【男女トラブル】交際相手に友人と会うことを禁止される、法的に相談できる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

交際相手から「友達と会わないで」「飲み会には行かないで」と言われ続け、気づけば友人との付き合いがほとんどなくなっていた――。こうしたご相談は、交際を続けている方からも、別れを考え始めた方からも寄せられます。恋人同士の約束ごとの範囲なのか、法律の問題として誰かに相談してよいのか、判断がつかないまま一人で抱え込んでいる方も少なくありません。

 本記事では、交際相手に友人と会うことを禁止される状況が法律上どのように見られるのか、どのような場合に刑事・民事の問題になり得るのか、相談の前に何を整えておくとよいのかを順に整理します。

本記事は、2026年11月時点の法令(2024年4月施行の改正配偶者暴力防止法を含む)にもとづいて解説しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な判断は弁護士にご相談ください。


交際相手に、友人付き合いを制限する権限はない

 交際は、お互いの自由な意思で続いている関係です。結婚している夫婦であっても、相手の交友関係を一方的に決める権限はありません。交際関係であればなおさら、相手が誰と会うかを指示する法的な根拠はないと考えられます。

 「友人とは会わない」と約束した場合でも、その約束を守らなかったことを理由に法的な責任を問われることは、通常は考えにくいところです。一方で、束縛そのものがすぐに犯罪になるわけでもありません。法律の問題になるかどうかは、禁止の伝え方や、守らせるために相手がどのような行動をとっているかによって変わってきます。

束縛は「デートDV」の一つとして扱われている

 内閣府や自治体の啓発資料では、交際相手からの暴力(デートDV)を、殴る・蹴るといった身体的なものに限らず、次のような形でも起こるものとして説明しています。

  • 身体的な暴力(殴る、蹴る、物を投げつけるなど)。
  • 精神的な暴力(大声でどなる、人前でばかにする、危害を加えると脅すなど)。
  • 社会的な暴力(友人と会うことを禁じる、交友関係を制限する、メールや電話の履歴を確認するなど)。
  • 経済的な暴力(お金を勝手に使う、デート代を一方的に負担させるなど)。
  • 性的な暴力(嫌がっているのに性的な行為を求める、避妊に協力しないなど)。


 友人と会うことを禁じる行為は、この中の「社会的な暴力」にあたるものとして紹介されることが多く、行動の監視や金銭の管理、暴言と重なりながら進んでいくことがあります。「束縛が強いだけ」と受け止めているうちに、相手の反応をうかがわなければ自分の予定を決められない状態になっていないか、一度振り返ってみることが大切です。お金の管理まで相手に握られている場合は、【男女トラブル】交際相手から経済的に支配されている|お金の管理から抜け出すもあわせてご覧ください。

法律の問題になるのはどのような場面か

 「友人と会うな」と言われることだけで、直ちに罪になったり慰謝料を請求できたりするとは限りません。ただし、禁止を守らせるための言動によっては、刑事・民事いずれの問題にもなり得ます。

脅しや暴力で従わせようとする場合

 「友達と会ったら殴る」「会ったら職場に言いふらす」のように、生命・身体・名誉・財産などに害を加えると告げて脅す行為は、脅迫罪(刑法222条)にあたる可能性があります。脅して友人との約束を断らせるなど、本来する必要のないことをさせた場合には、強要罪(刑法223条)が問題になることもあります。

 実際に手を上げる、外出しようとするのを力ずくで止める、部屋から出られないようにするといった行為は、暴行罪・傷害罪や監禁罪(刑法220条)の対象になり得ます。交際関係にあるからといって、これらの罪の成立が妨げられるわけではありません。暴力を受けた場合の対応については、恋人から暴力を受けた|暴行罪・傷害罪と慰謝料請求で詳しく解説しています。

スマホや位置情報を無断で確認される場合

 友人とのやり取りを確かめるために、相手があなたのIDとパスワードを無断で使ってSNSやメールにログインした場合、不正アクセス禁止法の違反になる可能性があります。パスワードを知られている場合の切り替え方は、【男女トラブル】相手がSNSのパスワードを知っている|別れる前に切り替える順序にまとめています。

 また、承諾なくGPS機器を持ち物に取り付ける、位置情報を取得するといった行為は、恋愛感情などを背景に行われると、ストーカー規制法の規制の対象になることがあります。監視の問題については恋人に行動を監視される・スマホを覗かれる|プライバシー侵害と安全な別れ方、位置情報についてはGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪もご参照ください。

慰謝料を請求できるかどうか

 束縛によって精神的な苦痛を受けた場合、不法行為(民法709条)にもとづく慰謝料の請求を検討する余地はあります。もっとも、交際中の言動は当事者同士の関係の中で評価されるため、「友人と会うなと言われた」ことだけで慰謝料が認められるハードルは高いのが一般的です。

 暴力や脅しを伴っていた、長い期間にわたって人格を否定する言動が続いた、医師の診断を受けるほど心身に影響が出た、といった事情が重なるほど、請求を検討しやすくなります。請求するかどうかは、証拠の有無に加えて、相手と再びやり取りをする負担も含めて判断することになります。

