【ストーカートラブル】証拠集めのために加害者のSNSを見続けるのは、問題になる?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

つきまといを受けている方から「相手のSNSを毎日見て、投稿を記録している。でも、こちらが見ていることで逆に問題にならないか心配だ」というご相談をいただくことがあります。反対に、記録を集めることに追われて、気づけば一日に何度も相手の投稿を開いている、という方もいらっしゃいます。

 被害の証拠を残すことは大切であり、相手の投稿がその材料になる場面は少なくありません。一方で、見方や集め方によっては、こちらが法的な問題を抱えたり、相手に付け入るきっかけを与えたりすることがあります。「証拠集めのためなら何をしてもよい」というわけではない点は、あまり語られていません。

 この記事では、ストーカー被害を受けている側が、証拠集めのために加害者のSNSを見ることについて、問題になりにくい範囲と注意が必要な場面、そして証拠としての残し方を整理します。ご自身が元交際相手のSNSを見てしまうこと自体に悩んでいる方は、【男女トラブル】相手のSNSを見続けてしまう|自分の行動が問題になる場面をあわせてご覧ください。

この記事は、令和7年12月30日に施行された改正ストーカー規制法の内容を反映して作成しています。


公開されている投稿を見ること自体は、原則として問題になりにくい

 まず前提として、誰でも閲覧できる状態で公開されている投稿を見ることは、それだけで違法になるものではありません。被害の状況を把握するために相手の公開アカウントを確認すること自体は、多くの場合、法的に問題になりにくいと考えられます。

「見る」だけではつきまとい等にあたりにくい理由

 ストーカー規制法が規制する「つきまとい等」は、待ち伏せや押し掛け、連続した連絡、監視していることを告げる行為など、相手に向けて働きかける行為が中心です(ストーカー規制法2条1項)。また、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的が要件とされています。

 被害を受けている方が、身を守るために相手の公開投稿を確認する行為は、相手に何かを伝えるものではなく、目的の点でも通常はこの要件に当てはまりません。公開された投稿を黙って確認し、記録すること自体は、ストーカー行為として扱われることは考えにくいといえます。

ただし「見ていることが相手に伝わる」形には注意

 SNSの中には、ストーリーなどの閲覧者の一覧が投稿者に表示されるものや、プロフィールの訪問履歴が残るものがあります。こちらが見ていることが相手に伝わると、「まだ関心を持っている」と受け取られ、連絡や接触が再開するきっかけになるおそれがあります。

 閲覧の履歴が残る機能があるかどうかは、サービスや設定によって異なります。確認する前に、利用しているサービスの仕組みを把握しておくと安心です。

証拠集めのつもりでも問題になりやすい場面

 証拠を集めたいという思いが強いほど、公開されていない情報にまで手を伸ばしたくなることがあります。次のような方法は、こちらが責任を問われたり、後の手続で不利になったりするおそれがあるため、避けるべきです。

相手のアカウントにログインする

 交際中に知ったパスワードなどを使って相手のアカウントにログインし、非公開のメッセージを見る行為は、不正アクセス禁止法に違反するおそれがあります。他人の識別符号を無断で入力してログインする行為は不正アクセス行為とされ、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(不正アクセス禁止法3条、11条)。

 かつて相手から教えてもらったパスワードであっても、関係が終わった後に無断で使えば同じ問題が生じ得ます。成立する範囲については、他人のIDでログインした|不正アクセス禁止法の成立範囲で解説しています。

別アカウントや知人を使って非公開アカウントに入り込む

 相手が非公開(鍵付き)にしているアカウントを見るために、正体を隠した別アカウントでフォロー申請をする、知人に頼んでフォローしてもらい内容を流してもらう、といった方法もご相談の中で耳にします。

 これらは直ちに犯罪になるとは限りませんが、サービスの利用規約に反する場合があるほか、発覚したときに相手から「こちらが監視されている」と主張される材料になります。被害を訴えている側が、相手から逆に「つきまとわれている」と言われる構図をつくってしまう点は、見落とされやすいリスクです。他人になりすましたアカウントを使えば、別の法的問題につながることもあります。

投稿に反応する・見ていることを伝える

 相手の投稿に「いいね」を付ける、コメントで反論する、「投稿を見ている」と伝えるといった行為は、相手との接触そのものです。相手を刺激して行為がエスカレートするおそれがあるほか、相手がSNSで「ストーカーされた」と書き込む口実を与えることもあります。そのような書き込みをされた場合の考え方は、【ストーカートラブル】相手が「ストーカーされた」とSNSに書いている|反論してよいかで取り上げています。

見続けることが被害者に与える負担

 法的な問題とは別に、相手のSNSを見続けることは、被害を受けている方自身の負担になりやすい点にも目を向ける必要があります。

投稿に気持ちが振り回されてしまう

 相手の投稿には、こちらに向けたように読める言葉や、意味ありげな写真が含まれていることがあります。証拠を探すつもりで見ているうちに、一つひとつの投稿に意味を読み込み、不安が強くなっていくという方は少なくありません。眠る前や仕事中にも確認せずにはいられなくなると、生活そのものが相手に支配されている状態に近づいてしまいます。

確認の頻度を決める・人に任せる

 確認は「1日1回、決まった時間に」など頻度を決めて行い、見たら記録して閉じる、という形にするだけでも負担は変わります。可能であれば、信頼できる家族や友人に確認と記録を任せる方法もあります。証拠集めは、被害を止めるための手段であって、それ自体が目的ではありません。弁護士に依頼した後は、確認の範囲や頻度を一緒に決めることもできます。

