涼しい顔して「OK」と言えるか―「もったい」をつけないのが男の力量―Ⅱ(おしまい)
[券が余っちゃったのよ・・]
久しぶりにクラシックのコンサートに行くことにした私。
カミさんは、クラシックなど聴く気は全くないので、一人で鹿児島市内のコンサートホールまで出かけました。
昔の指揮者や演奏家しか知らない私にとって、ハンブルク交響楽団のシュテファン・サンデルリンクという指揮者は初めて聞く名前でした。
さて、コンサートホールに着くと開場を待つ長蛇の列。
それとは別に当日券を買う短い列があったので、私はその最後尾に並びました。
しばらく列が進むのを待っていると、そばにいた年配の女性二人連れが声をかけてきました。
「チケットをお買いになるの?」
「はあ、当日券を買おうと思って・・」
と私。
「よろしかったら、チケットお譲りしましょうか。」
「え?・・・」
一瞬の思わぬ展開に戸惑う私。
「グループで聞きに来たけど、余っちゃったのよ。わりといい席ですよ。」
「あ、ああ・・よろしいんですか。助かります。」
と、チケットを受け取りました。
おそらく、窓口で買ってもロクな席は残っていないだろうと持っていたので、これはありがたかったのです。
「あ、あのぉーせっかくのいい席ですので、いくらかお支払いしましょうか。」
と私が言うと、
「そうねえー、1万円くらいのいい席だから3千円でどうかしら。」
「あ、いいんですか。ありがとうございます。」
私は3千円渡しながら、
「お孫さんにケーキでも買ってあげてください。」
と、つい余計な一言を。すると
「ま、『お孫さん』なんて・・・」
と、ちょっと気色ばんだので
「あ、失礼しました。ひ孫さんにどうぞ。」
と、更に余計なことを言ったもんだから、
「もう、チケット返してもらおうかしら・・・」
と、半分マジに怒りそうになったので、
「あ、失礼しました。冗談です、冗談。どうもありがとうございました。」
と、その場を退散しました。
チケットの指定席は真ん中よりやや左にずれていたものの、前方のいい席でした。
席についてしばらくすると、先ほどのご婦人たちが隣の席にやってきました。
ご機嫌はもうなおっていたようで、にこやかにご挨拶。
このお歳になると、グループで計画しても誰かしら具合の悪くなる方がいて、当日欠席者が出るのはやむを得ないのかも知れません。(おっと、また失礼!)
つづく