飲食店 海外進出入門講座 Vol.3 なぜ飲食店の海外進出は「国」ではなく「エリア」で考えるべきなのか?
調査対象を絞り込む
到着日と初日の2日間で、マカティ市における市場の価格感、各エリアを行き交う人々の属性、街ごとの空気感を肌で感じ、まずはマクロの視点から市場の輪郭をつかみました。
海外都市のマーケットは、エリアによって人の構成、所得層、消費行動が大きく異なります。
日本の東京でも、中央区、港区、江東区、墨田区では街の性格が異なります。しかし、海外の大都市では、その違いがさらに鮮明です。一区画、あるいは一本の通りを越えただけで、そこにいる人の所得層、国籍、職業、生活スタイル、消費単価が大きく変わることがあります。
この感覚に慣れていないと、海外進出では大きな判断ミスを起こします。
たとえば、ターゲットとする顧客層が集まっていないエリアに出店してしまえば、どれほど商品力があっても、事業は思うように伸びません。逆に、現地の購買力や消費行動を正しく捉えたエリアに出店できれば、事業の立ち上がりは大きく変わります。
だからこそ、日本で地図や統計データだけを眺めていても、本当のターゲットエリアは見えてきません。
これが、海外進出において現地マーケット調査が絶対に必要となる理由です。
新しいビジネスエリアの市場調査を行う場合、まず日本にいる段階で、信頼できる書籍、統計資料、データベース、現地情報を用いて、どのエリアにビジネスターゲットが存在するのかを徹底的に調べます。
宿泊するホテルも、単に便利な場所を選ぶのではありません。調査対象エリアに近く、朝・昼・夜の人流を確認できる場所を選び、現地での行動拠点とします。
そして現地では、自分の足で歩きます。
車で移動するだけでは、街の微妙な変化はつかめません。道路の状態、歩行者の流れ、店舗前で人が立ち止まるか、夜に安心して歩けるか、周辺にどのような店があるか、匂い、音、湿度、騒音、照明、看板の見え方。
これらは、現地を歩かなければ得られない情報です。
私は、新しい進出エリアのマーケット調査では、原則として単独で行動し、そのエリアを自分の足で動き回ります。
目で街を見ます。耳で現地の音や会話を拾います。舌で食の水準と価格を確認します。鼻で街の匂いを感じます。手で商品を取り、品質や陳列を確かめます。
五感を総動員し、さらに長年の海外ビジネスで培ってきた勘を働かせながら、現地の情報を吸収していきます。
そのうえで、事前に立てた仮説を現地で検証し、徐々に調査ターゲットを絞り込んでいくのです。
海外視察というと、複数人で現地を訪れ、ガイドに案内され、決められたルートを見て回るケースも少なくありません。それは情報収集の一つの方法ではありますが、実際のマーケット調査としては限界があります。
本当に必要なのは、事前の情報収集、現地での一次情報の獲得、そして海外市場を見る経験値を組み合わせることです。
今回のフィリピン・マカティ市の調査でも、同じ方法を取りました。
到着から2日間で全体像をつかみ、滞在3日目には、クライアント企業様のビジネスモデルに適合するエリアを絞り込んだうえで、最終調査に入りました。
調査の最終の絞り込みへ
調査のまとめを行う3日目は、今回ご依頼をいただいているクライアント企業様のビジネススキームに適合する店舗エリアを確定させるため、絞り込んだ候補エリアを重点的に歩きました。
3日目になると、現地の交通状況、人の流れ、通りの位置関係、商業施設の配置が頭に入り始めます。
初日に比べると、調査スピードは格段に上がります。
報告用の写真を大量に撮影し、周辺環境を確認し、店舗前の視認性、人流、車両導線、近隣競合、物流やトラック配送のしやすさを確認します。
飲食業の海外出店では、表の華やかさだけを見てはいけません。
重要なのは、店舗運営が継続できるかどうかです。