同棲しているかどうかで使える制度が変わる

 交際相手からの暴力について使える制度は、同棲しているかどうかで大きく分かれます。おおまかに整理すると次のとおりです。

状況主に関係する法律使える手段の例
同棲している(生活の本拠を共にする交際)配偶者暴力防止法(DV防止法)の準用配偶者暴力相談支援センターへの相談、裁判所への保護命令の申立て
同棲していない刑法、ストーカー規制法、迷惑防止条例警察への相談・被害届、別れた後のつきまといに対する警告・禁止命令
いずれの場合も民法(不法行為)慰謝料などの請求、接触しないことを約束する合意書の締結


 DV防止法は、もともと配偶者からの暴力を対象とする法律ですが、生活の本拠を共にする交際相手からの暴力にも準用されています(同法28条の2)。2024年4月に施行された改正法では保護命令の対象が広がり、身体への暴力だけでなく、生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると告げる脅迫によって、心身に重大な危害を受けるおそれがある場合にも申し立てられるようになりました。接近禁止命令の期間も、6か月から1年に延びています。

 一方、同棲していない交際相手の場合、DV防止法の保護命令は使えません。ただし交際中であっても、暴行や脅迫は刑事事件として警察に相談できますし、別れた後につきまといが続く場合はストーカー規制法による警告や禁止命令が検討の対象になります。制度の違いは交際相手からのDV(デートDV)|保護命令は使える?同棲の有無で変わる対応でも整理しています。

相談の前に残しておきたい記録

 束縛の問題は二人の間だけで起きていることが多く、後から第三者に説明しようとしても「言った・言わない」になりがちです。相談の段階で完璧にそろっている必要はありませんが、次のような記録があると状況を伝えやすくなります。

  • 友人と会うことを禁じたり、会ったことを責めたりするLINEやメッセージのスクリーンショット。
  • いつ、どこで、何を言われたかを書いた日付入りのメモ。
  • 暴力を受けた場合のけがの写真や医師の診断書。
  • SNSやメールのログイン履歴、見覚えのない端末からのアクセスの記録。
  • 家族や友人、公的な窓口に相談したときの日時と内容のメモ。


 スクリーンショットは、相手の名前や日時が分かる形で保存しておくと後で役立ちます。相手がスマホを確認する習慣がある場合は、記録を残していること自体が知られないよう、保存先にも注意が必要です。話し合いの内容を録音するかどうかについては、【男女トラブル】別れ話を録音しておくべきか|交際を終える話し合いでの記録の作り方で考え方を解説しています。

弁護士に相談できること

 「まだ別れると決めたわけではない」「束縛くらいで弁護士に相談してよいのか分からない」という段階でも、ご相談いただけます。弁護士に相談することで、次のような点を整理できます。

  • 相手の言動が法的にどの程度の問題を含んでいるのか、見通しを持てます。
  • 関係を終える場合に、弁護士が窓口となって意思を伝え、相手との直接のやり取りを減らせます。
  • 接触しないことや個人情報・画像の扱いについて、合意書の形で約束を残す方法を検討できます。
  • 警察や配偶者暴力相談支援センターなど、ほかの窓口と並行して動くときの順序を組み立てられます。
  • 慰謝料や、交際中に立て替えたお金の清算を求めるかどうかを判断できます。


 相談したことが相手に伝わることはありません。弁護士には守秘義務があり、相手に連絡をとるのは、相談者の方が方針を決めてご依頼いただいた後です。詳しくは【男女トラブル】相手に知られずに相談できるか|相談しただけで相手に伝わることはないをご覧ください。別れを切り出すこと自体に不安がある場合は、【男女トラブル】別れを切り出せない|弁護士に相談してよい段階なのかや【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるも参考になります。

危険を感じるときは、まず安全の確保を

 暴力を振るわれた、「殺す」などと言われた、外出を力ずくで止められたといった場合は、法的な整理よりも先に身の安全を確保することが優先です。差し迫った危険があるときは110番、緊急ではないものの警察に相談したいときは警察相談専用電話(#9110)を利用できます。同棲している相手からの暴力であれば、各都道府県の配偶者暴力相談支援センターも相談先になります。弁護士への相談は、こうした窓口への相談と並行して進めることができます。

よくあるご質問


「友人とは会わない」と約束してしまいました。破ったら責任を問われますか

 交際中の約束は当事者同士の信頼にもとづくもので、守らなかったからといって法的な責任が生じることは、通常は考えにくいところです。誓約書のような書面に署名していた場合でも、個人の交友関係を一方的に制限する内容は、そのまま効力が認められるとは限りません。書面の扱いについては【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力で解説しています。

男性や同性のカップルでも相談できますか

 相談できます。デートDVは性別を問わず起こるもので、DV防止法の保護命令も被害者の性別を問わず申し立てることができます。同性のカップルの場合も、暴行や脅迫は刑事事件として警察に相談でき、慰謝料などの民事上の請求も同じように検討できます。

相手と別れずに、束縛だけをやめてもらうことはできますか

 法律上、相手に束縛をやめさせることを直接強制する手続はありません。関係を続けながら改善を目指す場合は、二人で話し合う、第三者を交えて相談するといった方法が考えられます。ただし、暴力や脅しがある場合に二人だけで話し合いを重ねると、かえって危険が高まることがあります。その場合は、関係をどうするかを決める前に、まず外部の窓口に状況を伝えておくことをおすすめします。

関連する解説記事



 友人と会うことを禁じられる状態は、ひとつひとつの出来事が小さく見えても、積み重なるうちに周囲へ相談すること自体をためらわせることがあります。気になる言動が続いていると感じた段階で、記録を残しながら外部の視点を入れることが、自分の生活を取り戻すきっかけになります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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