【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われたときの初動手順|その場で確認すること・応じないこと

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店の利用中や利用直後に、キャストや店のスタッフから「警察に行く」「警察か示談か選べ」と告げられると、多くの方は頭が真っ白になり、言われるままに書面へ署名したり、お金を払ったりしてしまいます。しかし、その場で決めたことが後から大きな負担になる例は少なくありません。この記事では、「警察に行く」と言われたその場で確認しておきたいことと、応じないほうがよいことを、手順の形で整理します。

この記事は、2023年の刑法改正(不同意性交等罪の新設など)を踏まえた一般的な解説です。実際の見通しは、行為の内容、相手方の対応、残っている記録などによって変わります。


「警察に行く」という言葉が出たときに、まず知っておきたいこと

 手順に入る前に、「警察に行く」という言葉がどのような意味を持つのかを押さえておくと、その場で落ち着きを取り戻しやすくなります。

被害届を出すかどうかは、キャスト本人が決めること

 性的な行為をめぐる被害を警察に申告するかどうかは、基本的には被害を訴える本人(キャスト)が判断することです。店のスタッフが「警察に行く」と言っても、それだけで事件として扱われるとは限りません。反対に、店との間で話がまとまっても、本人が別に警察へ相談する可能性は残ります。誰が何を決められる立場にあるのかを分けて考えることが、最初の整理になります。

「警察か示談か」の二択を、その場で決める必要はない

 「今ここで示談するか、警察に行くか」と迫られる場面は、相談の中でもよく見られます。しかし、示談は本来、事実関係や金額、条項の内容を確認したうえで結ぶものです。その場で結論を出さなくても、後日あらためて話し合う道は通常残されています。即答しないことは、話し合いを拒むことと同じではありません。

その場で確認することの手順

 店のスタッフが部屋に来た、事務所に呼ばれたといった場面では、次の順序で確認していくと、後から事実を説明しやすくなります。

  1. 自分の身の安全と、退出できる状況かどうか。
  2. やり取りの録音と、相手の発言のメモ。
  3. 目の前にいる相手の名前と、店の中での立場。
  4. 相手が何を理由に「警察」と言っているのか。
  5. 相手が具体的に何を求めているのか。


身の安全と退出できる状況を確かめる

 最初に優先したいのは安全です。複数人に囲まれている、ドアの前に立たれている、大声で威圧されているといった状況では、冷静な話し合いはできません。部屋から出ることを阻まれる、所持品を取り上げられて帰れないといった状態が続く場合は、ご自身から110番通報することも選択肢になります。一方で、無理に相手を振り切ろうとしてもみ合いになると、別のトラブルを生むおそれがあるため、落ち着いて「今日は帰って、後日あらためて話をしたい」と伝える形が望ましいといえます。

やり取りを録音し、発言をメモする

 可能であれば、スマートフォンで録音を始めておきます。誰が、いつ、どのような言葉で何を求めたのかは、後で示談の内容を検討するときにも、事実関係に争いが生じたときにも重要な手がかりになります。録音が難しい場合でも、店を出た直後に、相手の発言、求められた金額、その場にいた人数などをできるだけ詳しくメモしておきましょう。

相手の名前と立場を確認する

 話をしている相手が店長なのか、スタッフなのか、店とは別の人物なのかを確認します。名前や役職を尋ねても答えない場合は、その事実も記録に残しておきます。店の正式な名称や所在地も、後日連絡を取る際に必要になります。

相手が何を問題にしているのかを聞く

 「本番行為をした」「同意がなかった」「盗撮した」など、相手がどのような事実を理由にしているのかを確認します。ご自身の記憶と食い違う点があれば、その場で強く言い争うのではなく、「その点は認識が違う」とだけ伝え、詳しい説明は控えるほうが無難です。

求められている中身を確かめる

 金額、支払方法、支払期限、署名を求められている書面の内容、身分証の提示など、相手の要求を一つずつ確認します。この段階では「確認した」ことにとどめ、「応じる」と約束しないことがポイントです。

その場で応じないほうがよいこと

 確認を進める中で、相手からさまざまな要求が出てくることがあります。代表的なものを整理すると、次のようになります。

求められることその場で応じないほうがよい理由代わりにできること
示談書・念書・誓約書への署名事実を認める内容や高額な支払いの約束が含まれていることがある書面の写真を撮らせてもらい、持ち帰って検討したいと伝える
その場での現金払い・振込金額の妥当性や、受け取る人が誰なのかを確認できない支払いは後日、内容を確認してからにしたいと伝える
身分証や名刺の撮影・コピー勤務先や住所が、後の請求や連絡に使われるおそれがある求められた事実と、撮影された内容を記録しておく
謝罪の様子や身分証を持った姿の撮影事実を認めた証拠として扱われたり、圧力の材料にされたりするおそれがある撮影には応じたくないとはっきり伝える
財布やスマートフォンを預けること所持品を返してもらう条件として、支払いを迫られやすくなる所持品は手元に置いたまま話をしたいと伝える
家族や勤務先への電話話が広がり、交渉の窓口が複雑になる連絡先は自分の携帯電話に限りたいと伝える


