根性が違う、100歳の経営者魂―店長を震え上がらせた祖母の営業トーク―Ⅰ
目標が定まっていない?!?
哲学者ショーペンハウエル先生の鋭い指摘
「才能とは誰も射ることのできない的を射ることであり、天才とは誰にも見えていない的を射ることである」とのお言葉から、経営の要(かなめ)は、その的(目標)を定めることでは?とのインスピレーションを受けた私。
肝心かなめの目標を定め、それを達成することができれば、「才覚」ある人として認知され一目置かれることになるのだ、と前述しました。ということは、まず、「自らの事業の目標(的)」を定めないことには何ごとも始まりません。
ただ、この問題を突き詰めていくと、さらに深刻な状況に突き当たります。それは、先述の「よく見れば見えるはずの遠い的」と表現した「的」が、どうやら私が思うほど、「見えて当たり前の世界」ではないようなのです。
つまり、それ(目標)が何なのかわかっていないのではないか、ということになります。これは、税理士として多くの経営者に接してきて、しばらくして後付けで気づいた事実ですが、結構衝撃的な発見でした。
「(経営者が)目標がわからない!?!そんな馬鹿な!!」と思うのですが、これが現実なのです。
すごいなあ・・と思っていた
昭和の時代、私には、ある程度崇高な目標をもって頑張っている経営者がいくらでもいるように思えていました。(結果が出ていましたので)
しかし、今振り返ってみれば、それは単に私が「そう思っていた」だけかも知れない、と最近考えるようになりました。もしかしたら、かなり買い被っていたのではないかと・・・
昔は私の周りにも、というか正確に言えば私の父の周り(昭和から平成の初め、父が現役バリバリの頃)にも、頑張ってそれなりの成功を手に入れている経営者は、そこそこいたものです。まだ若かった私は、当時「すごい社長さんだなあ。とてもかなわないよなあ。」と思ったものでした。
しかし、やがて昭和が終わりを迎え平成に入ってしばらく経った頃から、この状況がなんだか怪しくなってきました。やり手だと思っていた社長さんや会長さんが、さっぱり成果を出せなくなったのです。
自力で一歩抜きん出られないのか!?!
さらに問題なのは、後継者の育成もうまくいっていない、ということでした。つまり、あれほど隆盛を誇っていた「商売」という事業形態が、あらゆる意味で頭打ちになってきたのです。
ということは、過去のあの成功は、それほど「才覚」によるものではなかったのかも知れないな、と思うようになりました。世の中が、高度経済成長という大きな流れの中にあったので、ただその時流に乗ってうまくいったに過ぎなかった、ということだったのでしょうか。
まあ、こんな風に決めつけるのもどうかとは思います。ただ、いくら「才覚」が、誰にも射ることのできない的を射るレベルの難しいものだとしても、高度経済成長期のように他力でそうなる状況から脱却して、自らの力で一歩抜きん出る経営者がもう少しは出てきてもいいはずだと思うのです。
しかし、現状はほとんどそうなっていません。周りの経済的環境が厳しくなった途端、失速する経営者が大半になってしまいました。この状況はあまりにも情けないと思います。
「目指すべき何か」を見定めるには
ただ考えてみれば、ひたすら右肩上がりだった高度経済成長期に比べて、日本全体が厳しい経済状況になっていることは間違いのない現実です。これを脱出するための、魔法のような処方箋があるわけではありません。
いったいどうすればいいのでしょうか? 何か有効な手立てはないのでしょうか?
それには、まずは先述したように、「遠くにある的」とは何であるか、それを目指すにはどうしたらいいのか、といった足元の見直しから始めるしかありません。「目指すべき何か」を見定めなければならないのです。
そのためには、経営者はもっと学習する必要がある、と私は思っています。かつての自分の成功体験だけが唯一の教科書というのでは、この複雑な現代の経済状況に対応できるはずもありません。
これは、成功体験すら持たない若い経営者にとってはなおさらのことです。学習を重ね、「遠くにある的」をより明確なものにしなければならないのです。
そして、その的を射抜くに越したことはありませんが、例え射抜くほどの才覚はなくても、的(目標)を持てるだけでも差別化は図れます。少なくとも、商売(事業)上の失速のリスクは、かなり回避することができるはずです。
必要なのは適切な学習
的(目標)を定め、それを射抜くためにどうすればいいのか、という経営上の手法は、昔に比べるといろいろな形で紹介されています。ちゃんと調べれば、多くの学習の素材が提供されていますので、特に若い経営者は、自ら研究し勉強して欲しいと思います。
手前味噌になりますが、私などもそういった学習に役立つと思われる材料については、かなり前から研究し、それを提供するための準備もできています。こういったノウハウについては、これまでもいろいろな形で発信してきましたし、これからもさらに提供していくつもりですので、特に若い経営者については大いに利用してもらいたい、と思っています。
さて、ショーペンハウエルの言葉からずいぶん飛躍してしまいました。冒頭の「才覚」という言葉から、今私の身近で起こっている困った状況を分析してみました。
「才覚」或いは「天才」というレベルでなくても、適切な学習を続けることで、そういった境地(的を射る=目標を達成する)に近づけるのではないかと思います。そうやって「才覚」を発揮できるできるだけ多くの経営者をサポートしていきたいと考えています。
毎日、学習しております