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統合失調症の男性との交流を描いた映画「路上のソリスト」

岸井謙児

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テーマ:「こころ」を描いたこんな映画

今回見た作品はこれ



あるコラムニストがふとしたきっかけから、路上で暮らすホームレスの男性が弾くバイオリンの音に興味を持ちます。そのバイオリンはお世辞にもきれいなものとは言えず、弦も2弦しかありません。それでも男性は繰り返し、同じフレーズを引き続けるのでした。コラムニストの名はスティーヴ・ロペス、そしてホームレスの音楽家ナサニエル・エアーズと言い、実在の人物でストーリー自体も実話です。

この路上の演奏者エアーズさんは、実は音楽の名門ジュリアード音楽院に在籍したことがあるチェロ演奏者なのでした。しかし彼は在学中に統合失調症を発症し、幻聴や妄想に悩まされるようになり、演奏どころではなくなりました。そして、残念がら退学。その後はホームレスになっていたのでした。そんな彼に興味を覚えたロペスは、彼の生い立ちを記事に連載する事にします。するとしばらくして、ナサニエルに同情した読者から、彼宛てにチェロが届きます。ロペスはそれを餌にナサニエルを「更生」させようとするのですが・・・。

このお話はナサニエル・エアーズさんの半生を描くとともに、実は路上生活者の中に一定の割合でいるはずの統合失調症の患者さんや薬物依存、その他の精神的疾患の方々についてありのままに近い形で描いてくれています。ロペスさんはこのエアーズさんを音楽の力で「救おう」と努力を重ねるのですが、それがエアーズさんご本人の希望に基づいたものかどうか、振り返る余裕がなかったのでした。こういう場合の「愛情」や「親切」は往々にして「おせっかい」や「同情」につながってしまいます。そしてその裏返しとして「俺がこれだけお前のことを思ってやっているのに、ぜんぜんわかっていないじゃないか!」という「怒り」につながります。

二人の関係はその通りの展開を見せ、ギクシャクして破たんしそうになるのです。これは映画だけの話ではありません。私たちも往々にして陥りがちな罠なのです。本当に相手のことを考えているのなら、何よりまず相手の気持ちを確認・優先すべきでしょう。「何とか相手のために」が実は「自分の思い入れ」であり相手にとっては「良い迷惑」であることもしばしば。難しい問題です。「福祉」に携わる者にとっての「影」とでもいうべき問題です。

先日起きた横浜での「障害者殺害事件」でも、犯人は最初は「障害者のために」という思いがあったと聞きました。しかしそれは本当にそうだったのでしょうか。施す側の「善意」が、受け取る側に「感謝」されない時、いや、もともと「施す」とか「受け取る」という考え方こそがすべての発端なのでしょう。映画のクライマックスでも触れられていましたが、「困った時にそばにいる友人」であることの大切さと、そうあることのむずかしさを思い知らせてくれた作品でした。
興味のある方はゼヒ!

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岸井謙児(臨床心理士)

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カウンセリング暦35年。子供から大人まで、うつ・対人関係の悩み・発達障害・不適応・ひきこもりに関わる問題に丁寧に、かつ誠実に対応します。また全国から電話・スカイプなどでも相談を多数受け付けています。

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