ちょっといい言葉<194>　「美の裏には醜があり、善の裏には不善がある・・・・・」

2016年10月15日

テーマ：ちょっといい言葉

コラムカテゴリ：メンタル・カウンセリング

「天下の人たちは皆、美が何であるか知っているが、それだけではいけない。美の裏には醜があるのだ。皆は善がどういうものか知っているが、それだけではいけない。裏には不善があるのだ。このように有無はともにあり、長短、高下、音声、前後といった具合に、すべてに相対的なものがある」これは老子の言葉です。

美の裏には醜があり、善の裏には不善がある、長の裏には短があり、高の裏には下がある。世の中のすべては常に表裏一体で、一面的な判断はことを見誤る。実に含蓄のある言葉ですね。世の中のことは常に対立・対局の軸から成り立っていています。心理学でいうところの「意識」の働きは、この対立・対局を生み出す働きなのです。つまり「これはこうだ、ああではない」「これが正しい、それ以外は間違いだ」という具合です。そしてその意識の力が働き過ぎてどちらかに一面的に偏ってしまうと、そこでバランスが崩れてしまう。それがいわゆる悩み、葛藤と言われる状態です。

しかし人間には、その崩れたバランスを取り戻す復元力が備わっています。その力こそ無意識の力と言われるものです。カウンセリングや心理療法は、結局のところ一面的に偏り過ぎた意識のバランスを取り戻す営みだと言えるでしょう。そういう意味では、人間に生まれつき備わっている自己治癒力・自己復元力を十分に働かせる営みだと言っていいかもしれません。

人間の不思議さと可能性の深さを感じます。

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