、この「情報発信(アウトプット)」が発揮する大きな効果を実現できるのは社長だけです。
それは「情報発信(アウトプット)」を続けることによる他との「差別化」、という現実上の効果のみではありません。ここまで述べてきましたように、未来への指針をも示してくれるのです。つまり、「情報発信(アウトプット)」は、社長が果たすべき最も大切な責務の一つなのです。
人生はサバイバルでございます。