突破できるのか、業界の常識というハードル―業界の常識は世間の非常識??―Ⅰ
それでは「必要経費」という言葉が規定していた範囲をどう考えればいいのでしょうか?
企業活動上、必要な支出或いはやむをえない支出は必ず発生します。
それに対して一体どう向き合いどう表現するのか、ということです。
企業活動を「未来への通過点」と考えた場合、必要なのは「経費」ではなく「投資」になります。
企業が未来へ向かって半永久的に活動を続ける限り、その都度必要な投資というものは発生します。
的確なタイミングで的確な投資を行なわない限り、企業の未来はありません。
特に、現代経営はその点が厳しく問われているのです。
そう考えたときに、「必要投資」はあっても「必要経費」はないだろう、という結論に達したのです。
同様の文脈で、「経費削減」という言葉はあっても「投資削減」とは言いません。
強いて言えば「投資抑制」でしょうか。
自らの事業経営に前のめりな経営者にとって「経費削減」という言葉に対してはややアレルギーを覚えるのではないかと思います。
「経費削減」という言葉には、なんだか自分のコントロールを離れて半ば強制されているようなニュアンスがあります。(あくまでも個人的な意見ですが。)
そもそも「経費」といえば「削減」或いは「減らすように」と言われ続けてきました。
「経費」という言葉には押さえなければならない厄介のもの、というイメージが付きまといます。
しかし、「投資」なかでも「必要投資」という言葉を使えば、将来のリターンに対してなんだか前向きな感じがします。
そもそも「投資」そのものがリターンを意識しないで行なわれることはありません。
もちろんこの場合の「リターン」というのは、本業である事業活動上のリターンであることは言うまでもないのです。(不動産投資や株への投資といったサブ的な企業活動を指すものではない。)
投資をコントロールするとすれば、「投資削減」という言葉ではなく「投資抑制」が相応しいだろうと書きましたが、「抑制」であれば、自らの意思でコントロールしているような気分になれます。
さて、この「投資」がこれまで使ってきた「必要経費」として、利益の計算上差し引いていいのであれば、経営者は得した気分になれるのではないでしょうか。
事業経営に少しでも前向きな気持ちになれるのではないか、と考えたのです。
そして、これは私の個人的な感想ですが、中小企業経営者、特に地方の場合においては、この「必要投資」が適切になされていないのではないかと思います。
「経費削減」という言葉のもとに、何もかも削ってしまったのでは企業活動がやせ細ってしまいます。
今まで「必要経費」と呼ばれていたものを「不必要経費」と「必要投資」に分けて考えることができれば、結果は同じでも事業に取り組む際のメリハリが効くのではないでしょうか。
つまり、削るべきものと削ってはいけないものとの区別が意識的にはっきりするのではないかと思うのです。
例えば、「経費削減」が問題とされる際に、その最たるものに「人件費」があります。
リストラといえば人件費の削減と同義に扱われるくらいです。
私はこの点も昔から「おかしいな?」と考えていました。
今や、人材は企業の最も大切な資源です。
一度手放したら、代わりを捜すのは大変なのです。
人件費などは、まさに「必要投資」ではないでしょうか。
少なくともそういった観点で経営すべきではないか、と思います。
また、我々がいただいている「顧問料、決算料」という奴も考えなければいけません。
これを顧客に経費と思われているようでは、我々の将来はおぼつかないのです。
企業経営を未来へつなぐ「必要投資」と思われなければ仕事に取り組んでいる甲斐もないというものです。
まあ、制度というものを前提とすれば荒唐無稽なことを書いてきたわけですが、こと未来へ向かっての経営という点で考えれば、一考の余地のある切り口ではないかと思っています。
投資的費用と思っていただきたいな・・
おしまい