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衆議院総選挙後に憲法改正という流れが一気に進んでしまうのか?

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改憲勢力が3分の2超の議席獲得の可能性 すぐに憲法が改正されるのか?

今月22日に投開票が迫った衆議院総選挙において、改憲勢力が3分の2を超える議席を獲得する可能性があるとの報道が見受けられるところですが、実際にそのような事態に至った場合、すぐに憲法改正という流れになるのでしょうか。

まず、憲法改正の手続を俯瞰してみますと、憲法第96条1項は、「この憲法の改正は、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」と定めています。

具体的な手続は、国会法や憲法改正国民投票法で定められており、国会法68条の2において、議員が憲法改正原案を発議するには、「衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上の賛成を要する。」とされているのみならず、同条の3において、憲法改正原案の発議は、「内容において関連する事項ごとに区分して行う」とされており、通常の法律案の場合よりもハードルが高くなっています。

原案が提案されると、衆参各議員においてそれぞれ憲法審査会の審査に付され(同法102条の6)、その上で、各議院の本会議に付されることになり、そこで3分の2以上の賛成で可決されて初めて国会が発議し、同時に国民に提案したものとされるわけです。

次に、憲法改正国民投票法2条1項により、国会の発議後60日から180日以内で国会の議決した期日に国民投票が行われることになります。前記のとおり、憲法改正案は、内容において関連する事項ごとに提案されますので、国民投票も、それぞれの改正案ごとに一人一票を投じることとなります。賛成投票の数が投票総数(賛成投票数と反対投票数の合計数)の2分の1を超えた場合は、当該憲法改正について国民の承認があったものとされます。

一連のプロセスをまとめると、ひとつひとつの事項ごとに発議・賛成獲得しなければならないため、発議自体のハードルも高く、その後、憲法審査会の審査があり、さらに各議院の本議会で3分の2以上の賛成を得たのちに国民投票が行われる、ということになります。

様々な見解が飛び交う憲法改正 国民の置き去りが懸念

では、総選挙後にこのような憲法改正の流れは一気に進むのでしょうか。

そもそも、安倍総理大臣は、消費税の使い道を変更することについて国民の信を問うためと説明して解散・総選挙に踏み切っており、繰り広げられる選挙運動においても、森友・加計問題や消費税の問題がクロースアップされ、憲法改正については余り前面に出てきていない感じがしますし、自民党の岸田政調会長が「スケジュールありきではない。丁寧な議論が国民の理解につながる。」などと述べたり、各政党における憲法改正に対する姿勢もまちまちであったりして、現時点では国民の強い関心事になっているのか疑問です。

にもかかわらず、ここにきて、自民党の憲法改正案が年内に国会に提出される動きがあるといった報道もなされているため、北朝鮮問題に絡めて憲法改正の議論が進む可能性は否定し得ないところです。

国民を置き去りにして、数の力で政策を推し進めてきた自民党政権に対し、国民は辟易していたはずです。憲法改正についても、議論が活発化すること自体は問題視するに及びませんが、国家の根幹に関わる問題であるだけに、これまでと同じように数の力だけで一気に憲法改正を推し進めようとするやり方は、やはり民主主義の理念を無視するものというほかありませんし、あってはならないことです。

田沢剛

法的トラブル解決の専門家

弁護士

田沢剛さん(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所)

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