 特に、借用書や示談書への署名は、後から「無理に書かされた」と主張しても、その効力を争うには手間と時間がかかります。内容に納得できない書面には、その場で署名しないことが基本です。

 なお、相手の要求を断ると、「それなら今すぐ警察に行く」と言われることもあります。その場合でも、要求に応じなければならないわけではありません。警察に相談するかどうかは相手の判断であり、こちらとしては、記録を残しながら落ち着いて対応を続けることになります。

店のスタッフが交渉の前面に出てくることについて

 風俗トラブルでは、キャスト本人ではなく、店長やスタッフが示談の条件や金額を示してくることがよくあります。しかし、弁護士ではない者が報酬を得る目的で他人の法律事件について交渉することは、弁護士法72条で禁じられています。2026年2月には、宮崎市内の風俗店の店長らが、客との示談交渉や示談金の受け取りをしたとして、弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられました。

 店が交渉に関わるすべての場面が違法になるわけではありませんが、示談の当事者が誰なのか、支払ったお金が誰に渡るのかがあいまいなまま合意すると、後から本人が別に請求してくる、被害届が出されるといった事態につながるおそれがあります。この点からも、その場で示談を成立させることは慎重に考えたいところです。

実際に警察が来た・警察署に行くことになった場合

 店が通報し、警察官がその場に来ることもあります。警察を呼ぶこと自体を止めることはできませんし、警察官が来たことで、かえって店との話し合いが落ち着くこともあります。

 警察官から事情を聞かれた場合は、覚えている事実を落ち着いて伝えることになりますが、記憶があいまいな点を推測で補ったり、相手の言い分に合わせて話したりすることは避けましょう。任意の事情聴取の段階であれば、弁護士に相談してから話したいと伝えることもできます。また、話したくないことについては黙っている権利(黙秘権)があり、作成された供述調書の内容が自分の認識と違う場合には、訂正を求めたり、署名を断ったりすることも認められています。

 警察署への同行を求められた場合も、任意である限りは応じるかどうかを判断できますが、状況によっては同行に応じたほうが、その後の手続が円滑に進むこともあります。迷う場合は、その時点で弁護士に連絡を取ることを検討してください。

店を出た後、その日のうちにしておくこと

 店を離れることができたら、記憶が新しいうちに、利用した日時と店名、キャストの名前、トラブルになった経緯、相手の発言、求められた金額や書面の内容を時系列でまとめておきます。撮影された身分証の種類や、渡してしまった連絡先も書き出しておくと、後の対応を考える材料になります。

 その後、店から電話やメッセージが続くことがありますが、内容を確認するだけにとどめ、新たな約束はしないようにします。弁護士に依頼した場合は、以後の連絡を弁護士が窓口となって受けることができ、ご本人が店と直接やり取りする負担を減らせます。翌日以降の動き方については、次の記事でも整理しています。


よくあるご質問


その場から帰ってしまうと、逃げたと見られて不利になりますか

 「後日あらためて話をしたい」と伝え、連絡先が分かる状態で帰ること自体が、直ちに不利な事情になるとは考えにくいところです。むしろ、威圧的な雰囲気の中で不本意な書面に署名することのほうが、後の負担につながりやすいといえます。ただし、相手を押しのけるなど力ずくで立ち去ることは避けてください。

すでに念書に署名してしまいました。もう取り返しはつきませんか

 署名した書面があっても、その内容や作成された経緯によっては、効力を争ったり、条件を見直す交渉をしたりできる場合があります。書面の写しや写真がない場合でも、記載されていた内容をできるだけ思い出してメモしておき、早めにご相談ください。

店が「お金を払えば警察には言わない」と言っています。信用してよいですか

 店がそのように約束しても、被害を訴える本人が警察に相談することまで止められるとは限りません。示談を検討する場合は、本人が当事者として合意に加わっているか、刑事処罰を求めない意思が書面に示されているかなどを確認する必要があります。

関連する解説記事



 「警察に行く」と言われた場面では、その場で何かを決めてしまうよりも、安全を確保し、記録を残し、結論を持ち帰ることが、後の選択肢を広げることにつながります。署名や支払いをしてしまった後でも、取れる手立てが残っていることは少なくありません。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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