2つの結婚披露宴―悪いことしちゃったなあ・・・遠い昔のほろ苦き思ひで―Ⅰ
[脳が認識していなければ、見えない?!?]
ある日、いつものように仕事から帰り、自宅用の眼鏡をかけようと、書斎にある机の上のいつも置いてある場所の辺りに目をやったのですが、その眼鏡がありませんでした。
机回りを探しても見つかりません。
人間はそこにモノがあっても脳が認識していなければ「見えない」ということが起こり得るとは聞いていました。
なので、そのこともかなり意識しながらあちこち探したのですが、やはり見つからなかったのです。
仕方がありません。
その場は諦めて風呂に入ることにしました。
そのうち、
「こんなところにあったよ!どうしてだろう??・・アハハ。」
なんてことになるだろう思って、一旦撤退することにしたのです。
そうやって、お風呂に入り身体を拭いて服を着て、再び書斎に入り、机の上に目をやりました。
そうすると、さっきまでそこに存在していなかった件(くだん)の眼鏡があったのです。
これには、うれしい!という前に驚きました。
キツネにつままれた、とはこんな感覚を指すのだろうと思います。
何かモノが見つかったとき、
「そこはさっきも探したけどなあ・・・」
という経験は確かにあります。
今までも
「あのときはどうして気付かなかったんだろう!?」
と不思議に思ったことがないわけではありません。
しかし、これほど鮮やかに(?)なかったものが現れたのは初めてであります。
あまりに信じられないので、リビングにいたカミさんに確かめに行きました。
「ねえ、さっき僕が捜していた眼鏡を見つけて書斎の机に置いてくれた?」
「いや、別に何もしてないわよ。」
・・・そうなのです。
私がモタモタ捜していた眼鏡を、わざわざ見つけていてくれるほどうちのカミさんは優しくはありません。
「どうしたの?見つかったの?」
「うん、あったんだけどさ。それが、さっき何回も見たところだったんだ。」
「ふーん、ボーっとしているからよ。」
・・・ま、この程度の反応であります。
この空間から眼鏡が消えたとです。
つづく