【刑事事件】保釈中の家族が被害者と接触してしまった|取消しの判断と家族がその日のうちにすること
本記事は、2026年3月10日に施行された改正ストーカー規制法の内容(探偵業者などに情報を提供しないよう求める通知の制度)を反映しています。結論は個別の事情によって変わるため、具体的な判断は専門家にご相談ください。
別れた相手の連絡先が分からなくなり、「探偵に頼めば住所が分かるのでは」と考える方は少なくありません。探偵に所在調査を依頼すること自体は、それだけで直ちに罪になるものではありません。ただ、調べる相手が元恋人の場合は、相手がこちらとの接触を望んでいるか、どのような方法で調べたか、住所を知った後に何をするかによって、ストーカー規制法などの問題が生じることがあります。本記事では、元恋人の住所を探偵に調べてもらうことがどのような場面で問題になりうるのか、正当な用件がある場合にどのような方法を検討できるのかを整理します。
探偵に住所調査を依頼すること自体は違法ではない
探偵業は「探偵業の業務の適正化に関する法律」(探偵業法)で規制されており、営業するには公安委員会への届出が必要です。法律上の探偵業務は、依頼を受けて特定の人の所在や行動に関する情報を、聞込み・尾行・張込みなどの方法で集め、依頼者に報告する業務とされています。人の所在を調べることは、探偵業務の典型的な内容の一つです。
一方で、探偵業法は調査結果の使われ方にも目を向けています。主な決まりは次のとおりです。
- 探偵業者は、契約の際に依頼者から「調査結果を犯罪行為や違法な差別的取扱いなどに用いない」旨の書面を受け取らなければなりません(法7条)。
- 調査結果が犯罪行為や違法な行為に用いられることを知ったときは、その探偵業務を行ってはなりません(法9条1項)。
- 業務上知り得た人の秘密を、正当な理由なく漏らしてはなりません(法10条)。
このため、依頼すること自体は違法でなくても、元交際相手の所在調査については、目的や交際の経緯を詳しく聞かれたうえで断られることがあります。断られたときは、探偵業者が法律上の注意を払った結果と受け止めるのが自然です。
元恋人の住所調査が問題になりやすい理由
問題になりやすいのは、所在調査そのものよりも、「相手が距離を置いている状況で住所を知ろうとすること」と「知った後の行動」です。
住所を知った後の行動が「つきまとい等」にあたることがある
ストーカー規制法は、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で、住居の付近での見張り・押し掛け・うろつき、拒まれているのに連絡を繰り返すこと、手紙や物を送り付けることなどを「つきまとい等」として規制しています。住所を調べること自体は、これらの類型に直接あたるものではありません。しかし、調べた住所を訪ねる、家の近くで待つ、手紙を送るといった行動に移せば、つきまとい等として警告や禁止命令の対象となり、繰り返せば刑事事件として扱われることがあります。
報道によれば、元交際相手の調査を金銭トラブルの名目で探偵事務所に依頼した男性が、得た情報をもとに相手の自宅へ脅すような内容の手紙を送ったとして、脅迫の疑いで逮捕された事案もあります。依頼の名目が正当に見えるものであっても、その後の行動によって評価は変わります。
調べ方によっては、依頼した側の責任が問われることもある
探偵業者が役所や事業者に身分を偽って情報を聞き出すなど、違法な方法で住所を調べた場合には、探偵業者が処罰の対象になるほか、そうした方法を求めた依頼者も共犯として責任を問われるおそれがあります。過去には、探偵業者が不正な方法で入手したとされる被害者の住所が重大な事件につながり、その探偵業者が起訴されたこともありました。「どんな方法でも必ず調べる」とうたう業者には、特に注意が必要です。
また、相手がDVやストーカーの被害を理由に、住民票の写しなどの交付を制限する支援措置を受けていることもあります。相手が住所を知られないよう手続をとっている状況で、それを調べようとすること自体が、警察や相手側から強く警戒される理由になります。
2026年3月の改正で、探偵業者への通知の制度が加わった
ストーカー規制法6条1項は、ある人がストーカー行為等をするおそれがあると知りながら、その人に相手の氏名や住所などの情報を提供することを禁じています。2026年3月10日に施行された改正では、警察が、情報を提供するおそれのある探偵業者などに対し、依頼者がストーカー行為等をするおそれのある者であることを通知して、提供しないよう求められる仕組み(6条2項)が新設されました。対象となる情報には、住所のほか、勤務先・通学先・避難先、通勤や通学の経路、電話番号、SNSのアカウント名、車両番号なども含まれます。
警察庁と都道府県警察が探偵業者向けに示した資料では、6条1項に違反した場合は探偵業法に基づく営業停止などの行政処分の対象となりうること、情報提供を受けた者がストーカー行為等をした場合には幇助などにあたりうること、通知のために警察が探偵業者に依頼者の情報の開示を求める場合があることが説明されています。2026年には、警視庁がこの通知の制度を全国で初めて適用し、禁止命令を受けていた依頼者について、探偵事務所に情報を提供しないよう求めたと報じられました。
すでに警告や禁止命令を受けている方が探偵に依頼すると、依頼したこと自体が警察に把握され、探偵業者からも断られる可能性が高い状況になっています。警告や禁止命令を受けている場合は、住所を調べる行動そのものを控えることが大切です。
住所を知りたい理由ごとの考え方
元恋人の住所を知りたい理由はさまざまで、中には正当な用件もあります。理由ごとに注意したい点と、探偵以外に考えられる方法を整理すると、次のようになります。
