Yahooメール監視疑惑とプライバシー
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米Yahooが政府要請によるメール監視を実施か?
米Yahooが米国情報機関の要請を受けて、Yahooメール全アカウントの受信メールをスキャンし、情報を提供していたことが明らかになりました。
報道によると、昨年米国家安全保障局(NSA)や連邦捜査局(FBI)から特定の文字列をサーチするよう要請された米Yahooはメールを監視するソフトウェアを開発し、その結果を提供していたとのことです。
米Yahooはこの報道内容を否定し、情報機関からのコメントはありません。
しかし、米YahooのCISO(最高情報セキュリティ責任者)が6月に退任したのはこのことが理由だったという話もあります。
米Yahooは先月もサイバー攻撃により約5億件の個人情報が流失したことを発表したばかりであり、ベライゾンへの事業売却に影響を与える可能性があります。
対テロ・対犯罪対策強化とプライバシー保護
米国では2001年の同時多発テロ事件以降、政府による監視体制が強まる傾向にあります。
そのため、米国のIT企業はテロや犯罪対策のために政府に協力する必要性を認識しつつも、顧客のプライバシーを保護するためにどこまで応じるべきか議論されてきました。
今年の2月には米Apple社とFBIとが対立し、訴訟を起こすまで発展しました。昨年12月に発生した銃乱射事件の犯人が所有していたiPhoneの内容を確認するため、FBIは米Apple社にiPhoneの所有者以外のアクセスをブロックする機能を外すことを要求しました。
しかし米Apple社は、要求内容は捜査当局以外の第三者が自由にiPhoneに侵入可能となるため、当該機能の濫用はプライバシーの侵害につながるという考えからFBIの要求を拒否しました。
この時、他の著名なIT企業であるGoogle、Microsoft、Facebook、Amazon、Twitterなども米Apple社への支持を表明しました。
米Yahooも支持を表明した1社でした。
日本での可能性は?
それでは、日本国内ではこのようなことは起こり得るでしょうか。
まず、国内で運営されるヤフージャパンは米Yahoo社と運営主体が異なり、メールサービスも異なるサーバーのため、今回の報道に限れば、ヤフージャパンで作成されたアカウントのメール内容が監視されていることはないでしょう。
制度面では電気通信事業法で電子メール等の内容は「通信の秘密」として保護対象となっています。
通信傍受法では電子メール等の監視対象は薬物密売や特殊詐欺等に限定されており、かつ裁判所の令状が必要となります。
また監視対象であっても事件と関係のない通信履歴を見ることはできず、監視期間も最大30日です。
とはいえ、一般の方々にとっては普段利用する電子メールやLINE、Twitter等のSNSが監視されていないか不安に思う方もいるでしょう。こうした質問に対しては、「技術的には可能だが、通常の生活を送る限りはほとんど問題ない」という回答となります。
以前話題となった「エシュロン」などのシステムでインターネット上の通信内容は何らかの形でスキャンされていると考えられます。
その対象は電子メールやSNSの他、PSN(PlayStation Network)などのオンラインゲームのチャット等も含まれます。
ネット空間に飛び交うメッセージ情報は膨大な量であり、すべてのメッセージに目を通すことは不可能です。
そのため、特定のキーワードや言い回しを含むメッセージをシステム的に抽出して確認することになります。
その意味では、テロや犯罪と無縁な生活を送る限りでは、自分の発信したメッセージ内容が当局に監視されることはまず無いでしょう。
テロリストや犯罪者の通信内容を監視、傍受することは犯人特定や事件発生防止の助けとなります。
しかし、監視、傍受する機能の濫用や悪用は、犯罪等に関係のない一般の人々の個人情報や活動の漏えいにもつながるため、今後も議論されていく話題になるでしょう。
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金子清隆さん(デルタエッジコンサルタント株式会社)
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