証拠として残すべき投稿と残し方

 相手の投稿のうち、後の手続で意味を持ちやすいのは、内容と残し方の両方が整っているものです。

証拠になり得る投稿

 次のような投稿は、警察や弁護士に相談する際の材料になり得ます。

  • こちらの氏名や勤務先、住んでいる地域など、こちらを指していると分かる内容。
  • こちらの行動を把握していることをうかがわせる内容(「今日は駅前にいたね」など)。
  • こちらの名誉を傷つける内容や、性的に辱める内容。
  • こちらや家族に危害を加えることをほのめかす内容。
  • 相手が近くにいることや、こちらの生活圏に来ていることを示す写真や位置情報。


 特に、こちらの行動を見張っていることを、こちらが知り得る状態に置く行為は、それ自体がつきまとい等の一つとされています(ストーカー規制法2条1項2号)。相手が自分のSNSに書き込んでいるだけのように見えても、こちらが目にすることを想定した内容であれば、評価の対象になる場合があります。

残すときに押さえたいこと

 投稿は相手が削除すれば見られなくなるため、気づいた時点で保存しておくことが大切です。保存するときは、次の点を意識すると、後で「いつ、誰が、何を投稿したか」を説明しやすくなります。

  • 投稿の本文だけでなく、アカウント名、ユーザーID、投稿日時が写るように画面全体を撮影する。
  • 投稿のURLを控え、可能であればウェブページとして保存する。
  • 撮影した画像は加工や切り抜きをせず、元のデータを残しておく。
  • いつ確認し、どの投稿を保存したかを簡単なメモに残す。
  • 保存したデータは、スマホ以外の場所にも控えを置く。


 証拠の残し方全般については、ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方や証拠の残し方|あとで警察・弁護士に通用する記録とはもご参照ください。

相手が匿名のアカウントを使っている場合

 嫌がらせの投稿が匿名のアカウントから行われ、相手が誰か確信できないこともあります。この場合、投稿者を特定する手続(発信者情報開示請求)を検討することになりますが、通信の記録は一定の期間で消去されることが多いため、早めの対応が求められます。進め方は、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で解説しています。

集めた証拠をどう使うか

 保存した投稿は、手元に置いておくだけでは被害を止める力になりません。どの窓口に、どのような形で示すかを考えることで、初めて意味を持ちます。

警察に相談するとき

 警察に相談する際は、投稿の画像を時系列に並べ、どの投稿がどのような点で不安を感じさせたのかを説明できるようにしておくと、状況が伝わりやすくなります。ネット上の行為がストーカー規制法の対象になるかどうかは、【ストーカートラブル】SNSに毎日コメントされる|ネット上の行為は規制法の対象になるかで、警告や禁止命令の流れはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで整理しています。

弁護士を通じて対応するとき

 弁護士に依頼すると、集めた投稿のうちどれが法的な手続で意味を持つかを整理したうえで、相手への通知や削除の求め、損害賠償の請求などを検討できます。相手との連絡窓口を弁護士に移すことで、こちらが相手のSNSを確認し続ける必要が減る点も、依頼の利点の一つです。詳しくは【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。

よくあるご質問


相手が非公開にしている投稿を、共通の友人から見せてもらってもよいですか?

 友人が自分の判断で見せてくれた画面を確認すること自体が、直ちに違法になるわけではありません。ただし、こちらから継続的に依頼して内容を流してもらうと、友人が相手との関係で板挟みになったり、相手に知られて関係がこじれたりするおそれがあります。必要な場合は、弁護士に相談のうえで方法を考えることをおすすめします。

相手をブロックしたら、投稿を確認できなくなります。ブロックは控えるべきですか?

 ブロックするかどうかは、安全の確保を優先して判断するのが基本です。ブロックする前に、それまでのやり取りや投稿を保存しておけば、証拠を失うことは避けられます。ブロック後の投稿の確認は、家族や弁護士に任せる方法もあります。

見ていたことが相手に知られてしまいました。問題になりますか?

 公開されている投稿を見ていただけであれば、それだけで法的な責任を問われることは通常考えにくいといえます。ただ、相手がそれを理由に連絡を再開したり、こちらを非難したりすることがあります。その場合は自分で応じず、記録を残したうえで警察や弁護士に相談してください。

まとめ


  1. 公開されている加害者の投稿を見て記録すること自体は、原則として問題になりにくい行為です。
  2. ストーカー規制法のつきまとい等は、相手に向けた働きかけと特定の目的を要件としています(ストーカー規制法2条1項)。
  3. 相手のアカウントに無断でログインすることは、不正アクセス禁止法に違反するおそれがあります(不正アクセス禁止法3条、11条)。
  4. 別アカウントで非公開アカウントに入り込む、投稿に反応するといった行為は、相手に付け入る材料を与えるおそれがあります。
  5. こちらの行動を見張っていると知り得る状態に置く投稿は、つきまとい等にあたる場合があります(ストーカー規制法2条1項2号)。
  6. 投稿はアカウント名・日時・URLが分かる形で、加工せずに早めに保存することが大切です。
  7. 確認の頻度を決める、人に任せるなどして、見続けることによる負担を抱え込まないようにしましょう。


ストーカー被害でお悩みの方へ

 相手のSNSを確認することは、身を守るための手段の一つですが、確認と記録を一人で続けるのは大きな負担です。どの投稿を残せばよいか、どこまで見てよいかに迷ったときは、集めたものを持ち寄って整理するところから始めることができます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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