家宅捜索(ガサ入れ)が来た|立ち会いでできること・できないこと
この記事は、2025年(令和7年)のストーカー規制法改正(警察が職権で警告できるようになった点など)と、2026年(令和8年)6月に示された警察の運用通達の内容を踏まえて書いています。個別の事案でどう判断されるかは、具体的な事情によって変わります。
職場の同僚に好意を伝えたものの、はっきりした返事がもらえないまま何度か食事に誘ったり、気持ちを書いたメッセージを送ったりしているうちに、「これはストーカーになってしまうのではないか」と不安になる方がいます。相手の態度がよそよそしくなった、上司から呼ばれて事情を聞かれた、というきっかけで気づくことも少なくありません。
結論から言うと、好意を伝えたこと自体が直ちにストーカーとして扱われるわけではありません。ただ、断られた後や、返事がないことで相手の気持ちが読み取れる状況で同じ働きかけを続けると、ストーカー規制法の「つきまとい等」に当たる場面が出てきます。そして職場という場所には、法律の評価とは別に、社内での処分という問題も重なります。
この記事では、好意を伝えた側の立場から、どこからが法律上の問題になるのか、職場ならではの注意点、そして「もしかして」と思った段階でできることを整理します。
ストーカー規制法が問題にするのは「好意」ではなく「行為」
ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことによる恨みの感情を充足する目的で、法律が定める8つの類型の行為をすることを「つきまとい等」と定めています。そのうえで、つきまとい等を反復して行うことを「ストーカー行為」として処罰の対象にしています。
つまり、法律が見ているのは「好意を持っていること」ではなく、好意を充足するために「どのような行為を、どのくらい繰り返したか」です。好意を持つことも、一度それを言葉にして伝えることも、それだけで規制の対象になるものではありません。
8つの類型のうち、同僚に好意を伝える場面で関係しやすいのは次のものです。
- つきまとい、待ち伏せ、勤務先や自宅付近での見張り、押し掛け、うろつき(1号)。
- 行動を監視していると思わせる事項を告げること(2号)。
- 面会、交際その他の義務のないことを行うよう要求すること(3号)。
- 拒まれたにもかかわらず、連続して電話やメール、LINEなどのメッセージを送ること(5号)。
1号から4号と5号のうちメール等の送信は、相手に身体の安全や行動の自由などが害されるのではないかという不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限って、ストーカー行為を構成するとされています。また最高裁判所は、異なる類型の行為が組み合わさっていても、全体として反復していればストーカー行為が成立し得るという判断を示しています(最高裁平成17年11月25日決定)。誘いの言葉と、帰りの時間を合わせる行動が別々なら問題ない、という整理にはならない点に注意が必要です。
分かれ目になる3つの事情
相手がすでに断っているか
最も大きな分かれ目は、相手が断っているかどうかです。3号の「義務のないことの要求」は、第三者から見て不当といえる要求を指すとされています。好意を伝えて返事を待つこと自体は不当とまではいえませんが、交際や二人きりの食事を断られた後も、同じ誘いを繰り返す場合には、この類型に当たると評価されるおそれがあります。
また5号のメッセージの連続送信は「拒まれたにもかかわらず」という条件が付いています。警察の運用通達では、この拒絶には言葉にしない黙示のものも含まれるとされ、ただし送る側が拒絶を認識していることが必要とされています。既読のまま返事がない状態が続いている、話しかけると会話を早く切り上げられる、といった事情は、それだけで拒絶と決まるわけではありませんが、相手の気持ちを読み取る材料として後から問われることがあります。
回数・間隔・手段
「何度か」の中身も見られます。数か月に一度、職場の飲み会の流れで食事に誘ったという場合と、断られた翌日から毎日のようにメッセージを送る場合とでは、評価が大きく異なります。5号の「連続して」は、短時間や短期間に何度もという意味とされ、具体的な回数の基準はありません。回数だけでなく、送る時間帯、文面の内容、電話・メッセージ・手紙といった手段の重なりも含めて全体で判断されます。
相手に不安を覚えさせる方法か
不安を覚えさせるような方法かどうかは、通常一般の人を基準に判断するのが原則です。ただ警察の運用通達では、行為者と相手方の人的関係、行為の具体的な態様、同種の行為の回数や頻度などを総合的に考慮するとされています。職場の同僚は、毎日顔を合わせ、簡単には距離を取れない関係です。同じ誘いの言葉でも、逃げ場のない関係の中で繰り返されると、相手が受ける圧迫感は大きくなりやすいといえます。
職場ならではの注意点
職場では、業務上の接点があるため、何が私的な働きかけで何が通常の業務なのかが曖昧になりがちです。次の表は、職場で起きやすい行為と、法律上どの類型と関係し得るかを整理したものです。
| 職場で起きやすい行為 | 関係し得る類型 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 退勤時間を合わせて一緒に帰ろうとする、最寄り駅で待つ | つきまとい・待ち伏せ(1号) | 偶然を装っても、繰り返されれば行為の全体で見られる |
| 断られた後も食事や休日の外出に誘い続ける | 義務のないことの要求(3号) | 誘い方が丁寧でも、断られた後の反復は別の評価になり得る |
| 業務用のチャットや社用メールで私的なメッセージを送る | 連続送信(5号) | 業務連絡の体裁でも、内容が私的なら私的な働きかけとして扱われ得る |
| 「昨日○○にいたよね」など相手の行動を知っていると伝える | 監視していると思わせる事項の告知(2号) | 本人に悪気がなくても、相手には監視と受け取られやすい |
| 共通の同僚に気持ちを伝えてほしいと頼む | 直接の類型ではないが、相手の受け止めに影響する | 周囲に知られることで相手が職場で孤立感を覚えることがある |
業務上必要な連絡や、仕事の場で普通に挨拶や会話をすることまでが制限されるわけではありません。問題になりやすいのは、業務の必要を超えて、相手の意思に反する接触を続けることです。
