SNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れ
カバンの底や車の下、もらったぬいぐるみの中から、見覚えのない紛失防止タグが出てきた。スマートフォンに「不明なトラッカーが一緒に移動しています」という通知が届き、探してみたら本当に見つかった。こうした場面では、気味の悪さからすぐに捨ててしまいたくなるかもしれません。
しかし、見つけたタグは、誰かが自分の居場所を把握しようとしていたことを示す数少ない手がかりです。この記事では、見つけた紛失防止タグを捨てずに残しておくほうがよい理由と、証拠として残すための具体的な手順、警察や弁護士に相談した後の流れを整理します。
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等の規制、職権による警告の創設)を反映しています。個別の事情によって取り得る手段は変わりますので、具体的な対応は警察や弁護士にご相談ください。
見つけた紛失防止タグは捨てずに残しておくほうがよい理由
結論からお伝えすると、身に覚えのない紛失防止タグは、捨てずに保管し、警察に相談する際に持参することをおすすめします。理由は大きく3つあります。
タグそのものが「取り付けられた事実」を示す
つきまといの被害は、「誰かに見られている気がする」「行く先々に相手が現れる」といった感覚だけでは、第三者に伝わりにくいことがあります。自分の持ち物から実際にタグが見つかったという事実は、居場所を把握しようとする行為があったことを客観的に示す材料になります。捨ててしまうと、その事実を後から裏付けることが難しくなります。
持ち主をたどる手がかりが本体に残っている
紛失防止タグには、製品ごとのシリアル番号などの識別情報があり、メーカーのサービスにひもづけて登録されているのが一般的です。誰が取り付けたのか分からない場合でも、タグの本体があれば、捜査機関がメーカーに照会するなどして、登録者をたどる手がかりになることがあります。本体の表面に指紋などの痕跡が残っている可能性もあります。
改正法で取り付けそのものが規制の対象になった
以前のストーカー規制法では、自ら位置情報を送信するGPS機器は規制の対象でしたが、周囲のスマートフォンを介して位置を伝える紛失防止タグは対象外とされていました。2025年12月30日に施行された改正法により、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みなどを動機とする場合に、次のような行為が規制の対象に加わっています。
- 相手の承諾を得ずに、紛失防止タグを使ってその位置情報を取得すること。
- 相手の持ち物に、承諾を得ずに紛失防止タグを取り付けること。
- 紛失防止タグをひそかに仕込んだ物を相手に渡すこと。
タグが見つかったことは、こうした規制の対象となる行為があったかどうかを判断する出発点になります。改正の内容についてはGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪でも解説しています。
見つけたときに最初に考えること
証拠を残すことは大切ですが、それ以上に優先すべきなのはご自身の安全です。相手が近くにいるかもしれない、いまにも来るかもしれないと感じる場合は、証拠のことは後回しにして、ためらわずに110番通報してください。
電源を切るかどうかは、できれば警察と相談してから
紛失防止タグは、電源が入っている限り、取り付けた側が位置を確認できる状態が続きます。一方で、電源を切ると、取り付けた側に「見つかった」と気づかれる可能性もあります。どちらにも利点と注意点があるため、可能であれば、電源を切る前に最寄りの警察署に電話で相談し、指示を受けてから判断するのが安全です。
| 対応 | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 電源を入れたまま警察に持ち込む | 取り付けた側の動きを含めて状況を把握しやすい | 保管場所や移動先が相手に伝わり続ける |
| 電源を切って(電池を抜いて)保管する | 位置を知られる状態をすぐに止められる | 発見されたことに相手が気づく可能性がある |
すでに自宅を知られているかどうか、相手が誰か見当がついているか、どのくらい差し迫った状況かによって、適切な判断は変わります。夜間などで警察に相談できない場合に、ご自身の判断で電源を切ることが誤りというわけではありません。その場合は、電源を切った日時と方法を記録しておきましょう。
証拠として残すための手順
タグを見つけたら、できるだけ見つけたときの状態を保ったまま記録することが大切です。次の順番で進めると、後から説明しやすくなります。