| 住所を知りたい理由 | 注意したい点 | 考えられる方法 |
|---|---|---|
| 貸したお金や立て替えたお金を返してほしい | 用件は正当でも、自宅を訪ねて直接求めると、つきまといと受け取られることがある | 弁護士に依頼し、請求の手続の中で住所を確認する |
| 預けた荷物を返してほしい・相手の荷物を返したい | 返却を口実にした接触と見られないよう、用件を限ることが大切 | 共通の知人や配送、代理人を通じたやり取りを検討する |
| 謝りたい・もう一度話し合いたい | 相手が連絡を断っている場合、ストーカー規制法の問題に最も近づきやすい | 連絡を控え、相手からの連絡を待つ |
| 子どもとの面会や養育費の話をしたい | 正当な理由があっても、接触の仕方によっては問題になる | 家庭裁判所の調停などの手続を利用する |
| 連絡が取れず安否が心配 | 心配が動機でも、相手が望まない接触になることがある | 相手の家族への連絡や、警察への相談を検討する |
お金の返還を求めて訴訟を起こすには相手の住所が必要ですが、弁護士は、受任した事件の処理に必要な範囲で、職務上の請求により住民票などを取得したり、弁護士会照会を利用したりして住所を確認できる場合があります。ただし、相手が支援措置を受けている場合などには、弁護士であっても取得が制限されることがあります。弁護士が窓口となって書面を送ったり手続を進めたりすれば、ご本人が相手に直接接触する必要はありません。
正当な用件で連絡を取りたい場合の注意点は、【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で解説しています。謝罪が目的の場合は【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由、子どもに関する連絡の場合は【ストーカートラブル】子どもの面会のために連絡したい|ストーカー扱いされない方法もあわせてご覧ください。
すでに探偵に依頼した・住所を知ってしまったとき
すでに調査を依頼した、あるいは結果を受け取ってしまった場合でも、その後の行動を慎重に選ぶことで、問題が大きくなるのを避けられることがあります。次の点を意識してください。
- 調べた住所を訪ねたり、家の周辺に行ったりしないようにします。
- 手紙や荷物を送るなど、調べた住所を使った連絡は控えます。
- 調査報告書の内容を、知人やSNSなどで第三者に伝えないようにします。
- 用件があるときは、ご自身で動く前に弁護士に相談します。
- 警察から連絡が来たときは、事実関係を整理したうえで、早めに弁護士に相談します。
警察から事情を聞きたいと言われた場合の準備は【ストーカートラブル】任意で事情を聞きたいと言われた|応じる場合の準備で、警察から電話が来た段階で相談する意味は【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味で解説しています。相手の代理人から警告の書面が届いた場合は、【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方を参考にしてください。
「ストーカーではない」と言える状況を保つために
別れた相手との関係では、こちらに悪意がなくても、相手の受け止め方によって状況が大きく変わります。連絡に返事がない、ブロックされているといった状況は、接触を望んでいない意思の表れと受け取られやすく、その状態で住所を調べて会いに行けば、相手が強い不安を感じるのは自然なことです。
警告や禁止命令、さらに刑事手続に進むかどうかは、行為の回数や内容、相手の受け止め方などを踏まえて判断されます。どこから前科につながりうるのかは【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合で、一度の連絡と繰り返しの行為の違いは連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで整理しています。
用件を一つに絞って書面で伝え、相手が応じなければそれ以上は求めないという姿勢を保つことが、ご自身を守ることにもつながります。
よくあるご質問
探偵に元恋人の所在調査を断られたのはなぜですか
探偵業者は、調査結果が違法な行為に使われると知ったときは業務を行えず、改正後のストーカー規制法のもとでは、警察から情報を提供しないよう求められる場合もあります。元交際相手の所在調査はこうした事情から慎重に扱われやすく、目的や経緯によっては受けない方針をとる業者もあります。
住所を調べただけで逮捕されることはありますか
住所を調べたこと自体で、直ちに逮捕されるわけではありません。ただし、違法な方法で調べた場合や、調べた住所を使って訪問・待ち伏せ・連絡などをした場合には、警告や禁止命令、刑事事件の対象となることがあります。
弁護士に頼めば元恋人の住所を教えてもらえますか
弁護士が住所を確認できるのは、貸したお金の請求などの事件を受任し、その処理に必要な範囲に限られます。会いたい、居場所を知りたいといった目的だけで住所を調べることはできません。正当な用件がある場合は、弁護士が窓口となって手続を進める方法をご検討ください。
元恋人の住所を知りたいという気持ちの背景には、未精算のお金や荷物、伝えきれなかった思いなど、さまざまな事情があります。探偵に依頼する前に、その目的が住所を知らなくても果たせるものか、第三者を通じて進められないかを一度考えることが、相手とのトラブルや、ご自身が疑われる事態を避けることにつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


