2つの結婚披露宴―悪いことしちゃったなあ・・・遠い昔のほろ苦き思ひで―Ⅱ(おしまい)
[こともあろーに、銭がない?!?]
この夜、あれだけ独壇場で傍若無人に振る舞い、散々我々に我慢を強いてきた男が支払いの段になって、こともあろうに「金を持っていない。」
というのです。
そういえば、さっきの外国人たちに
「僕のおごりだ。1杯飲みたまえ。」
なんてやってたくせに、こいつ!!
大して高い店でもないので、金額はいくらでもなかったのですが、もそもそとポケットを探っても、この男お勘定の半分くらいしか所持していなかったのです。
「残りは明日持ってくる。」
という男に、ママさんの怒りが爆発した。
「残りの金なんていらねーから、今あるだけ置いて出ていけーっ!」
「ほんでもって、ここには二度と来るなーっ!だいたい『僕のおごりだ。』なんて気取ってんじゃないよ!」
「てめーは、金輪際出入り禁止だーっ!!!」
私もこの場に関しては仲裁などする気にはさらさらなれません。
心の中でママさんと同じように叫んでいました。
「とっとと消えろ。このアホめが!」
金を置いた男はオドオドと出て行きました。
怒りの収まらないママさんは
「ああ、腹が立つ。こんなんでまた私の酒量が増えるのよねーっ、全く。」
「まあまあ、これであおる酒は、あんまりいい酒じゃないから、お怒りはほどほどに・・」
と、私もたしなめながらも気持ちはよくわかります。
結局、せっかく上京して、いい時間を過ごすはずだった貴重な夜を、とんでも野郎にぶっ潰された、という何とも情けない話でした。
東京の夜、いろいろあるなあ・・・・
おしまい