映画「精神」:「病と共に生きる人」、そしてその彼らと共に生きる人
あぁ、世の中はクリスマスで浮かれているのに、こんな切ない映画を見てしまいました。
以前日本の映画で「誰も知らない」という映画がありました。都内の2DKのアパートに4人の兄妹が誰にも知られずにひっそりと暮らしていました。学校にも通ったことがなく、母親はわずかなお金と書置きを残して姿を見せなくなったのです。その後の漂流生活を当時少年だった柳楽優弥くんが見事に淡々と演じていました。当時社会に与えた衝撃は大きかったと思いますが、しかし実際は現実の方が数倍も過酷だったのです。
このような映画はほかにも、私が見ただけでも、たとえば韓国映画の「冬の小鳥」
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さらにフランス映画の「ある子供」
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と様々な作品が残されていますが、この映画「ぼくらの旅路」同様に、見ているだけで切なく胸が締め付けられるような作品でした。
作品の設定はやはり母親からの養育放棄(ネグレクト)に当たるのでしょうが、その過酷な日々の中でも10歳のジャック少年は必至で生き抜いていきます。弟のマヌエルはまだ6歳なので、何もわかっていないようです。その弟の世話を一人で見ながら、母親が遊びに出かけていない寂しさを表情にも出さずに堪えています。
行政もその状況を理解していて、ジャックはやがて児童養護施設へ引き取られていきます。そこにはジャックと同じような境遇の子供たちが集団生活をしていますが、彼らの怒りや悲しみは様々な問題行動として噴出していきます。そこを何とか生き抜いたジャックは、一人母のもとへと歩いて戻ろうとするのです。
暴力や心理的虐待だけでなく、ネグレクトという形の虐待は子どもたちの魂を傷つけます。しかしそれでも子どもたちは親の元へと戻りたいという思いを抑えることができません。そして何とか戻ったとしても、そこに待っているのは以前と少しも変わらない状況・・・。
この映画の宣伝を見ると「突然消えた母親を捜すため旅に出た兄弟の成長を描くドラマ」と書かれていましたが、そんな甘いものではありません。結局彼らにとって戻らざるえ終えないところは、母親のところではなくジャックが逃げ出してきたはずの児童養護施設でしかありませんでした。
なんとも切ない映画ですが、現実はこれをもっと超えている厳しさではないかと思います。そういう意味で、目をそらしてはいけない映画だとつくづく感じました。
◇◆◇ 胸を揺さぶるこんな映画も ◇◆◇
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