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大阪府庁がPC強制終了で残業削減、働き方改革で「ジタハラ」?メリットはあるの?

カテゴリ:
ビジネス
キーワード:
働き方改革
ハラスメント防止
サービス残業 請求

大阪府が、働き方改革の取り組みとして、残業抑制のために終業時間後の午後6時30分に、職員のパソコンの電源を自動的に切るしくみを来年度中に導入すると発表しました。申請すれば、利用の延長は可能で、府警や府立学校の教職員、課長級以上の管理職は対象外、また災害時はシステムを解除する、としています。都道府県としては初の取り組みですが、すでに、大阪府寝屋川市など一部の自治体や企業でも同様の取り組みが行われ、残業時間の削減について一定の効果があるようです。

システム導入などで強制的に「残業できない」環境をつくることは、働く側にメリットはあるのでしょうか。「ジタハラ(時短ハラスメント)」が生まれる可能性はないのでしょうか。社会保険労務士の影山正伸さんに聞きました。

「仕事の持ち帰り」や「残業なしで収入減」を懸念。残業にかわり副業でキャリアや収入アップを目指すのもあり

                                         
Q:大阪府は、府庁のパソコン自動シャットダウンにより残業時間の削減につなげる考えです。上司への申請があれば延長利用も可能ですが、働く側にはどんなメリットがありますか?
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日本企業の悪しき慣習として、会社に遅くまで残っている人が評価されるという側面があります。実際に、「上司が残っているから帰れない」と、日中の業務量を抑えて夜遅くまで仕事が残るように調整する、という人もいます。

パソコンのシャットダウンが仕事終了の合図となり、それまでの慣習を打ち壊すきっかけとなる点では、大きなメリットとなるでしょう。

また、大阪府のように上司に残業申請ができる仕組みは、仕事量や内容について、上司と話し合える余地があるという点で必要です。「この仕事は明日に回していい」など、上司の判断のもとムダな残業を減らすことができます。

Q:時短を強要する「ジタハラ(時短ハラスメント)」が起こる可能性はありますか?具体的なハラスメントの例もあわせて教えてください。
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どんなに努力しても、区切られた終了時間までに終わらない仕事もあります。にもかかわらず、上司から「残業はダメ」と言われた場合、責任感が強い人は退社後に喫茶店で仕事をしたり、家に持ち帰ったりしてサービス残業が増えるなど、いわゆる「ジタハラ」となる可能性はあります。

労働基準法の改正により、大企業は今年の4月から、中小企業では2020年4月から「時間外労働の上限規制」が導入されます。

残業時間の上限が、原則として月45時間・年360時間に定められ、月45時間を超えることができるのは年6カ月まで。違反すると罰則が科せられる場合があります。
これに伴い、残業削減を積極的に進める企業が増える一方、時短を強要する「ジタハラ」も発生。時間内に終わり切らない業務量を抱え、残った仕事を持ち帰るしかなく、その分の残業代が未払いとなる問題などが起こっています。

また、部下の残業を把握する立場にある管理職などの「管理監督者」に、しわ寄せがくるという問題もあります。
一定部門などを統括する、給与面で優遇されるなど、労働基準法が規定する「管理監督者」にあたる場合、企業に残業代の支払い義務はなく、時間外労働の上限規制の対象にもなりません。

そのため、部下の仕事を引き受け自分は際限なく働かざるを得ない、というケースもあります。ただ、労働安全衛生法により、管理監督者であっても残業月80時間以上の申し出があった場合、医師による面接指導が企業に義務付けられています。

Q:パソコンのシャットダウンなど、物理的に「残業できない」環境をつくる上で、企業が気を付けるべきことは?
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これまで残業の要因となっていたムダな業務を減らし、仕事の効率化の方策を具体的に示すことが必要です。それでも業務が終わらないという場合は、人材確保や外注の検討も必要ですが、新たな人件費が発生してしまいます。

本来は、一人一人の働く時間が減っても、効率化により全体の生産性を上げることで企業の売り上げアップにつなげ、従業員の給料にも還元することが理想です。

「残業が減る=収入が減る」となれば、残業代を見込んで生計を立てている従業員のモチベーションは下がります。

ただ働く側も、残業が減ることで「余った時間を有効活用できるようになる」と意識を変える必要があります。国が推奨する「副業」を許可する企業も増えています。
これからは、副業や勉強などで本業に対して新しい発想を生み出したり、転職につなげたりと、自分でチャンスを広げることも大切です。

Q:残業の抑制のために、企業が行っている取り組みは、ほかにどんなものがありますか。
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定時になるとオフィスを消灯する、出入り口を施錠するなどを行う企業もあります。また、毎日でなくても、週1回は「ノー残業デー」を設け、全員が一斉に退社するという企業も増えています。

また、職種により、営業では基本的に直行直帰で出社するのは週1回だけ、という企業も増えています。終業時間が営業先を出た時点になるため、残業時間の削減につながります。報告や見積もり作成なども、パソコンとインターネット環境があれば、外回りの合間に行えるようになっていることも大きいですね。

Q:働き方改革法案の柱の一つである「長時間労働の解消」は、進んでいるのでしょうか?
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時間外労働の上限規制の影響は大きく、経営者側の意識改革は進んでいます。長時間労働を解消するための環境整備の一つとして、副業や在宅ワークなどを容認する動きは、大企業だけでなく中小企業でも広がりつつあり働き方の多様化も同時に進むでしょう。

いつまでもダラダラと会社に残る日本特有の文化を変えるには、パソコンの自動シャットダウンなどのシステム導入は悪いことではないと思います。

「ジタハラ」が起きないように注意する必要はありますが、一人一人が限られた時間内で仕事を終わらせる努力をするきっかけになり、結果として生産性が上がるという効果が期待できます。

影山正伸

労務管理(給与計算含む)と人事・賃金体系整備に精通した社労士

社会保険労務士

影山正伸さん(影山社会保険労務士事務所)

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