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SDGsにもつながる「サーキュラー・エコノミー」とは? 中小企業の取り組み事例からビジネスチャンスを知る

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地球規模で深刻化する環境問題への取り組みとして、「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」の考え方が注目されています。従来の大量生産・大量消費といった経済モデルの限界が見え始めるなか、Google(グーグル)やIKEA(イケア)など海外のグローバル企業では循環型ビジネスモデルへの転換が加速。日本でも、この考えを軸にした取り組みが各企業で広がりつつあります。

SDGs(エスディージーズ)に伴う持続可能な社会を目指すために、今、期待されているサーキュラー・エコノミーの考え方とはどのようなものなのでしょうか。国内の取り組み事例をはじめ、今後の展望と課題について、中小企業診断士の岡本洋平さんに聞きました。

世界規模で循環型社会の成立に取り組む日本の中小企業も。従来の発想から脱却し「社会問題の解決」という新たなニーズを捉えることが大切

Q:「サーキュラー・エコノミー」とよばれるビジネスモデルは、具体的にどのようなものでしょうか?
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「サーキュラー」は「循環」を意味する言葉で、新たな資源や原材料の投入量を最小化し、使ったものに新たな価値を生み出し、廃棄物の発生を最小化するという循環型の経済を指します。環境への負荷を抑えながら、経済効果も得るという新しいビジネスモデルで、SDGs(持続可能な開発目標)を達成するための実践的な考え方の一つです。

以前は廃棄を前提とした「リニア・エコノミー」が経済活動の主流でしたが、今や持続可能な経済モデルではなくなっています。急速な経済成長により、二酸化炭素やプラスチックの排出量は一気に増加。地球温暖化が加速し、生態系は脅かされ、資源は枯渇し始めています。

こうした地球の危機的な状況に歯止めをかけるため、世界の先端企業は循環性の高いビジネスへと転換を図っており、サーキュラー・エコノミーの取り組みはグローバルスタンダードになっているのです。

Q:具体的に、国内企業ではどのような事例があるのでしょうか?中小企業の注目すべき取り組み事例などがあれば教えてください。
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日本の中小企業でも、社会的課題の解決のため、サーキュラー・エコノミーの取り組みを進める例が増え始めています。ここでは、地方から全国・世界へと循環型ビジネスの輪を広げている2社の事例を紹介します。

【山翠舎(さんすいしゃ)】
長野県長野市に本社を置く「山翠舎」は、古民家の解体時に出る上質な木材を「古木」として管理し、店舗設計などの資源として活用しています。

従来は廃棄されていた木材を、職人の技術により適切に加工し、新たな価値を与えることで、空き家問題の解決と地方経済への貢献、森林保護という循環型ビジネスを成立させています。さらに、利益の一部は長野県の森林事業の支援にもあてられています。

一本一本にストーリーのある古木は現代空間に伝承され、シューズメーカー「ニューバランス」のコンセプトストアなどにも採用されています。

【会宝産業(かいほうさんぎょう)】
石川県金沢市の自動車リサイクル会社「会宝産業」は、中古部品の海外輸出にいち早く目を向け、世界約90カ国で中古部品の取引を行っています。

同社は輸出業にとどまらず、廃車の不法投棄が深刻化する途上国にリサイクル工場などを建設し、長年培った解体技術を伝承。国内外で技術者の育成に取り組み、地球規模での循環型社会の成立を目指しています。

同社は、日本の中小企業として初めて2017年に国連開発計画(UNDP)が主導する「ビジネス行動要請(BCtA)」に加盟が承認されています。

Q:企業がサーキュラー・エコノミーを取り入れることは、環境面の貢献に加えて、どのようなメリットがありますか?
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まず、環境保全という共通の目標を通じて、さまざまな組織とつながり、ビジネスチャンスが広がる可能性は大いにあります。先の事例のように、海外発の企業と日本の中小企業がタッグを組むことも、今や珍しいものではありません。特に、外資系企業は環境問題への意識が高いことで知られています。ある印刷会社の事例ですが、環境負荷を抑えた印刷にいち早く取り組んでいたことで、外資系企業から一気に注文が舞い込んだという話もあります。

