純国産に限定!日本酒の地理的表示は「日本ブーム」の波に乗る?
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世界では当然の「地理的表示」
「日本酒表示は純国産に限定」という財務省の発表が6月9日に世界を駆け巡りました。世界では当然の「地理的表示」ですが、年内にもはっきりとした定義で日本酒もその動きに追従するようです。世界貿易機関WHOの加盟国は、この地理的表示を持つ商品を保護し、その地名を産地以外では使えない知的財産権として認めています。代表格では、「スコッチウイスキー」や「シャンパン」などが良く知られています。
「もっと早くにできたのではないか」という業界や他の業界団体からの意見も見逃せません。海外において「地理的表示」は、自国のアルコール文化を守る重要な財産という意識が強く見えます。では、日本酒の知的財産的価値はなぜ、はっきりとした規定もなく、長らく放置されてきたのでしょうか。
日本酒の品質維持に関する法整備は存在しない
本来、日本では「酒税」なるものが財源の基本にあり、お酒はすべて酒税法の管轄です。明治時代にはすべての税収に占める割合が最大で38%にまで達し、重要な財政基盤となっていました。
そのため、品質維持に関する法整備は存在せず「税金を徴収する手段」としての位置付けが抜けていません。しかし、現在では国家予算に対する酒税が占める割合は、わずか1.9%に過ぎません。ドイツで1516年に施行された品質維持法「ビール純粋令」やフランスワイン法「AOC法」などのように、2000年の歴史を持つ「日本酒」においても法整備を行うべきでしょう。
海外での日本酒蔵は世界8カ国に広がる
海外での初めての日本酒生産は、1908年(明治41年)にハワイで行われました。銘柄は「宝正宗(1992年に廃業)」。日系人を中心にアメリカ西海岸方面まで売られていたほどです。また、現存する海外最古の酒蔵は、1979年創業の「大関」。大手メーカーとして初めてアメリカ進出を果たしたパイオニアです。その後、「松竹梅」「月桂冠」「白鹿」「桃川」などが続々と米国進出しています。
海外での日本酒蔵は、今や世界8カ国に広がり、現在19蔵。アメリカ6蔵、韓国3蔵、ベトナム1蔵、タイ1蔵、オーストラリア1蔵、ブラジル1蔵、ノルウェー1蔵。意外と知られていないのが中国です。中国にも、アメリカと並ぶ6蔵もの酒蔵があります。
現在、世界中の主要都市を中心に巻き起こる「和食ブーム」と「日本酒ブーム」。その影響により今後、海外メーカーの日本酒は「ジャパニーズ・ライス・ワイン」とでも呼ばれるようになるかもしれません。海外輸出での草分けは、北海道旭川市にある「男山」です。海外での酒類コンクールで初めてゴールドメダルを受賞しました。
特に海外での「獺祭(だっさい)旭酒造 山口県」の戦略はもの凄く、男山に並び高い評価を得ています。華やかな吟醸タイプは特に人気が高く、アメリカでは醸造用アルコールの添加はリキュールとなるため、純米大吟醸の需要を中心に世界最大の消費国となっています。
厳格な規定で売り込み、品質保持を計るという本音が見え隠れする
海外人気とは裏腹に、国内での日本酒消費は伸び悩み、前年を切っている状態。特に地元での消費支持率が高い県の大手酒蔵は、積極的にこの海外ブームに便乗しようと躍起です。しかし、本当に海外での評価を得るためには、品質保持と日本酒専門家の育成にかかっています。
さらに、2020年開催の東京オリンピックでの日本ブーム到来も忘れてはいけません。今回の規制には、「純国産」でなければ「日本酒=ジャパニーズサケ」とは言えなくなるという厳格な規定で売り込みをかけ、品質保持を計りたいという本音が見え隠れします。世界における「日本酒元年」ともいえる「地理的表示」の決断。これを機に世界でのさらなる「ジャパニーズ・サケブーム」を期待したいものです。
北海道産酒や全国の国酒の良さを発信するきき酒のプロ
鎌田孝さん(合同会社タックドゥープランニング)
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