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何がかけがえのないものなのか・・―いろいろあるなあ・・・人生相談コーナー―Ⅱ(おしまい)

海江田博士

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テーマ:人生を考える

何を迷うことがありましょう!

さて、こんなにエゴイスティックに自分を主張し、身近な存在である夫をこき下ろしている「とんでも人生相談」に、女性ライターの最相葉月さんはどうこたえられるだろうか。
彼女の回答は、いつも切れ味が鋭く、胸のすくようなものが多い。今回はどのように料理されるだろうか。まあ、料理のし甲斐のありそうな相談である。
最相葉月さんの回答は、冒頭次のように始まっていた。
― 離婚されたらよろしいんじゃないでしょうか。あなたは働いていらっしゃるし、将来も比較的安定した収入も得られますよね。幸せを感じられないどころか、自分の価値を下げてしまうような相手と同じ家で暮らし続けるほど、苦痛なことはありません。何を迷うことがありましょう。―
まずは思った通りであった。「離婚されたらよろしいんじゃないでしょうか。」
私でもそう回答するだろう。
そして、この女性相談者の収入のことに触れている。ここは大事なところである。
ここは大事なポイントなのだ。今まで、女性の人生相談で、必ず問題になるのはこの点であった。
よくまあそんな夫とこれまで暮らしてきたものですね、といった相談内容だったとしても、経済的に自立できなければなかなか離婚には踏み切れるものではない。回答も「まず、経済的に自立する準備を密かに進めてから・・・」といったものが多かった。
しかし、今回の女性相談者は既に公務員というポジションを確保している。「離婚すると、今よりは生活レベルが下がって、デメリットも多いので踏みきれない。」と、まあ傍から見れば随分勝手な理由を述べている。
最相葉月さんが「収入もあるんだからとっとと離婚しなさいよ。」とおっしゃるのも無理はないという気がする。この女性、ご主人のことをここまでこき下ろしていながら、「デメリットもあるしなあ・・・」と、あくまでも「計算」をしているのだ。


人を見る目がなかった・・

こんな風に、葉月さんは「あなたは収入もあるんだから・・」と、具体的な条件にまで触れておられるが、もちろん彼女の回答がこのままで済むはずがない。このあと、彼女独特の切れ味鋭いコメントが続く。
― ご主人も同じことを考えていると思いますよ。学歴や収入、家の種類で人間の価値を判断する妻と暮らすのはもうこりごりでしょうから。人を見る目がなかったと、今ごろ反省されていることでしょう。―
そう!この回等が欲しかったのである。
この相談者の女性は、自分の側の立場や感想だけでものを考え言葉を発しているが、これを日常的にぶっつけられている方はたまったものではないだろう。そこのところを最相葉月さんは見事に表現してくれている。夫は、おそらく「あんたと暮らす俺だってこりごりしているよ・・」と。
まあ、この相談を読んでいて、そのことしか頭に浮かばない。これだけ悪しざまに書いてくるということは、普段の生活においても、この人の夫にはひどい対応しかしていないだろうな、と察しがつく。
ということは、それを受ける夫の方は相当きつい日常に違いない、と想像されるのである。そこのところを最相さんは、夫の方も同じことを思っているよ、と代弁してくれているのである。
さて、しかしながら、これは人生相談コーナーである。「あんたも同じように思われているよ。」で済ますわけにはいかない。こんな相談者に対しても、なにかしら建設的な回答を示してあげなければならないのだ。


「星の王子さま」でキツネは・・

さて、今回の回答、ここからの展開が目の離せないところである。最相葉月さんは次のように続けておられた。
― 一つだけ、心に留めておいていただきたいことがあります。目に見えるものだけに価値を置く生き方は、いずれ目に見えるものに裏切られ、破壊されます。―
うーん、哲学的な回答である。この相談者にこれが理解できるだろうか。まさに、ここのところがまるでわかっていない人なので、今回のような相談をしてきたともいえるのである。
最相さんは、そのわかりやすい事例として、『物語』を提示しておられた。それも童話である。
― サンテグジュペリの「星の王子さま」で、王子さまはキツネに言われましたよね。「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」って。―
ここで「星の王子さま」が出てくるとは意外であった。確かに最相さんが取り上げられたように、この人の相談には、ひょっとしたらこのお話が最もふさわしいのかも知れない。私も読んだことがある。
「星の王子さま」は、名作童話としてたびたびいろいろな場面で引用されることが多い。今回もその流れなのだろう。
しかし、私の印象では「星の王子さま」は高度過ぎる。結構難しいお話なのだ。
「目に見えるものだけに価値を置く生き方は、いずれ目に見えるものに裏切られ、破壊されます。」という、抽象的で哲学的表現をわかりやすく説明する事例として引用されたのであろう。しかし、これもなかなかレベルの高い難しいサンプルなのではないか。


何がかけがえのないものなのか

まあ、私から見れば、この引用は、今回のどう見ても価値観の低い相談者に対してちょっと高度に過ぎるかもなあと思ってしまう。この相談者は果たして、最相さんの意図を理解することができるだろうか。
こういった人生相談コーナーにおいて、相手を突き放すだけの回答に終わるわけにもいかないのだろう。何かしら前向きになれる姿勢を引き出すために、最後はなにかポジティブなお話にもっていかざるを得ないのかも知れない。
最相さんの「星の王子さま」を引き合いに出された回答は、さらに次のように続いていた。
―(キツネの「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない・・・」というセリフを受けて)赤いバラのわがままに愛想を尽かして旅に出た王子様が、自分にとって何がかけがえのないものなのかに気づく有名な場面です。―
この女性相談者が「自分にとって何がかけがえのないものなのか」に気づくことができるだろうか。まあ、この女性相談者に限らず多くの人が「自分にとって何がかけがえのないものなのか」には気がついていないのかも知れない。
かくいう私も、本当にそういう判断ができているのか怪しいものである。ただ、この女性相談者のように、自分の中にあるモヤモヤした思いや不満といったものを、極端に他者のせいにしていないだけのことである。
最相さんは、今回の回答を次のように締めくくっておられた。
― え、まだ読んでいらっしゃらない。だとしたらぜひ一度、お読みください。離婚はそれから決めても遅くないと思いますので。―
とまあ、最後は軽く突き放しておられた。最相さんも本音では、この人は「星の王子さま」を読んだところで変わるかなあ・・・と思っているのかも知れないが、回答者として、なんの希望も持たさないまま終わるわけにはいかないのだろう。
今回の相談を読んで、人はかくも自分のことに気がついていないものなのか・・・と、つくづく思わされる。
人生相談コーナーを読んでいると、「この人は自分がいかに身勝手なことを言っているか、本当に気がついていないのだろうか。それともわかっていて開き直っているのだろうか。」と戸惑わされることがしばしばある。
この相談者の女性も「星の王子さま」を読むことで、多少なりとも感動を覚え、旦那様に対する態度に変化が訪れることを願うばかりである。



家族仲良く

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海江田博士
専門家

海江田博士(税理士)

税理士法人アリエス

税務相談はもちろんのこと、従来の税理士としての職務に留まらず経営者自身で革新できることを目指した支援を続けています。日本経済をしっかりと支えられる強い基盤を持った中小企業への第一歩のお手伝いをします。

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