成人年齢引き下げ 18歳は大人か?
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成人年齢引き下げは、さまざまな観点から議論されていくべき
国民投票法改正案が5月9日の衆院本会議で可決され、今国会での成立が確実な情勢となりました。国民投票の投票年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられることで、今後は法令の整合性から、公職選挙法の選挙権年齢や民法の成人年齢、少年法の少年年齢などを18歳に合わせるか否かが検討されていくことになるでしょう。
日本の今の18歳は「身体的には成熟しているが、精神的にはまだまだ子どもである」とよく耳にします。18歳への成人年齢引き下げに関しては、政治や経済界からの意見だけではなく、「18歳は大人といえるのか?」「一体、何歳から大人になるのか?」など、さまざまな観点から慎重に議論されるべきでしょう。そこで、今回は「大人になることへの困難さ」や「18歳という年齢」について、心理学的な側面から考察します。
大人になるのは、子どもとして死ぬことである
「イニシエーション」という言葉を知っていますか?イニシエーションとは通過儀礼という意味であり、出生、成人、結婚、死などの人生の節目で行われる儀礼のことです。典型的な例としては、成人式です。しかし、それは、現代の日本で行われている世俗的な式典や宴会といったものではありません。
所属している部族・民族あるいは地域社会から成人として認められるために、必ず通過しなければならない儀礼です。成人となるためのイニシエーションは世界各国に存在し、刺青、抜歯、性器の切開、バンジージャンプ、獣との格闘などさまざまです。その多くは苦痛や試練を伴うもので、これは、イニシエーションには、子どもとしては死に大人として生まれ変わるといった、死と再生の意味を含んでいるからです。
日本では、武家社会の元服が代表例です。武家の若者は、名前や髪型、服装が、子どものものから大人のものへ変わることで、子どもへは後戻りできないと実感することができました。当然のごとく現代の日本では、大人になる実感や試練がないまま、一定の年齢に到達するだけで、一律に子どもから大人へと社会的身分が移行します。
それ故に、現代の若者は、華やかな成人式の影で、親と別個独立の存在として認めていく、自分の人生を自分自身で引き受けていく、といった自立・自律するための作業を個人個人がやっていかなければならない困難が待ち受けています。大人になりきれない若者の自傷行為の背景には、イニシエーションが隠れている場合があり、周囲の大人はその気持ちを受け止め、しっかりと寄り添っていく必要があるでしょう。
18歳は子どもでも大人でもない中間的な時期
心理社会的発達理論では、18歳は青年期(12歳~23歳ぐらいまでをいう)に属します。青年期は、子どもでも大人でもない中間的な時期で、自分は一体何者なのか、将来どのような生き方をしたいのかを模索し、自分を確立していくための時期でもあります。
しかし、多様な社会で学ぶべきことが増えてきた現代において、若者が自分を確立していくのは、社会経験の乏しさからますます難しくなってきています。特に18歳という年齢は、進路や就職など人生における重大な選択を迫られながらも、自分のやりたいことが見つからず、混乱状態に陥ってしまいかねない時期です。成人年齢引き下げの前提に、そのような現代の18歳という時期を理解して、社会全体が若者の自立・自律を促進させていくための取り組み(政治教育、キャリア教育、職業体験など)により一層力を入れる必要があるでしょう。
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