社長の発信するストーリーがジェネレーションギャップを超える―下手なCMより効果的な経営者のリアル情報発信―

ジェネレーションギャップについて考える

これまでこのコラムでは、先代経営者と後継者のコミュニケーションの難しさについてときどき取り上げています。その中では、現代は昔に比べて流行の変遷など時代の流れがあまりにも急激なため、感覚的にとてもついて行けない先代と、その直中（ただなか）をリアルに生きている後継者との間には、大きな世代間ギャップがあり、それを埋めるのには大きな困難を伴う、といった意味のことを書いています。これをどう考え、どう解決するのかというのは、私の職業の場合、大きな課題の一つでもあります。
また、様々な世代が混在する顧客に対して、彼らとの距離間の取り方を考えたとき、一体どう対処すればいいのか、というのも難しいテーマの一つです。この世代（ジェネレーション）ということについて考えてみたいと思います。

多種多様な消費傾向の時代

いつの時代でも、あらゆる業種にとって、若い世代は、その次の時代のお客さん候補であることに違いはありません。今の若い層とのコミュニケーションギャップを埋められなければ、長期にわたって自社を支持してもらうことは難しくなります。
しかしながら、現代の若い世代は多種多様で掴みどころがなく、一体どうすれば彼らに支持されるのかわかりにくい、と言われています。ただ、これに近い言葉はいつの時代も言われ続けてきたことで、新しい世代の実態や考えていることが掴みにくい、と思われるのは昔から変わらない現実でもあります。
とはいえ、今の若い層はSNSなどを駆使して、それぞれ個別に情報収集を行ない自らのライフスタイルを考え、消費行動を決めるようになってきました。従って、流行情報などはマスCMを通してしか知りえず、消費者全体にマスメディアの影響力が大きかったひと昔前よりも、その消費傾向といったものが捉えにくくなっていることは事実です。

通用しなくなったかつての広告宣伝手法

ここで大切なのは、彼ら若者がSNS等を通じて情報を収集するだけでなく、「情報の発信者」でもあるということです。常に情報を収集し発信し続けている彼らは、SNSの持つ利便性や特徴、弱点に至るまで熟知しているといっていいでしょう。
そこで交わされているのは、お互いの目線を同じ高さに合わせたリアルで身近な情報です。これに対して、企業が仕掛ける商業色の強い恣意的な情報操作は、あまり効き目がありません。
よく言われる「ステマ」(注：ステルスマーケティング=消費者に宣伝と気付かれないように巧みに仕掛けられたマーケティング)は、すぐに見破ることができるのでかえってその企業や発信者のイメージを悪くする、とまでいわれています。つまり、これまで我々が普通に馴染んできた広告宣伝の手法では、もはや通用しなくなっているのです。

経営者が獲得すべきポジショニング

しかし、だからと言って、現役の経営者であるこちら側が、彼らと同じ目線の情報交流の世界に入っていくことはほぼ不可能です。無理をしてもぐり込もうとしても、かなりの違和感を持たれるだけでしょう。
自社の商材やサービスをアピールしていくのに際して、従来の広告宣伝と一線を画し、かといって若者と同列のSNSの世界に組み込まれる訳でもない、何か独自のポジショニングといったものはないのでしょうか。そんな「ちょうどいい立ち位置」などというものがあるでしょうか。
私は、そのポジションを獲得するために、経営者が「我が社のストーリー」を発信するという行為が有効なのではないか、と思っています。もちろんそれが誇張されたり、極度に脚色されたりしたものでは、先のステマと同様の扱いを受けかねません。しかし、リアルにこれまでわが社が重ねてきた歴史をストーリーとして素直に表現すれば、それは問題なく歓迎されるはずです。

ジェネレーションギャップを超えるストーリーの力

その手段としてSNSを利用していけば、それは彼らとまったく同じ土俵に立つわけではないものの、まったく参加していないということでもなく、独自のポジションを作る結果になるのです。いずれにしても彼らが、ステマに代表されるようなあざとい広告宣伝よりも、リアルな世界のウソのないストーリーを求めていることは間違いありません。
ジェネレーションギャップを超えて、若い世代にも肯定的に受け入れられ、彼らの積極的な支持を得られるだけのポテンシャルを、企業が重ねてきたストーリーは持っているはずです。そしてその「情報発信（アウトプット）」を行なうのは誰でもない経営者自身です。
社長の発信するリアルストーリーは、世代を超えて支持されるものと信じて、この手法を是非実践していただきたいと思います。

行きつけのカフェからも情報発信

PS
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