待機児童解消のための保育園開園を阻む複雑な事情
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保育園「騒音」で開園断念
待機児童の数が373人と全国市町村で9番目に多い(2015年9月時点)とされる千葉県市川市。
4月開園予定だった私立保育園が、開園を断念することになりました。
理由は、「子どもの声でうるさくなる」などの近隣住民の反対の声。
同市の担当者は説明会に同席するなどして地域の理解を求めてきましたが、結局「住民の反対で開園が延期したケースは東京都内ではあるそうですが、断念は聞いたことがなく残念です」というコメントに至りました。
かつては子どもを地域社会のなかで育てるという共通意識が存在していましたが、現在は、子どもは地域社会にとっても他人になりつつあるのかもしれません。
近所のおじさんおばさんが、あの子はどこどこの○○ちゃん、今日学校はどうだった?といった光景は、もうみられなくなってしまうのでしょうか?
物理的な問題を感情的には解決できない
建設予定地だった場所の周辺には一戸建てが多く、閑静な住宅街で高齢世帯も多いそうです。
周辺に住む反対の意見として「静かに暮らしたいと思ってここに家を買ったのに、いきなり保育園ができると言われて驚いたし、困った」といった声や反対に「一部の住民の意見で中止になるのはおかしい」と言う声があるようです。
しかしそもそもの原因は明白で、近年都市部に保育園が急激に増えたことが考えられます。
待機児童は特に、都市部に集中していることでさらに問題が大きくなっています。
この状況で保育園を作るかぎり子どもの騒音や交通トラブルは避けられませんし、この手のものは今以上に増えることでしょう。
この問題は都市部で保育園が増えることに伴う物理的な問題です。感情的に解決する類のものではありません。
増え続けざるを得ない保育園
肯定的な意見や否定的な意見がありつつも、今後も変わらないのは保育園の数は増やさないといけないということです。
ただ数を増やすことに対して、物理的に対応できることもあります。
防音壁や雑音防止のスピーカーを設置する、道路が狭いのであれば拡張工事を行う、準備の段階でできることをしっかりと行う。
さらにその上で地域住民とのコミュニケーションも疎かにしないことです。
実は今回の報道のコメントで「断念は聞いたことがなく残念です」というのが、本当に文面通りでしたら、それこそ準備不足と言っても仕方がありません。
なぜなら、さいたま市内では2011年春の保育所開設を目指した計画が白紙になり、断念した社会福祉法人理事長は「住民の反対や地主の貸し渋りであきらめた計画は、他市も含め10以上ある」(朝日新聞デジタル2014/06/03)といった例があるからです。
専門のコンサルタントが必要
今回の市川市の問題だけではなく、何年も前から保育園を増やすことについては国レベルで対策が行われています。
しかしどのような準備が必要か、どのように地域住民とコミュニケーションを行っていけばいいのか、などについての情報共有と蓄積がうまくまとめられていないように見受けられます。
今後はこの分野における専門のコンサルタントを置くなどして、物理的にできることは準備段階も含めて本気で対応する必要があります。将来を担う子供たちの教育を住民の共通意識としてとらえ、官民一体となった法整備が望まれるところです。
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