商品が届くのか。水道や電気は安定しているのか。排水や衛生管理に問題はないか。トイレ事情はどうか。従業員が通勤しやすいか。周辺道路は渋滞しやすいか。災害時の対応はどうなるか。大気汚染や騒音は、顧客体験に影響しないか。
こうした細部を確認しなければ、海外出店は机上の計画だけで終わってしまいます。
同時に、進出に必要な細かい情報、すなわち電気、水道、災害対応、トイレ事情、交通事情、大気汚染状況、周辺環境、近隣施設、物流条件などを整理し、クライアント企業様への報告にまとめていきます。
海外進出の現地調査とは、単に「雰囲気が良い場所」を探す作業ではありません。
事業が成立する場所を、経営・財務・運営・人材・物流・法務の観点から検証する作業なのです。
マーケティング調査は、その後の事業のスキーム作りの礎
海外進出をご依頼いただくクライアント企業様では、進出担当者の方が社内報告用の企画書を作成し、経営陣に報告されます。
そのため、私たち海外進出支援コンサルタントの重要な役割は、経営判断に耐えられる基礎情報を提供することにあります。
現地で何を見たのか。どのエリアに可能性があるのか。なぜその場所なのか。想定客層は誰か。競合はどの水準か。価格帯は成立するのか。初期投資はどの程度必要か。現地パートナーは必要か。撤退リスクはどこにあるのか。
こうした論点を整理しなければ、海外進出は単なる期待論で終わってしまいます。
海外進出支援という仕事は、現地法人の設立手続きや、現地代理人との英語でのやり取りだけではありません。
本当に重要なのは、クライアント企業様の事業が、現地で継続的に成功し、拡大していくためのビジネススキームを構築することです。
URVグローバルグループでは、単なる手続き支援ではなく、事業戦略、現地マーケット調査、商圏分析、法務・財務の検討、人材戦略、販売戦略、パートナー戦略、投資回収計画までを一体として捉えます。
海外事業は、部分最適では成功しません。
事業コンセプトに基づく事業戦略。現地法務や財税務に基づく法務・財務戦略。現地雇用と教育によって生産性を高める人材戦略。販路開拓やクロスボーダー取引を見据えた貿易・販売戦略。そして、現地事情と事業主体の強みを両立させる事業モデルの開発。
これらを総合戦として組み立てる必要があります。
かつて、日本が高度成長を遂げ、日本企業と日本のビジネスマンが世界市場で存在感を放っていた時代がありました。
その時代、日本の海外進出の一翼を担っていたのは、総合商社の商社マンたちでした。
彼らは、現地に入り、自ら足を運び、現地の行政、企業、経営者、現場の人々と向き合いながら、ビジネスを創っていきました。資源開発、貿易、現地法人設立、販路開拓、投資案件の組成。机上の資料だけではなく、現地で汗をかきながら事業を形にしていったのです。
その行動力と構想力が、戦後の日本経済を大きく押し上げる原動力の一つになりました。
しかし、現在の日本では、当時のように現地に入り込み、自ら仮説を立て、リスクを取り、事業を構築できるビジネス人材は少なくなっています。
大企業の海外駐在であっても、任期中の業務管理が中心となり、現地市場を深く開拓する経験が十分に蓄積されない場合があります。
一方、中小企業では、現地情報の不足、法務・税務の理解不足、パートナー選定の甘さ、資金計画の不備によって、海外進出が見切り発車になってしまうケースもあります。
その結果、現地で思うように事業が立ち上がらず、短期間で撤退を余儀なくされることも少なくありません。
だからこそ、海外進出では、最初の現地マーケティング調査が極めて重要になります。
現地調査は、単なる準備作業ではありません。
その後の事業戦略、出店判断、投資判断、組織設計、パートナー選定、販売戦略、撤退基準までを決める、海外事業の土台そのものです。
高いポテンシャルを確認したフィリピンでの調査
今回は、私の過密なスケジュールを調整し、土日を含む4日間で、フィリピン・マカティ市のマーケット調査を行いました。