さらに、「社会や環境、経済の課題を解決する」という事業目的は強みとなり、企業の認知度やブランド力の向上につながります。

企業理念に共感する消費者は、長きにわたりファンになってくれる可能性がある。なかでも、若い世代ほど教育の過程でSDGsに触れる機会が増えており、社会的課題に関する意識が高いといわれます。今すぐ結果が出なくとも、今後市場は大きく変わり、10年後、20年後に差が付くことは想像に難くありません。

Q:消費者がサーキュラー・エコノミーを支援するために何かできることはありますか?
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使い捨てをせず、資源を限界まで何度でも使うのがサーキュラー・エコノミーの考え方です。まずは、「長く大切に使えるものを選ぶ」といったことで構いません。ものを買うときに、「何となく安いから」ではなくて、「なぜこの商品を選んだのか」を立ち止まって考えてみる。それだけでも、地球を守る小さな一歩につながります。

そして、気になった商品やサービスがあれば「その企業がどんな理念を持ち、どういうことに取り組んでいるのか」を調べてみることをおすすめします。経営者のメッセージから、企業姿勢を読みとることもできるでしょう。
そうした中で「自分たちの消費が、子どもたちや大切な人が生きる未来に、どんな影響があるのか」ということに、少しずつ思いを巡らせてもらえたらと思います。

これは私の経験ですが、ものづくりの背景を知り、意志を持ってものを選ぶようになると、自分の人生に意味が出てきたような気がします。それは、心や暮らしの豊かさにもつながっているように思います。

Q:サーキュラー・エコノミーの普及を含め、日本の企業でSDGsを浸透させるために必要なことは何でしょうか。課題はありますか?
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SDGs実践の課題として、多くの経営者の方が口を揃えるのは「従業員への浸透の難しさ」です。日本ではSDGsに対し「慈善事業」といった印象が強いため、現場に意義が正しく伝わってないことが多く、表面上の取り組みにとどまっているケースも少なくありません。SDGsの考え方は、自己犠牲ではなく、商業的な成功と持続可能な開発を両立するものです。つまり「本業と結び付けて利益をきちんと出す」という目標であることを理解してもらう必要があります。

今までは、顧客満足や利益のために、環境や社会を犠牲にしてきました。ですが、これ以上環境問題に目を背けられない事実を受け、消費者のニーズには「自分のため」に加えて「社会問題の解決」「環境保全」といったものが確実に増えています。

今後は、このニーズを的確に捉え、ビジネスにつなげていけるかが、企業力向上のカギとなるでしょう。

SDGsは世界共通の目標ですが、17のゴールといった項目はあくまでも指標であり、その内容に縛られる必要はありません。大事なのは「自社の特性をよく理解し、その上で自分たちに何ができるか」を柔軟に考えることです。

そのために、まずは自社の成り立ちや取り組みを大切にし、どんな将来を目指すかを明確にする。自社の優位性がわからない場合、いろいろな立場の人に意見を聞くのも有効です。中小企業の場合、一社で完璧を目指せなくとも、複数社で協力し、一つの目標に取り組むことで十分貢献できます。

そして、従業員や取引先が提供する価値を正しく認め、パートナーシップを大切にすることは、持続可能な経営の第一歩です。

普段からいい経営をしている企業ほど、従業員への浸透が早く、結果が出やすいといっても過言ではありません。中小企業は、経営者と現場の距離が近いため、目標の共有がしやすく、SDGsを原動力に組織の一体感が向上することも期待できます。

今はまさに過渡期であり、時代は新しいフェーズに移ろうとしています。日本の技術力をもって、世界へ好事例を発信していける可能性も十分にあります。いち早く一歩を踏み出すことが、10年後、20年後の未来を大きく変えるはずです。

中小企業経営者のお悩みをワンストップで解決する経営支援のプロ

岡本洋平さん(株式会社戦略デザインラボ)

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