2つの結婚披露宴―悪いことしちゃったなあ・・・遠い昔のほろ苦き思ひで―Ⅰ
男と女がいて恋愛して付き合って、どっちかがどっちかに振られる、別れる、などというのはもちろん日常的にあることだ。
そんなことでドタバタしても仕方ないのは分かり切ったことである。
これくらいのことは、大人になった今では当然のこととして理解できる。
が、当時、若輩者(じゃくはいもの)の私にはこれが大問題であったのだ。
振られた直後、私のやけ酒につきあわされた大学の友人なども、
「仕方ないじゃないか。早く忘れろよ。」
「また、いい子を見つけりゃいいじゃないか。すぐ見つかるよ。」
と、極めて常識的な線で慰めてくれた。
多少恋愛経験豊富な先輩なども
「ま、時間が解決してくれるさ。そうだなあー、新しい恋愛をするのが一番の処方箋かな。」
などと、気楽な感じだった。
荒れる私に周りの反応は大方そんなものだったのだ。
ところが、K女史だけは違ったのである!
ひと通り私の話を聞いた彼女は、しばし考えた後
K女史「そう。あきらめきれないの。それじゃ仕方がないわねー。だったらその子をさらっちゃいなさい。」
と言い放ったのである。
私 「へっ!? あ、あの『さらう』のですか?」
K女史「そうよ。さらうのよ。拉致するのよ。」
彼女は平気な顔である。
私 「で、でもそんなことして…」
K女史「あなた、納得いかないんでしょ? このままじゃ、気持ちが吹っ切れないんでしょ?」
私 「はあ、それはそうですが、『さらう』というのは…」
K女史「さらっちゃって、そこで徹底的に話しあって、気持ちをぶっつけるのよ。それでも駄目だったら、その時は男らしくあきらめなさい。」
ウーム・・・、私の頭の中で、「さらう、拉致する、誘拐する」といったフレーズが、壊れた鐘のようにガァーンガァーンと行ったり来たりする。
つづく