警察が関与した場合の流れ
相手が警察に相談した場合、警察はまず事情を確認し、つきまとい等に当たり、さらに繰り返すおそれがあると認めると、繰り返してはならない旨の警告を出すことがあります。2025年の法改正で、相手方の申出がなくても警察が職権で警告できるようになりました。報復などを恐れて申出をためらう相手を想定した改正です。
警告に従わずに同じ行為を続けた場合などには、公安委員会による禁止命令が出ることがあります。禁止命令の前には原則として聴聞が行われますが、緊急の必要がある場合には聴聞を経ずに出されることもあります。
罰則の概要は次のとおりです。
| 内容 | 法定刑 |
|---|---|
| ストーカー行為をした場合 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 禁止命令に違反してストーカー行為をした場合 | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| 上記のほか禁止命令に違反した場合 | 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
ストーカー行為罪は現在、親告罪ではありません。もっとも、警告や禁止命令は行政上の措置であり、それ自体が刑罰ではないため、警告を受けたことだけで前科がつくわけではありません。また、警察は行為の危険性に応じて、警告などの手続と並行して捜査を進めることもあります。
刑事手続とは別に、社内で問題になること
職場の場合、ストーカー規制法に当たるかどうかとは別に、会社の中での扱いが問題になります。会社には、男女雇用機会均等法にもとづき、職場における性的な言動への対策を講じる義務があります。断られた後も私的な誘いを続けることは、社内規程でハラスメントの例として挙げている会社もあり、相手が会社の相談窓口に申し出れば、社内調査が始まることがあります。
社内調査の結果によっては、配置転換や懲戒処分が検討されることもあります。法律相談サイトにも、同僚への行為で禁止命令を受けた後に懲戒解雇となり、処分の重さに納得できないといった相談が寄せられています。懲戒処分が相当かどうかは、就業規則の定めや行為の内容、これまでの処分歴などによって判断が分かれます。
反対に、法律上はストーカー行為に当たらない程度の行為であっても、社内では就業環境を害する言動として注意や指導の対象になることがあります。刑事と社内の問題は、同じ物差しで測られるわけではないと理解しておくことが大切です。
「もしかして」と思った段階でできること
自分の行動が相手を困らせているかもしれないと気づいた時点で、取れる対応はまだ多く残っています。
- 私的な誘いやメッセージを、この時点で止めます。
- 「最後に一言だけ」という謝罪や弁明の連絡も控えます。
- 共通の同僚や上司に、相手への取り次ぎや様子の確認を頼まないようにします。
- 職場での接点は、業務上必要な範囲の会話と連絡にとどめます。
- これまでのやり取りは削除せず、そのまま残しておきます。
- 会社や警察から呼ばれた場合は、話をする前に弁護士への相談を検討します。
謝罪の気持ちから連絡したくなる方は多いのですが、断られた後の連絡は、内容にかかわらず「拒まれたにもかかわらず」送られたメッセージとして数えられるおそれがあります。謝罪を伝えたい場合も、自分から直接連絡するのではなく、会社の担当者や弁護士を通す方法を考えたほうが安全です。
やり取りの記録を残しておくのは、自分の行為を正確に振り返るためです。相手の受け止めと自分の認識がずれている場合、何をいつ送ったかが分からなくなると、実際より重く受け取られたまま話が進むこともあります。
会社や警察から連絡が来たら
上司や人事担当者から面談を求められた場合、その場で事実と異なる説明をしたり、相手を責めるような言い方をしたりすると、後の判断に影響することがあります。覚えている事実を時系列で整理し、認める部分と認識が違う部分を分けて伝えることが基本です。
警察から任意の事情聴取を求められた場合や、禁止命令の前の聴聞の通知が届いた場合も、話す内容をあらかじめ整理しておく意味は大きいといえます。弁護士に相談すれば、手続の見通しを確認したうえで、相手への謝罪や接触しないことの約束を、相手方や会社を通じて伝える方法を一緒に検討できます。
よくあるご質問
一度告白して断られただけでも、ストーカーになりますか
一度好意を伝えて断られ、その後は誘いや連絡をしていないのであれば、通常はストーカー行為には当たりません。ストーカー行為は、つきまとい等を反復することが要件だからです。ただし、告白の場が待ち伏せのような形だった場合などは、その態様が問われることがあります。
はっきり断られてはおらず、既読のまま返事がないだけです
返事がないことが直ちに拒絶と扱われるわけではありません。ただ、メッセージの連続送信の規制では、言葉にしない拒絶も含まれるとされています。返事がない状態が続いているなら、相手の意思を確かめる意味でも、いったん連絡を止めることをおすすめします。
相手から当たり障りのない返事が来ていた場合はどうですか
職場の同僚どうしでは、関係を悪くしたくないという理由で、気が進まなくても丁寧に返事をすることがあります。返事があったことは事情の一つにはなりますが、それだけで相手が交際や誘いを受け入れていたと評価されるとは限りません。
相手がすでに退職している場合も関係がありますか
ストーカー規制法は職場の関係に限った法律ではないため、退職後の連絡や接触にも適用されます。退職した元同僚に連絡を取る場合は、在職中の経緯も含めて評価されることになります。
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好意を伝えたこと自体は、責められることではありません。ただ、相手の気持ちが自分に向いていないと分かった後の行動は、職場という逃げにくい関係の中では、法律の面でも社内の面でも重く受け止められやすくなります。不安を感じた段階で立ち止まり、事実を整理しておくことが、相手にとっても自分にとっても事態を大きくしない近道になります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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