「ほめて伸ばす」心理学‐NGなほめ方と効果的なほめ方の違いとは?
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近年、子育てや人材育成において「ほめて伸ばす」風潮があります。ほめることの効果は科学的にも証明されています。
最近では、筑波大学などの研究チームが2020年に発表した実験結果で、人以外のロボットやCGキャラクターからでも、パソコンのキーボード入力をほめられながら行うと、ほめられなかった場合よりも運動技能が向上したと言います。
筑波大学発表:ロボットでもCGでも2者に褒められると運動技能の習得が促進される
とはいえ、「ほめる文化」が根付いていない職場などでは、部下に対して「どうやってほめていいのかわからない」「ほめるところが見つからない」という声も聞こえてきます。
やってはいけないほめ方と効果的にほめるコツを、キャリアコンサルタントで企業の人材育成支援などを行う村山るり子さんに聞きました。
結果や成果のみで判断せず、周囲には見えにくい相手の努力を見つけ、自分の言葉でほめると伝わりやすい。ほめることは相手だけでなく自分も伸ばす
Q:職場や家庭で「ほめる文化」は浸透していますか?ほめることの効果とは?
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近年、心理学的にも科学的にもほめることの効果が研究され、スポーツ選手のメンタルトレーニングなど、ほめることはさまざまな場面で取り入れられるようになっています。ただ、実際には、多くの人がほめることに浮ついた印象を抱いていたり、自分がほめられても「それは本音なの?」と疑ったりしがちです。
特に、40代以上の人は、「ほめられて伸びた」経験が乏しく、ほめ方を知らない人が多い世代です。「ほめてあげたい」と言いながらも、上から目線で、マウントを取るような発言をしたり、部下の「できていないところ」「悪いところ」を探したりする傾向があります。
70歳定年制や副業の推奨、仕事第一から家庭も第一へ、などが言われ大きく社会が変わる中、どの立場になっても良好な人間関係を築くことが求められ、ほめることの重要性はますます増していくと考えられます。
職場なら、上司が部下をほめることで、部下も積極的に上司を手伝おうとするなど、会社全体の雰囲気が良くなり、一人一人の生産性も上がります。
ほめる側は、「ほめて相手を伸ばしてあげている」と思いがちですが、例えば、部下の目線に立つことで現場感覚を忘れずフレッシュでいられるなど、ほめることは自分の糧にもなります。
Q:ほめるところが見つからない部下にはどのように対応すればいいですか?
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ほめるところが見つからないのは、ほめる側の視点がずれているからです。悪気がなくても「化粧がいいね」「髪型がかわいいね」などはセクハラとされる可能性がありますので注意が必要です。
上司は、「自分が若いときはこうだった」と考えるのではなく、今の20代、30代の目線で考えてみることが必要です。部下が複数いれば、ほめるポイントは十人十色です。そのためには、結果だけでなくプロセスをきちんと見ることが大切です。
例えば、「デスクがきちんと片付けられている」「機能的な文具で仕事を効率化している」など、小さいことでも本人なりの努力や工夫を何かしているはずです。普段から一人一人にきちんと向き合っていれば、自ずと長所が見えてくるものです。
Q:叱らずにほめ続けるのは、甘やかすことにつながりませんか?
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確かにほめすぎると、図に乗ってしまうことはあると思います。だからこそ、その人が努力しているプロセスをきちんと見ることが大切だと思います。
間違いを正すときに、「こんなこともわからないの?」「前に言ったよね」などと叱責すると、特に若い人はメンタルが落ち込み、パワハラにもつながります。また、「そうじゃない」「これはダメ」とダメ出しをされると、委縮して指示待ちになる可能性もあります。
このような発言になるのは、いつでも自分が正しいと思い込んでいるからです。普段からコミュニケーションをとっていると防ぐことができます。例えば、仕事のやり方がわかっていないようなら、「こうしたらスムーズだよ」「一緒に考えてみようか」と上司から声をかけてみましょう。部下も素直に「なるほど」と思え、行動が変わります。
失敗した場合やうまくいかなかった場合も、「本人も失敗したくてしているわけではない」と、叱る前に立ち止まりましょう。「失敗は成功のもと」「二度あることは三度ある」などの格言を思い出すといいですね。
例えば、テストの点数が悪いと隠してしまう子どもがいますが、「お母さんも30点取ったことあるよ」と伝えると、ホッとして成績を見せられるようです。同様に、職場でも上司から失敗談を話すなど、部下が正直に話せる雰囲気づくりが大切です。
Q:NGなほめ方はありますか?
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ほめるとは、「いい子、いい子」と頭をなでることではありません。口先ばかりのお世辞でおだて、相手を調子に乗らせるのとも違います。ほめる相手を見ず、結果や成果だけで判断すると、ほめ方を間違えます。それでは、相手が素直にうれしいと受け止めることができません。
また、せっかくほめても、最後に「でも、ここができていないから、もっとがんばって」と付け加えると、相手には「もっとがんばれ」と言われた印象しか残りません。改善点を伝える場合でも、投げるような言葉がけではなく、「プラスアルファでこれもやってみたら?」など提案してみる方がいいでしょう。
Q:効果的なほめ方のコツを教えてください。夫や子どもなど家庭でも応用できますか?
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職場でも家庭でも、明らかに目に見えていることより、見えにくい部分を具体的に評価すると効果的です。
見えない部分を見ようとすると、それだけ相手との距離が近づきます。まずは、相手を認め、行動に気付くことです。その上で、上司なら若手の気持ちに、親なら子どもの気持ちに、など相手と同じ気持ちになってみましょう。過去の自分と比べるのではなく、「今わたしが相手の立場だったら」と想像するといいですね。
日ごろから「ありがとう」と言葉に出すことも心がけてください。上司から「自分では気が付かなかったところに気付いてくれてありがとう」「助かったよ」「いてくれて支えられた」などと言われると、士気が高まります。
上司の場合、「部下をどのように育てるか」と考えがちですが、「ともに育つ」という視点を持つと、声かけも変わってくると思います。ほめ言葉に、自分の素直な感動や感謝を込めると伝わりやすくなります。
特にコロナによって、「マスクで表情がわかりにくい」「オンライン上では直接目線が合わない」など、これまで以上に、お互いの内面が見えにくくなっています。
常識が一気に変わった今の状況は、上司と部下、あるいは夫婦や親子の信頼関係を再構築できるチャンスです。見えていなかった部分を見ようとし、ちょっとしたことでも声をかけることで、関係性が変わり、お互いを「伸ばす」ことにつながるはずです。
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