潜在的な世界を引き出し「未来の財務諸表」を作る―経営計画の策定作業は口述筆記に似ている―Ⅲ
何故私がこんなことを思うかといいますと、逆の話は散々聞いてきたからなのです。
思い出してみますと、今から30年前から20年前くらいにかけて、コンピュータの中小企業への導入は、経営上の大きな課題の一つでした。
我々の業界に対するものだけでなく、ほかの多くの業界においてもこの課題は共通していたのです。
で、何が起きたかといいますと、コンピュータソフトの導入に失敗する企業が続出したのです。
中小企業の事業規模で数百万、場合によっては数千万円の設備投資は極めて大きかったと言えるでしょう。
しかも、現場サイドの工作機械などと違って、コンピュータを動かすにはソフトへの理解が不可欠になります。
この点で、導入したものの使いこなせない企業が軒並み出現したのです。
空調設備や、保冷装置、工作機械などアナログ的に回せる機械(これらも今ではデジタル装置による管理体制に移行していますが・・・)への投資と違って、コンピュータは導入してもそのままではすぐには動かせません。
まず、その独特の世界観に慣れなければならないのです。
販売管理や財務管理のソフトは、これらの持つ世界観をある程度理解しなければ動かせないようにできています。
コンピュータの世界は、そこで使われる様々な言葉もまた、これまでに聞いたこともないような専門用語のオンパレードです。
即ち導入後、使いこなすためにはデジタルの持つ世界観をまず理解しなければならない、という壁にいきなりぶち当たってしまった訳です。
つまり、それまでの設備投資のときと違い、すぐには思うように動かせなかったのです。
使いこなせないまま何年間も放置、といった事態も多くみられました。
その結果、自分たち側の問題はさておいて、社長さんたちの中には「コンピュータ会社に騙された。」「馬鹿みたいに高い買い物をしてしまった。」という空気が蔓延しました。
そしてそれは、コンピュータに対するアレルギーという症状になって表れたのです。
結局使いこなせなかった社長さんたちは、ほこりをかぶって何年間も放置されたままのコンピュータ装置を見るにつけ、おそらく癪に障ってしょうがなかったに違いありません。
つづく