薄利多売ビジネスで賃金が安い国とコスト勝負する日本―製造業は、なぜ国産回帰できないのか?―Ⅳ
[「薄利多売型ビジネス」から脱皮が課題]
教育現場における取組の違いが、日独の国力や企業の力量、個人の能力などの差に反映される、という加谷氏の指摘については、日本は大いに見直していく必要があると思います。
特に、提案型、問題解決型の営業が可能な人材の養成は「薄利多売型ビジネス」から脱皮するには不可欠の要素と言えましょう。
さて、加谷氏は最後にさらにドイツの状況と比較しながら、日本人の覚悟について述べておられました。
―(ドイツでは)競争政策もかなりシビアである。
ドイツ企業はいつでも従業員を解雇できるが、手厚い雇用保険と再教育プログラムがあるので労働者は解雇を心配する必要はない。
その代わり、労働者は常にスキルアップが求められるという点で、かなり苛烈な社会であるともいえる。
経営者に対する要求も厳しく、保身を目的に債務超過を放置すると処罰されるという厳しいルールがある。
日本のように適正のない人物が、年功序列で企業のトップに就くということはほとんどないと思って良い。
もちろん優等生のドイツにも大きな欠点がある。
それは全国民がこうした苛烈な社会システムを受け入れなければならないことである。
つまり、製造業大国としてやっていくには、ここまでやる必要があり、そうであればこそ、ドイツは非常事態においても極めて高い対応能力を発揮している。
コロナ危機をきっかけに、国内での生産体制拡充を試みるのは安全保障上、意義のあることだと筆者は考える。
だがそのためには、多くの国民がドイツ人と同様の覚悟を決める必要があるのだが、果たして国民のコンセンサスは得られるのだろうか。―
日本人が、上記のような苛烈な競争社会をどこまで受け入れられるかは、なかなか難しいハードルとは考えられるが、チャレンジするしかないましのだろうと思います。
厳しいルールを突き付けられるのは、労働者、経営者両方ともにということです。
しかしそうやって、「薄利多売型ビジネス」から脱皮し、高付加価値の商材を世の中に発信していかなければ日本の将来はありません。
アフターコロナは相当な覚悟を必要とする正念場になることでしょう。
日本の夜明けは近いのか遠いのか・・・・
おしまい