そして、日本で事前に立てたビジネスモデルの仮説を現地で検証し、具体的な出店候補エリアを絞り込み、生活環境、消費者動向、価格帯、競合状況、物流条件、店舗運営上の課題を総合的に確認しました。
その結果、日本で構築した事業スキームの方向性に大きな問題はなく、市場には高いポテンシャルがあると判断しました。
もちろん、フィリピン市場には課題もあります。
交通渋滞、インフラの不安定さ、所得格差、エリアごとの治安差、行政手続き、現地パートナーの見極め、人材教育、商習慣の違い。
これらを軽視して進出すれば、事業は簡単に失敗します。
しかし、課題があるからこそ、現地を深く理解し、適切な戦略を組める企業には大きな機会があります。
マカティ市やBGCのような富裕層・中間層・外国人ビジネス層が集まるエリアでは、飲食業、サービス業、教育、BPO、オフショア開発、人材活用、貿易、現地法人展開など、多様な事業機会が広がっています。
フィリピン進出を成功させるために必要なのは、勢いだけではありません。
市場を読む力。商圏を見極める力。現地人材を活かす力。価格戦略を組み立てる力。法務・税務・財務を理解する力。そして、日本企業としての強みを、現地市場に合わせて再設計する力です。
最後の夜、私は地上32階のデッキに立ち、眼前に広がるマカティの超高層ビル群を眺めていました。
熱帯の夜風がビルの谷間を抜け、街の灯りが足元に広がっていました。
グラスに注いだジャックダニエルのロックを傾けながら、この国の成長の熱量と、これから始まる事業展開の可能性を静かに確認していました。
翌日は、成田に向けて帰国します。
2025年、私はさらに周到な総合事業戦略を携えて、年初に再びフィリピンへ戻ってきます。
そしてこの国で、クライアント企業様の事業を成功へ導き、URVグローバルグループとしても、フィリピンにおける事業展開の礎を築いていきます。
以上、3日連続でお届けした、フィリピン・マカティ市からの現地発信でした。
フィリピン進出、マカティ市場調査、飲食業の海外出店、海外オフショア開発、人材活用を検討されている経営者の方にとって、本シリーズが、現地を知り、次の一歩を考えるきっかけになれば幸いです。
URVグローバルグループのフィリピン進出支援実績事例
株式会社Cホールディングス 海外進出市場調査・不動産物件調査
フィリピン進出・ベトナム進出・海外オフショア開発・海外事業展開を検討している経営者の方へ。海外進出は、現地視察に行ってから考えるものではありません。視察前の仮説設計、確認すべき商圏項目、競合調査、現地パートナー候補の見極め、投資回収シミュレーションまで、事前準備の質が海外事業の成否を大きく左右します。特にフィリピン進出では、マカティ・BGCなどの商業エリアの違い、現地人材の活用、価格戦略、出店立地、法務・税務、物流条件を総合的に判断する必要があります。年商48億円の企業グループのオーナーCEOである経営コンサルタント松本尚典が、2時間無料で個別相談を行います。フィリピン進出の可能性を知りたい方、飲食業の海外出店を構想している方、海外オフショア開発や人材活用を検討している方、現地視察前に事業仮説を整理したい方は、まず無料相談で海外事業の論点を明確にしてください。松本尚典の無料相談
https://direct.mbp-japan.com/menu/detail/936
海外進出を「思いつき」ではなく、勝てる事業戦略に変えるための伴走支援。現地視察、商談設計、パートナー選定、事業計画づくりまで、経営者視点で支援します。フィリピン進出、ベトナム進出、飲食業の海外出店、海外オフショア開発を検討する中小企業経営者の方に向けて、市場調査、商圏分析、価格戦略、人材戦略、投資回収計画まで、実務と経営判断の両面から支援します。松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/


