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労働力不足の穴埋め?外国人技能実習制度の現状と課題

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1993年に制定された外国人技能実習制度。用途が現状に合ってない?

外国人技能実習制度は、日本の技能、技術、知識を開発途上にある地域の人々に習得してもらい、現地の人材育成に寄与することを目的として1993年に制定されました。

技能等の習得が目的ですので、在留期間は最長でも5年で、その期間内には学科や実技試験なども実施されています。この制度は、国際協力の一環あり、日本での労働力を確保するための制度ではありません。

しかし昨今、この外国人技能実習制度が労働力不足の穴埋めのように使われている傾向があります。また、そればかりでなく、実習生に対して違法な労働を強いる企業の存在も問題となっています。

日本人の労働力不足に比例するように増える外国人労働者

厚生労働省の平成29年外国人雇用状況報告まとめによれば、外国人労働者は約128万人(うち、技能実習生は約25万人)で前年比約18%増しとなっています。

また、外国人を雇用している事業所も約19万か所となり過去最高を記録しています。日本人の労働力不足に比例するように外国人の就労が増えているのです。

NHKが国勢調査をもとに割り出した計算によれば、例えば首都圏の野菜供給を担う茨城県での20代農業従者のおよそ2人に1人は外国人だという結果に。

参考:NHK「外国人“依存”ニッポン」

高齢化が進み、もはや外国人技能実習生がいなければ農業を続けていけないほど外国人労働に依存しているそうです。もちろん、農業技能の習得を目的とした就労ですが、外国人実習生が労働力の担い手として期待されていることは紛れもない事実でしょう。

不当な労働環境にさらされている事例もあり近年大きな問題に。

外国人実習生は勉強するために来日しているわけですが、日本の労働者と同等の労働環境・待遇が確保されなければなりません。しかし一部では、外国人実習生に不当な長時間労働をさせたり、適正な割増賃金を支払わなかったりする企業があり、近年大きな問題となっています。技能実習制度を笠に着たブラック企業です。

2016年に厚生労働省が外国人労働者を雇用する企業を視察した結果、約70%の企業で労働基準関係法令違反が確認されたとのことです。厚生労働省は今後さらに指導・監督を強化していくとしています。

参考:厚生労働省 外国人技能実習生の実習実施機関に対する平成27年の監督指導、送検の状況

実習生に対して、このような不当な処遇をしてしまう背景には、日本人の異文化への差別意識や、昔ながらの徒弟制度の意識が抜けないことがあるのではないでしょうか。島国根性を捨て、制度の目的を十分理解した上で外国人実習生を受け入れなければなりません。実習生は決して安価な労働力ではないのです。

外国人マンパワーをきちんと受け入れる体制を確保することが重要

現在、安倍内閣では移民政策を否定していますが、昨年11月に技能実習適正化法を制定し、「介護」分野への外国人技能実習を可能としました。あえて人手不足が深刻な介護分野を追加したことは、実習という名を借りた労働力の確保ではないかという気がしてなりません。

技能や知識の習得という本来の目的を果たすためには、外国人技能実習制度と労働力の確保を目的とした外国人就労をきちんと分けて運用していくしかないと考えます。両者をこのまま曖昧な形で運用すれば、技能実習制度の悪用が横行し続けかねません。

人口減少社会においては、本格的な外国人マンパワーの確保(移民受入)を現実視していかなければならない時期にきているのではないでしょうか。

人事労務コンサルティングの専門家

大竹光明さん(社会保険労務士法人大竹事務所)

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