したたかな人生、祖母の思ひ出―この人だけは敵に回したくないと思わせる人―Ⅲ(おしまい)
私の結婚式のときのことですから今からもう30年近く昔の話になります。
大変な騒ぎだった結婚披露宴の中、私と家内にとってはほろ苦いというか少し胸の痛い思い出があるのです。
私たちの結婚披露宴は、当時父の最も大きなクライアント(今でもそうですが)であるブライダル企業の結婚式場で行なわれました。
式は大勢の人を招待して、かなり大がかりに開催することになっていました。
私と家内は
「あまり大袈裟にしたくはない。」
と、当初から思っていたのですが、私たちのそんな希望とは裏腹に、何となく周りでそういう段取りになってしまったのです。
当時、税理士開業20年を越えていた父は、或る意味すでに町の名士(?)でもありました。
で、その息子である私の披露宴は、得意先の結婚式場を一日一組だけで貸し切り、盛大に行われることになったのです。
300人近い招待客が並ぶ中、その日の午後いっぱいを使って延々と続く披露宴は始まりました。
「新郎は調子に乗って飲み過ぎないように!」
と何回も母や式場の担当から伝令が来ましたが、私はそれを全く無視して次々とお酌される焼酎をしたたか飲んでしまったのです。
途中、家内のお色直しの際に、私も一緒に別室で写真撮影を済ますことになっていました。
ほぼへべれけになって真っ赤な顔をした私は、ドレス姿の家内と撮影室に入りました。
すると、あれっ!?別のカップルが撮影中だったのです。
しかし、私たちの姿を見ると彼らはあわてて部屋を明け渡しました。
「どうもすみません、すみません。」
という感じで出て行こうとするのです。
その当人たちと両方の家族も一緒でした。
そのあたふたと慌てる様子を見て、私たちも
「あ、いいんですよ。お先にどうぞ、どうぞ。」
と言おうとしました。
しかし彼らは、そそくさと出ていったのです。
撮影スタッフも式場の担当者も別に気にする風もなく「それで当たり前」という感じで、私たちの撮影の作業を進めました。
つづく