- 動かす前に、タグが付いていた場所と周囲の様子を写真や動画で撮影する。
- スマートフォンに届いた通知の画面や、検出アプリに表示された情報をスクリーンショットで保存する。
- 製品によってはスマートフォンをかざすとシリアル番号などが表示されることがあるため、表示された内容を記録する。
- 取り外すときは素手で触る範囲をできるだけ少なくし、ビニール袋や封筒に入れて保管する。
- タグが入っていた物(ぬいぐるみ、カバン、ケースなど)も、処分せずに一緒に保管する。
- 見つけた日時、場所、きっかけ、これまでに感じていた不審な出来事を時系列でメモにまとめる。
特に最後のメモは見落とされがちですが、重要です。「この時期に相手が待ち伏せしていた」「行き先を知られていると感じた日がある」といった出来事とタグの発見を結び付けることで、一連の行為として説明しやすくなります。ぬいぐるみや贈り物の中から見つかった場合は、誰からいつ受け取ったものかも書き残しておきましょう。
やらないほうがよいこと
見つけた直後は気持ちが動揺しやすく、思わぬ行動をとってしまうことがあります。次のような対応は、証拠を損なったり、状況を難しくしたりするおそれがあるため、避けたほうがよいと考えられます。
- ゴミとして捨てる、壊す、分解する。
- 心当たりのある相手に直接連絡して問いただす。
- タグを別の場所や他人の持ち物に移して、相手を混乱させようとする。
- SNSに写真を投稿して、相手に向けて発信する。
相手に直接問いただすと、言い逃れの準備をさせたり、感情を刺激して行動を激しくさせたりすることがあります。また、タグを他人の物に移すと、無関係の人を巻き込むことになりかねません。相手との接触は、警察や弁護士を通じて行うことを基本に考えましょう。
警察に相談した後の流れ
タグを持参して警察に相談すると、事情を聞かれたうえで、状況に応じた対応が検討されます。改正法では、被害者からの申出がなくても警察の判断で加害者に警告を出せる「職権警告」が設けられました。報復をおそれて警告の申出をためらう方にとっても、相談しやすい仕組みになっています。
警告の後も行為が続く場合や、危険が大きいと判断される場合には、都道府県公安委員会による禁止命令が検討されます。また、同じ相手に対して位置情報の無承諾取得等を繰り返すと「ストーカー行為」に当たり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となり得ます。禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と、より重い刑が定められています。
なお、警察に相談した際には、その記録が残ります。後の手続で役立つことがあるため、相談した日時や担当部署、対応した警察官の名前を控えておくとよいでしょう。思うように対応が進まない場合については、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で整理しています。
誰が取り付けたのか分からない場合
タグは、交際相手や元配偶者だけでなく、職場の知人や一度会っただけの人が取り付けている例もあります。心当たりがない場合でも、相談をためらう必要はありません。相手が分からない段階での進め方は【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で解説しています。
弁護士に相談すると何ができるか
警察は刑事手続や行政上の措置を担いますが、相手との関係を終わらせるための交渉や、損害の請求は警察の役割ではありません。弁護士に依頼すると、次のような対応を検討できます。
- 見つかったタグや記録を整理し、警察に伝わりやすい形にまとめます。
- 相手が分かっている場合は、代理人として連絡や交渉の窓口を引き受けます。
- 接触禁止や違約金を定めた合意書の作成を目指します。
- 状況に応じて、接近禁止の仮処分や慰謝料の請求といった民事上の手続を検討します。
タグを取り付けられたということは、少なくとも一時期、居場所を相手に把握されていた可能性があるということです。転居や勤務先への配慮の依頼など、生活面の手当てが必要になることもあります。こうした点も含めて、警察の手続と並行して進められるのが弁護士に相談する利点です。
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見覚えのない紛失防止タグは、気味が悪くてもすぐに捨てず、見つけた状態を記録したうえで保管し、警察に相談することが身を守る第一歩になります。電源を切るかどうかや、相手にどう対応するかで迷ったときは、一人で判断せずに専門家を頼ってください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


